The Third Princess 4










月明かりは、裏路地に届かない。
どこからも光が入らない空間には、動く黒が11。黒い空間では確実に存在が際立っている、ピンク色が一つだけあった。

10の黒は、裏路地に潜んでいた―――恐らくはギルドの手先だろう。
もう一つの黒、それは、先程黒服を着たジョースターだ。ピンク色は、今だにジョースターに抱えられているカレンだった。
ジョースターがカレンの耳元で囁く。

「次に敵が動いた瞬間、お前を前に向かって放り投げる。暗い路地には入るな、明るい場所を選んで走れ」

カレンは黙って、ジョースターの話を聞いていた。
とりあえず、自分を取り囲んでいるのが、敵。味方はジョースターのみ。リリトに見つけてもらえる可能性は、限りなく低い。今のカレンに分かるのは、それだけだった。

「もしリリーと合流するための合図があったら、早めにしておけ。いいな」

今までに狩場でしか見たことの無い、ジョースターの真剣な顔に、カレンは圧倒されていた。




ガチャリ。

ジョースターの後ろで、鉄と鉄が擦れあう時の独特の音がした。
その瞬間、カレンの体は宙に放り出される。

「クッ!」

先程と違い、宙に「浮く」のではなく、弾丸の様に打ち出されていた。カレンが苦悶の声を上げる。
高度は低い。だが、敵の頭上を越え、一直線に目標地点へと飛んでいく。

「ッ!!"スロー"!!!」

ジョースターの後ろで動いた男が叫んだ。
すると、黒服の男達が服の中に手を突っ込み、僅かに光を反射し、銀色に光る細長い物を取り出した。
刃物だろうか。

男達がカレンの方向を向き、投げる体勢に入る。




「なっ!?」

男達とジョースターの方を見ていたカレンは、驚愕した。

カレンが見ていたのは、投げた後の体勢のままで止まっていたジョースターと、投げる体勢に入っていた黒服達だった。
しかし、次の瞬間に見た光景は、信じられない物だった。







眼前に迫る、ジョースター。








「何ィィィィィィっ!!?!?」

最初に聞こえてきたのは、先程の男の声。
次に、ジョースターに投擲されたナイフが刺さる音だった。

「ぐうっ」

ジョースターはカレンを抱きかかえると、そのまま冷たい地面に落下した。

「ジョースターッ!?」

「早く・・・逃げろ」

「し、しかしお前、その傷は・・・」

ジョースターの脚には、10本程のナイフが深く突き刺さっていた。
黒いローブを着ていた為、直に傷口が見える訳ではないが、血がローブに滲んで、その黒い色を深い藍色に変えていくのが、僅かだが見えた。

「いいから・・・逃げろ、頼む、から・・・」

「・・・わかった」

ジョースターの呼吸は荒く、絞り出すように呟く言葉は、呼吸に邪魔され、途切れ途切れだった。
辛そうな顔で嘆願するジョースターの顔を見ていられなくなって、カレンは明るい方へ走り出す。

しばらく経つと、暗い路地には、動いている黒が10。地面に突っ伏し、いつのまにか動かなくなった黒が一つあった。
















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・長!隊長!ギーレン隊長殿!

「うおっ!?なんだお前ら!」

「隊長!目標は無事です!指示をお願いしますとさっきから言ってるんですよ!」

「・・・あぁ、ああ。フォシェル、お前はストレムブラードとアッサールで目標を追え。発見次第捕獲。残りはこいつの始末だ」

「了解!」

フォシェルと呼ばれた―――声からして男だろう―――は、両隣にいた二人と二言三言交わした後、カレンを探しに走り出した。

ギーレン隊長。先程から指示を出したりしている所を見ると、やはりこいつがこの部隊のリーダーなのだろう。
顔が見えないが、やはり困惑しているようだ。無理もないだろう。

一通り逡巡し終わったようで(その間無防備だったが、敢えて見逃す)、ギーレン隊長は、静かに一言だけ発する。

「"サークル"」

すると、6人の隊員達が突っ伏したままの俺を素早く取り囲んだ。
全員、半径7m程の距離を取っている。このままでは、近接に持ち込むのは不可能だろう。



「おい、お前」

ギーレンが大声を上げる。

「お前だよ、早く立てぇ分かってるぞ」

尚もギーレンが叫ぶ。

「お前だっつんてんだろぉがぁぁぁぁぁ!!!!」

急に大声を張り上げたかと思ったその瞬間、ギーレンの手からナイフが放たれる!

