『黒き角竜と黒き龍の血を継ぐ狩人』第二章〜其の一『新たな場所、新たな出会い、新たな………』〜
「あの〜…………何なのですか…………これ?」

 僕は、思っていたイメージと大きく違う『ここ』を目の前にして、聞いてしまった。

「何なのですかって…………何が、何なのですか?」

 僕の問いが、あまりにも理解不能なのか、僕と先ほど出会って、『ここ』まで一緒に来た商人が、聞き返してくる。

「あの…………ここは何処なのですか?」

 僕は率直に聞いた。一番聞きたい事を。

「いや…………だから『ボルシャ村』なんですが」

 僕は、自分の耳を疑った。なぜなら、僕が思っていた『ボルシャ村』は、ポッケ村や、ココット村の様に田舎っぽい所だと思っていたのだ。だが、実際は

「何なのですかー!! この大きさはー!?」

 そう、異常に大きかったのである。あの大都市、ドンドルマとほぼ同じくらいの規模で、周りが、山々に囲まれていなければ、ドンドルマをそのまま移動させたみたいだった。

「いや、そんなこと聞かれても……。元々は、いくつかの集落や、村が多い所だったのですけど、その昔、ここに風を纏う龍が降り立ったらしいのです。まあ、今で言う古龍クシャルダオラだと思いますが、その龍が大暴れしだしたので、皆、一致団結して、龍と戦ったらしいです。そうして、数日による戦いの末、龍を見事討ち取り、それ以来『何時までもこの地を、この地に住まう者として、力を合わせ、守り抜いていこう』と、言い伝えられているらしいです。それから、組み合わさって今の、形状をしているらしいです。あ、それじゃあ、わたしは急ぎの用がありますので、ここで」

「ああ…………そうですか…………それじゃあ」

 僕は、商人の人が去ってから、しばらく、動けなかった。





「大きさは似ていますけど、技術は断然、ドンドルマの方が進んでいますね……」

 あれから二十分後。僕は、村の中心部の所に来た。先ほど、村人からの情報で、『村長は村の中心部の広場にある、塔の一番上に居る』と聞いて、ここまで来たのだ。

「それにしても、何故あんなに怒っていたのでしょう?」

 そう、先ほど情報を聞いた村人は何故か僕と話をした瞬間から機嫌が悪くなっていたのだ。

「僕、何か悪いことでも言っていましたかね?」

 そんな事を思いながら歩いていたら、村人の言っていた塔の前に着いていた。

「ここがそうみたいですね」

 僕は何処か神秘的な扉を開け、中に入った。扉の向こうには、上へ、上へ、と続く階段あった。

「では、登るとしますか」

 僕は、一段飛ばしでサクサク登って行った。





「ここですね」

 階段を登りきった所には、一つの大きな扉があった。それは、龍の彫りこみをした物だった。おそらくこの形から、クシャルダオラだろう。僕は少し扉を眺めてから、二、三度、扉をノックした。すると、扉の向こうから聞き覚えのある声で

「入りたまえ……」

 という声がした。

「えっ……?」

 僕は少し戸惑いながらも、扉を開けた。そこには

「久しぶりだな…………キーリス……」

 僕が昨年、勤めていたハンターズギルドのギルドマスターが座っていた。

「マスター!? 何故ここに!?」

 僕は、すぐに浮かんだ質問をマスターにした。

 マスターは、何食わぬ顔で

「なに…………前のギルドが解散したからここに移転しただけじゃ」

 と、答えてくれた。

 そう、たったそれだけ。

 だけど……………………

「それだけなのですか……」

「なに……?」

 僕のいきなりの質問に対してマスターは顔が険しくなった。

 だが、芽生えだした疑問は止められない。それに、『この事』だけは、何が何でも止めることは出来ない。

「本当は…………『あいつら』の情報が……!!」

「キーリス……」

 僕が一人熱くなって、声を荒げた時、マスターは、とても静かな声で僕の名を呼んだ。

「残念だが、それは無い…………。本当にたまたまじゃ……」

 そう言ったマスターの顔は、何処か寂しかった。

「そう…………ですか。…………申し訳ありません、マスター、興奮してしまって」

 僕は、すぐにマスターに謝った。

「いや、よいのじゃ……。それに、おぬしに『この事』に対して、興奮するなとは言えぬ……。あやつは、おぬしの……………………」

「…………マスター…………それ以上は言わないで下さい」

 マスターが言う前に話を切らせてもらった。マスターが言おうとしている事は分かっている。でも、それ以上先は言って欲しくない。

「…………すまぬ」

 マスターの声はとても小さく、だが、とても大きく感じた。

「では、キーリス……。オヌシに一つ謝っておかなければいけない事があるんじゃが……」

 いつも通りの、マスターの声に安心しながら僕は

「……? 何でしょう?」

 と、いつもと同じように答えた。

 だが、その後マスターから出た言葉は、とてつもなくキツく、そして、恐ろしい言葉だった。





「おぬし…………こちらに越してきているが…………空き部屋はもう無いんじゃよ…………」










「はぁ〜、ようやく出来た」

 僕は、たった今出来上がった、自分の家を見ながら、渋々、ため息を吐いた。

 ここ、ボルシャ村に来て、前に僕が勤めていたハンターズギルドのマスターこと、クルス村長に、会って早々、言われた事によって、僕は、村に着いてからも含めてこの二日間、ため息しか出なかった……………………





 話は二日前、すなわち、この村に着いた日にさかのぼる。





「クルス村長…………もう…………一度聞いても…………よろしいですか?今…………なんて仰い(おっしゃい)ましたか……?」

 僕はクルス村長に(今では、この村の村長の一人になったので、もうマスターとは、呼んで欲しくないと言うから、『クルス村長』と呼ぶことにした。…………ちなみに、他の村長は今、村の警邏中により居ないらしい。村長は合わせて十人で、各々、先代では、名の知れたハンターだったらしい)言われた事を確かめたくて、聞き返した。

「いや…………そのぅ、今おぬしに貸すことの出来る部屋は無いのじゃよ……」

 僕はクルス村長に言われた事を、改めて理解して、その疑問をぶつけた。

「な…………何故ですか……? 僕、ちゃんと情報を得て引っ越したのですけど……?」

 そう、僕はきちんと情報を得て、この村に引っ越すことにしたのだ。

 ……………………いや、この村がこんなに大きいとは聞いてなかったのだが。

「それがのぅ…………おぬしの荷物を載せた馬車が村に着く一時間前にのぅ……、たった一つ空いていた部屋が、若い女子(おなご)に先に取られてしまってのぅ……。先客がいると言っても、聞かずにさっさと入居権利書に判を押してしまったのだ……」

 ……………………僕は、意識が飛びそうになった……

「…………で、僕の住む所は無いのですか?…………いや、それ以前に、僕はこの村に住めるのですか……?」

 倒れ込みそうなのを必死に踏み止まって、クルス村長にこれから一番大切な事を聞いた。

「それは大丈夫じゃ……。他の九人の長にはきちんと、許可を取ってある……。じゃが……………………」

 それから、村長は言い難そうに口を閉じた。

「何なのですか?」

 僕は、本音は聞きたくなかったが、先を促した。

「そのぅ……、住むのはいいのだが……、先も言ったように、貸す部屋も……。ましてや…………おぬしに売れる家も無いのじゃ……」

 そう、確かにそうだ。

「でも、他の村長たちは、僕がこの村に住むのを許可してくれたのでしょう?」

「ああ……、その通りじゃ……。だから…………のぅ?」

 そう言って村長は、村長の座っている机の上にある小振りなベルを片手で持ち軽く振るった。

『チリリリリリィィィィン』

 ……………………小振りなのに良く響く。

 すると、先ほど僕が入ってきた扉から、一人の少女が入ってきた。歳は今の僕と同じ、いや一つか二つほど上だろうか藍色の長髪を後ろで結ぶ、ガウシカテールをし、ドンドルマルックを着ている。

「コレル……、『あれ』を持って来てくれたかのぅ……?」

 『コレル』という名なのだろうか?

 いやそれより。

 ……………………『あれ』とは何なのだろうか?

「ええ…………持って来ましたよ。けど、もうこういう仕事はさせないで下さいね。あの七人は、あなたやクレフェール村長、ましてはセフィレン村長とは違って、怖いんですよ?」

「むぅ…………どうやら、ワシやクレやセフィちゃんは、良い印象があるようじゃのぅ……。安心したぞぃ」

 ……………………どうやら、僕の入り込む余地は無いようだ。

 と、いうよりか…………まだ僕の知らない人が居るようだ。

 ……………………いや、それより、『あれ』って何なのだ?