「フッ!」

ギーレンの大声の瞬間、俺は息を吐き、ナイフの刺さっていない片足に力を入れ、ナイフの飛んでくる方向を向き、







掌を、ギーレンに見せつける。








「ウガァッ!!!!」

「チィィィィっ!、しぶとい野郎だっ」

やはり死んでいなかったジョースターに、ギーレンは苛立ちを隠せない。


飛来したナイフを掌で受け止め、悶絶するジョースターを尻目に、ギーレンは考えていた。


こいつは一体、何者なのか?という事を。


捕獲対象である、"貴族風の少女"が気に入っていたというヴェルド市民だろうか?
いや、そうなると、ここまで起きた超常現象スレスレの出来事に説明がつかない。温厚なヴェルド市民は、一瞬で屋根に駆け上がったり、少女の目前に迫ったナイフの身代わりになったりは出来ない。

となると、貴族風の少女が貴族「風」では無く、かねてより都で噂になっている王女、カレン・フェファクス嬢で、そこでのた打ち回っている男が、伝説のハンター「ジョースター・モンクトン」とでも言うのか。馬鹿馬鹿しい。

差し詰め、王都に上がってきた中流貴族と、それを護衛する雇われハンターか、ギルドナイトだろう。ギルドナイトだったらあれぐらいの超人的な動きの一つや二つぐらいするもんだろう。
いくらギルドナイトと言えど、右足に10本のナイフが刺さり、右手にも重傷を負っていては、勝てるはずが無いだろう。

「構え!」

そう叫ぶと、部下達が懐からナイフを取り出し、男へと構える。
プロの暗殺集団を手玉に取り、捕獲対象を逃がし、更にはギーレンのプライドをも傷つけた男を、ギーレンは見下ろした。
尚も荒い呼吸を取っている男。ギーレンは左手を素早く上げると、空中でその手を止めた。

「・・・最後に何か言い残すことは?・・・」

ギーレンは、男に苛立っていた。

「・・・プロの割には手際が悪いな」


ギーレンは左手を素早く振り下ろす。












男は、死んだ。

























「ハァッ、ハァッ、ハァッ」


暗い路地の中を、カレンはひたすらに走っていた。
ジョースターと別れて、既に5分が経過していた。所々で空を見て、できるだけ明るい方へ明るい方へと走っているのだが、開けた場所には辿り着かない。

空を見た時明るい場所。というのは、基本的にヴェルド王城の事だ。そうでなくても明るい場所になら、助けを求められる人間もいるだろう。そう踏んだジョースターの指示だった。
だが、王都ヴェルドの裏路地は、一度入り込んだら、地図を使っても中々出ることの出来ない迷宮として知られている。


ヴェルドは、モンスターの襲来を想定している為、バリスタや大砲等の大型装備も豊富だ。だが、どちらかというと、その構造は戦争色の強い作りになっている。
モンスター―――ここでは古龍や、老山龍、超大型の危険生物の事を指す―――は、ハンターズギルド等の懸命な誘導措置により、ドンドルマや旧シュレイド城、生息地域に建造される砦等の迎撃基地に誘導される。
その誘導がもし失敗した場合、やむを得ずヴェルドのような大都市に誘導される。そのため、大型モンスターの為の装備が、常に充実している。

しかし、ギルドが誘導に失敗するような事は、ほとんど無い。その充実した装備が使われる事もあまり無いのだ。
その為、ヴェルドに回る装備は、戦争の為の物と考えた方が妥当である。バリスタも大砲も、対人、対攻城兵器として使うことは容易だ。

前述の通り、ヴェルドには、ギルドの協力無くとも単独で大型を撃退するだけの力がある。
それはつまり、大陸に散らばる有力なハンター達を招集せずとも勝てる。という意味だ。それだけの力を、王都は有している。