「どうぞ、これですよ。全く、あの土地を売っていいんですか?あんな離れ、何も無いじゃありませんか」

 コレルさん(今の状態から年上そうなので『さん』づけして呼ぶことにする)が村長に一つの用紙を渡した。

「キーリス……、これに判を押せ……。そうすれば、おぬしはこの村に住めるぞ……」

 そう言って、クルス村長は用紙を僕に渡した。

「何のですか、これ?」

 僕は率直に聞いた。

「それはの……、この村のはずれにある平地の権利書じゃ……」

 僕はこの日、二度目の倒れ込みを踏み止まった。

「けっ…………権利書!? 僕が許可されたのはこの村に住む事でしょう!? それなのに、どうして権利書というものが出てくるのですか!?」

 僕はクレス村長が呆けたのかと思いもう一度、『僕が何を許可されたのか』、そして、『どうして権利書が出てくるのか』を合わせて聞き返した。

「いやのぅ…………厳密に言えば、おぬしが住む所は無い……。だが、おぬしに譲れる土地は幾らかある……。じゃが、先も話したように、この村にはワシの他に九人の、長が居てのぅ……。ワシの独断で譲る事はならんのだ……」

 それから一拍おいてクルス村長は続けた。

「そこで、コレルに頼んで他の長に頼みに行ってもらったのだ……。ああ、紹介が遅れてすまぬのぅ……」

 それから、コレルさんを指して

「こやつの名は『コレル・スティリア』……。ワシ達十人の長の秘書をしてもらっておるのだ……。歳は16…………今のおぬしと2歳差じゃ……」

 と、彼女の紹介してくれた。

「コレル…………こやつは『キーリス・デュランダル』……。若干14歳じゃが、一応ハンターじゃ……」

 何故かは分からないが僕の事も(一応は余計だが)、多少省いて紹介してくれた。

 …………まぁ、僕にとって詳しい話などされれば気まずくなるだろうが。

「はじめまして、コレルといいます。以後、宜しくお願いします」

 コレルさんが僕に話しかけてくれて、初めて気がついた。

「(この人、凄く良い声だ……)」

 そう、コレルさんの声は透き通った響きを持っており、何処か暖かな気持ちになっていくようだった。

「これ……、キーリス……」

 クルス村長に呼ばれ

「あっ! すっ、すみません!! こちらこそ宜しくお願いします!!」

 と、慌てて返事をした。あまりに可笑しかったのか、コレルさんに

「クスクス……」

 と、笑われてしまった。

「キーリス……、話を戻すぞ……」

「は、はい……」

 村長は咳払いを一つして、話を続けた。

「えぇと……、何処まで話したかのぅ……。あぁ、そうじゃ……、キーリス、コレルのおかげで、他の長からの許可が出ての……、その平地を自由に使ってよいぞ……。その為に、その契約書にサインをしてくれ……」

 そう言って、クルス村長は僕に平地の契約書を差し出した。

「…………はい、分かりました。そういう事なら仕方ありませんね。今日泊まれるところの予定もありませんし、ハンターにとって体調管理は大切ですしね」

 僕は、クルス村長の申し入れを二つ返事で受け入れた。

「あぁ…………それが一番、賢明な答えじゃのぅ……。あぁ、それと……………………」

「はい?」

 僕が、契約書に書名している途中にクルス村長が話しかけて来た。

「おぬしのその、言葉遣いは変えた方が良いぞ……。ここでは、その都会染みた小奇麗な、目上を敬う言葉遣いは嫌われているからのぅ……」

 ……………………この村に来て初めて情報を聞いた村人が、何故僕と話していて機嫌が悪くなったのかが、今始めて理解した。

「分かりました。これからは普通に話します」

 半分投げやりに、僕は答えた。

 その後、僕は『長の塔(この村の村長達が集まる場所だから、こう言う名前になったらしい)』を降りて、僕が譲り受けた平地に向かった。

 だが、平地に着いて僕は、暫く、固まってしまった。

 何故なら平地には、その名の通り『平地』だった。周りには木々しかなく、家など一つも無かった。その代わりに、一つの看板があった。それには

『この平地をご購入なさった方へ!! 契約書をあなたが持っている限り、ここは貴方の物です!! 遊び場にしてみたり、家を建てて住んでみたり、どれでもOKです!!』

 などと言う事だけが、書かれてあった。





 そして、今に至る。

「…………クルス村長。…………怨んでやる〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

 僕の叫び声が、周りの木々を震わして響き渡った。










 ここボルシャ村にある、この村の、村長達が集まる場所『長の塔』。その最上階にある部屋で一人の少女と一人の老人が居た。少女はふと、窓の東の方角を眺め、老人に振り返った。

「クルス村長。何か、キーリス君が叫んでいますよ?」

 少女は満面の笑みで、クルス村長と呼ばれた老人に喋りかけた。

「何のことやら……。ワシはもう耳が遠くてのぅ……。なぁんにも聞こえんわい……。ふぇ、ふぇ、ふぇ、ふぇ、ふぇ」

 老人は、不気味な笑い声を出しながらとぼけていた。

「全く。後でキーリス君に怒られても知りませんよ?…………クスクスクス」

 少女は老人を少し咎めながらも抑えきれぬ笑いに耐えているようだった。

「それにしても、あんな子が、私達、『裏』の世で恐れられていた『血雪』とはね。思いもよりませんでしたよ」

 少女は意味深な事を言って老人に再び話しかけた。

「そうじゃろぅ……。あやつはそう簡単に表の面に一寸たりともださぬからのぅ……」

 老人は何処か懐かしい思い出を、見るように目を細めた。

 だから、このときの老人の『眼』を見たものはいない。

「ふっ……、『普通に話します』か……。おぬしの普通はいったい、何処で消え失せたのか……。今よりもっと厳しかったのでは、なかったかのぅ……。やはり……、護るべき者が……、『おぬし』が死んでしまったからかもしれぬな……?





……………………『ユリ』……………………よ」





 あの老山龍と同じように黒く、暗く、そして深かったのを。










「さて……。そろそろ荷物を家の中に入れようかな」

 僕は、先ほどクルス村長に向けて怒りの叫びを出した後、家の横にある川から少し水を汲み、ろ過をしてから飲み、まだ、荷物を家に入れてなかったことを思いだし、手を動かした。

「まずは、ベッドから入れよう」

 僕は一番大きな荷物であるベッドから、入れていくことにした。

 このベッドは、僕の特注で三つに分断することでき、さらに又、分断した三つの場所に物を仕舞い込む事が出来るようにしてもらった。どうしてその様な事を頼んだのかは、仕舞い込んだ物の中に武器を紛らせて、緊急時に、仕舞いこんだ武器を瞬時に出せるからだ。

 だけど、三つに分断出来るからと言っても、それなりの大きさになる。僕は、折角作った家の玄関が壊れないように、ベッドを斜めに傾けながら入れていった。

 それからベッドを始め、アイテムボックス、サンブ(僕が商人のお婆ちゃんから貰った「プーギー」と言う子豚に、僕が名前をつけた)の小さなベッド、生活用品、武器&防具を、先に家の中に入れたアイテムボックスにそれぞれ一つずつ、丁寧に入れていった。