そしてこの路地。
シュレイド王国が崩壊してから建てられた王都は、再び王国が大陸の実権を握る為に、防衛戦に有利な構造に設計されたというのも考えられる。つまり、最初から戦争を想定した都市だったのかもしれないのだ。
そして、その都市に集められる、大量の兵器。

だが、隣人である共和国や、この世界の運営に必要不可欠なギルド、これら対しての装備の拡充は、ほとんど意味を成さない。
西の王国、東の共和国。そしてギルド。どの組織がどの組織を敵に回しても、何のメリットも得られない。少なくとも、先に仕掛けた方が自滅するのは自明の理だ。

では、何故この都市はこんなにも戦争の雰囲気が強いのか。
それは、王女であるカレンにすら、分からなかった。




「くぅっ!、出口はどこじゃ!」

そう叫びながら、曲がり角を曲がる。
そこには、黒い、一つの影。

「!クソっ!!」

すぐに来た道を戻る、しかし

「ッ!?」

そこにも一つの黒い影。
前後を挟まれた、カレンは辺りを見回す。
この路地は丁字路になっていた。勿論カレンには、残された最後の道に駆け込むしか手段は無い。

その最後の道に入ろうとした瞬間。




カレンの目の前に、最後の影が降り立つ。









四      完
田中角way
2009年05月20日(水) 22時47分34秒 公開
■この作品の著作権は田中角wayさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
鳩山(弟)です。

今回も製作期間に穴あきまくり。長さも微妙。
でもあんまり期間空けちゃうとあれがあれであれなロッキードなリクルートなので、投下しまーす。

ちなみに、「オリジナル小説」用に妄想文書き連ねてます。あと東京に豚フル来てすごい怖いでーす。


途中にある「前述の通り」は、2作目辺りに書いてあるやつです。



カテドラルさん

コミカル(?)に書いたつもりだったんですがw
洞窟あたりはそういう意味ではあってるかも知れんですけどねー
秒単位で動く風景・・・グヘヘ、グヘ・・・
お楽しみに、って感じです


無名の一般人さん

表現力豊富ですか?まだまだ改善すべき点ありマクリスティだと思いますが、ありがとうございます
ジョースターさんはヒーロー的な何かとして考えてますん

ふふふ、それが今流行りのツンデレってやつですよ。ふふふ
頑張りますよん、無礼てまたまた
追伸じゃないでしょうか・・・


鳥羽千歳さん

あらあらまぁまぁ。参考にしても何も出ませんわよ。
わーいインスパイヤされちゃうぞー

うーん、最初から一人の視点に絞っちゃうと、詰まっちゃいそうで怖いんですよねー
一人に絞れる回は限られるかなーとか思ってます。
お互い、頑張りましょう!


紅竜騎士さん

どうも変態さんこんにちは(嘘です)

今回は若干、超若干ですが、量増えてます。お楽しみください。
ていうか量書くのすごい疲れるんですよね・・・
つい投稿したくなってしまう・・・

だからそれは今流行りのツn(ry


アラマーさん

はいはいツンデレツンデレ

できれば、その読む気にならない理由を書いて頂けると、アラマーさんも飽きずに読める作品になって一石二鳥だと思うんです
めんどくさかったら、構いませんので
そして10点頂きました


沢山のレス、有り難うございました!

誤字等、ご指摘くださるとありがたいです

この作品の感想をお寄せください。
なるほど、もう書かないからコメントすらしなかったのか。ツンデレとか言う前に、マナーを確かめろ。 10 烈風真 ■2009-08-23 15:04 ID : gwPZs19BUJ2
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すいません!☆着け損ないました…orz 30 烏羽千歳 ■2009-05-25 21:10 ID : f7a7PKkeP8s
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おひさしぶりです。「かからない気がする」という理由だけでマスクに見向きもしない烏羽です。

ジョオオオスタアアア!

第四話にて主人公死亡ですか。どうなるんでしょう……。
いや、きっと変わり身で……等と推測してしまいますがw
カレンの成長にも期待してます!これからもお互い頑張りましょう!
0点 烏羽千歳 ■2009-05-25 21:09 ID : f7a7PKkeP8s
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