 そして、最後に僕の故郷から持ってきた楽器と、護身用にいつも使ってきた刀を仕舞って、僕の引越しが終了した。

「はぁ〜……」

 ようやく引越しの作業を終わらして、僕はベッドに倒れ込む様に横になった。





「(…………あの時から、結構時間が経っているんだな……)」

 横になってからどれくらい経っただろうか。不意に、今までの僕の人生を振
り返ってしみじみと思う。

「(…………今思うと、…………悪い事ばかり起きて、良い事はあまり無かったな……)」

 そう、僕の人生は悪い事の連続だった……

 産まれてから二年目に、無理矢理に剣を握らされ、日も経たない間に生き物
を殺めさせられた……………………

 自分の身を護る為に、対人間・モンスターの格闘戦術を無理矢理覚え込まされ、人もモンスターも殺めさせられた……………………

 家紋の為だと言われ医療技術を覚え込まされ、人もモンスターも解剖させられ、殺めてしまった……………………

 家のしきたりだからと言われて、親友を、家族を、知り合いを皆、全て殺めさせられた……………………

 それから…………周りの人から、奇異的な眼で見られていて、誰も僕に近づこうともしなくて、いつも孤独だった

 だけど、そんな僕を……………………

 …………そんな俺を『好き』だと言ってくれた『あいつ』と出会えた。

 『あいつ』と出会ってから、沢山楽しい事が起きた。

 …………いや、起こしてくれた。

 『あいつ』がする事に一つ一つ反応して笑いあった。

 何時も憂鬱だった気分は、『あいつ』と居る度に薄れていて、初めて生きていると感じさせてくれた。

 そして、いつも笑っていて、自分の本能に正直で、何者にも捕らわれていない『あいつ』の事が次第に意識し始めて、好きになっていた。

 『あいつ』の為ならばどんな事でも出来た。

 『あいつ』を傷つける物があるのならば、全て消し去ってやろう。

 『あいつ』を傷つける者がいるのならば、全て消し去り、葬ってやろう。

 『あいつ』の心を曇らせる物があるのならば、それら全てを消し去ってやろう。

 『あいつ』の心を壊そうとする者がいるのならば、逆にそいつの心を壊してやろう。

 『あいつ』の魂を汚そうといる者がいるのならば、逆にそいつの魂を汚れ腐らせてやろう。

 『あいつ』の魂を潰そうとする者がいるのならば、逆にそいつの魂を握り潰してやろう。

 『あいつ』が笑顔になってくれるのならば、どんな恥さらしな事でも甘んじてしてやろう。

 『あいつ』を笑顔にさせてやれるのならば、どんな恥さらしな事でも甘んじて受けよう。





 だが…………

 俺は『あいつ』を守ってやる事が出来なかった……

 『あいつの為ならばどんな事でも出来た』と思っていたが……

 実際、肝心な時に俺は何も出来なかった……

 自惚れていた……

 俺は…………何も出来ない弱者だ……

 大切な者を守る力すら持ってない…………弱者……

 俺は弱い…………俺は弱い…………俺は弱い…………俺は弱い…………俺は弱い…………俺は弱い…………俺は弱い…………俺は弱い…………俺は弱い…………俺は弱い…………





 暖かい物が、頬を伝う感触を感じて僕は目を開けた。

 寝ぼけ眼で、僕は自分の姿を見た。

 どうやら、ベッドに横になってからすぐに眠ってしまったようだ。

「んぅぅ〜……」

 僕は両腕を真上に上げて大きく伸びをした。

「(久しぶりに嫌な夢を見て、良く眠れたな……)」

 僕は自分に対し、嫌味を思った。

「えっ……」

 そこでようやく僕は、自分が泣いている事が分かった。

「さっきの、感触はこれか……」

 僕は指で涙を掬いすくい、自分の涙をしばし眺めていた。

「うっ……」

 だがすぐに、自分の服から、酷い汗の臭いが漂って来た。

「そういえばこの二日間、行水もして無かったな」

 そう、僕は早く家を作ったほうが良いと思い、風呂に入らず、寝て起きて、寝るまでずっと家を作っていた。

「はぁ〜……。お風呂、はいろ」

 僕は酷く疲れきった体を起こして、この家での、初めてお風呂に入りに行った。

 お風呂は僕のこだわりで、故郷のお風呂に近い造りにした。家の周りの木を切り倒して、鉋と言う大工道具で厚さ0.2cmの薄さで木の表面が光を浴びると反射するまで何度も削った。こうする事で水を弾いて、腐りにくく出来るらしい。

 それから、削った木を正八角形の形に組み合わせて、わりと深い湯殿が完成した。

 その湯殿に、家の横を流れる川の水を、わざわざ作った水車で汲み上げて、ろ過をしてから入れた。

 そして、ここからが僕の一番のこだわり。

 先に水を張った湯殿に、『空きビン』に『火竜の体液』を入れて、封をした物を、端の四つ角にそれぞれ五つずつ置き、その四つ角の上から木で作った覆いを被せる。

 こうする事で、わざわざ湯殿の底に鉄板を敷き、その下から火を熾して温めなくとも、『火竜の体液』その物が持つ熱で、自然と温めてくれる。

「我ながら良く出来たな」

 僕は自分で作ったお風呂を自画自賛しながら服を脱いで、湯殿の横に来た。

 今日は行水しか出来ない。何故なら、シャンプーやトリートメントと言った洗髪用品は全て前の家で使い切ってしまっていて、買いに行こうとした矢先に、引越しの準備をしなければいけなくなってしまったからだ。そう言った物はこの村に着いた時に買えば良いと思っていたから、いきなり家を作らなければいけなくなってしまって、買いになど行ってなかったのだ。

 だから、今日は行水だけ行って、早急にお風呂から出る事にする。

「それにしても、勝手に入居権利書に判を押すだなんて、本当にあったのかな?…………もしかして僕、クルス村長に騙されたのかな……?」

 などと言う、愚痴を零しながら僕は、汚れた体にお湯を浴びせていった。





「はぁ〜、気持ちよかった……」

 僕はお湯で濡れた体をバスタオルで拭きながら、しみじみ呟いた。

「クンクン…………うん。まぁ、さっきよりマシかな」

 僕は、自分の体の匂いを確認して少しだけ安心することが出来た。ようやく、疲れを癒すことが出来るのに悪臭を放っていては元も子もない。

「さて、お肉でも軽く焼いて食べて今日は寝よう…………」

 そう、明日はたくさんの買い物をしないといけないから。

 …………まぁ、たくさんの買い物って言っても、シャンプーやらボディソープやら日常品ばっかりだと思うけど。

「それでも、結構な量になるよね」

 明日の重労働を思うと面倒臭くなってしまう。

「だけど、それくらいキッチリしなくちゃ……」

 そう自分に言い聞かせ、アイテムボックスから肉焼きセットを取り出して肉を焼き始めた。

S・S
2009年09月16日(水) 04時36分52秒 公開
■この作品の著作権はS・Sさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
はいっ!どうも、S・Sです
前回の第一章はプロローグなので一話完結ですが、今回から各章ずつ、複数の話で構成していきます
話はタイトルに書いた物の続き等になっていきます
では、コメント返しに行きます








『無名の一般人』さん:
アドバイス有難うございます!!
でも、一文末に句点を付けている所は、その一人称の人達の気持ちが、表現が幼稚になりますが、『ススッ』と進んでいる時なのです
前回と今回の話を読んで、それでもやっぱり気になるのならば、善処していきますので、宜しくお願いします







『彌津蔚嗣豫鵜蛇』さん:
お褒めに預かり光栄です!!
後、別に一日で書いたわけじゃ、ありませんよ?
少しずつ書いています
前回の第一章も今回もそうですが、一話だけを投稿した訳じゃあなく、区切りが良い所を定めて四話位まとめて投稿しているんですよ
では、これからも宜しくお願いします








『天からの使者』さん:
恐れ入ります!!
あなたの作品も見させていただきましたよ
そこで、少しばかりコメントさせていただきました
これからも頑張って行ってください
また、これからも宜しくお願いします








『Guilty Black - ζζ』さん:
この話は、あるハンターとそれに魅せられたディアブロス(亜種)の話です
まぁ、あるハンターとは勿論キーリスの事です(^^)
これから、色々と展開していって、少しややこしくなるかも知れませんが、宜しくお願いします




今回も、よく確認しましたが、間違いがあったら教えてください、宜しくお願いしますっ!!




修正:チャーリーさんからアドバイスを受けたので修正しました


修正2:社長さんからのアドバイスを受けたので修正しました

修正3:すみませんまた修正しました

この作品の感想をお寄せください。
 はじめまして、以前からこのサイトで小説を投稿しているチャーリーです。

 第一印象は……文が詰め詰めですね。 あくまでネット小説ですので、改行することをお勧めいたします。基本的に、台詞と描写の間は一行空けるやり方がいいです。
 
 次に、『……』が異常なまでに多いです。『……』は、大体これ人区切りで私は三秒ほどと考えております。あまり多すぎると読む気が失せてくる場合がありますのでお気を付けください。
 
 次に、台詞の前は一マス空けないでいいです。そのまま「」から始めちゃってください。じゃないと文が妙に見えるので……。

 それでは、次回も頑張ってください。
20 チャーリー ■2009-06-16 13:05 ID : /au4C0FQ4gY
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