Omoide
深夜三時五十分。俺は、所謂ザッピングと呼ばれる行為をしていた。
地上波のチャンネルは、連続テレビ小説のあらすじを映す公共放送を除き、砂嵐を垂れ流すだけだった。

普通の人間ならば、凡そしないであろう行為を、俺はしていた。
砂嵐のみを選んでチャンネルを前後させているのだ。

何時の間にか俺は、その砂嵐をザッピングする行為を楽しんでいた。
多くの放送局が、機器のメンテナンスのために放送を停止するこの深夜帯。
昼夜逆転の生活を送る現代の都市型人間には、とてもつまらない時間帯であるに違い無い。
しかし俺は、そのつまらない時間帯を、確実に世界で一番つまらないだろう、「砂嵐」とかいう番組を、楽しんでいた。

チャンネルを変える瞬間、跳ねるような音と共に一瞬映像と雑音が途切れる。
そして又一瞬。映像と雑音が始まる直前、画面下半分に灰色の月面のようなものが映し出される。
それと同時に、画面上半分にも灰色の地球のようなものが映し出される。
一瞬。ほんの一瞬だけ、テレビ局から放置されたテレビジョンには、「宇宙」が映るのであった。

「・・・・・・きれーだ・・・」

俺は砂嵐に夢中になっていた。




この光景を見た人間は、「トーシツ」を起こした患者が、幻想のTVの中に、バラエティの夢でも見ているんだろう。とでも言うのではないだろうか。
しかし俺は、多重人格者でも無ければ統合失調症でも無く、将又鋭角恐怖症でも冷凍都市の住人でも無いのだ。
傷心のヒロインでも無ければ、思春期の中学生でも無いので、何処ぞの言葉遊び小説の主人公でも無いし、揶揄の好きな下らない中高生男子女子の好むバンドの楽曲の題材になる様な人間でも無い。

どうやら確かな事は、砂嵐を楽しむ一般男子高校生、「椎名」であるという事だけだった。









西暦2009年同じく平成21年8月10日午前4時13分45秒7689。
15年183日14時間38分45秒8542歳の都内公立高校に通う学生である椎名希美は、
夢を見ていた。

彼の見ている夢の中で、彼は、砂嵐を眺めながら届きそうに無い宇宙を思い浮かべ、現代科学で今にも勝手に位置付けられてしまいそうな自分自身、及び自らの母親又は父親が位置づけた自分自身を、穏やかに、且つ間接的に否定していた。

現に彼は、夢の中で映されている少年の姿では、本当は無かった。
黒い短髪は、本当は細くて長い栗色の髪だった。
顔の作りも、少年の物では無い。本当の顔は、幼い少女の物だった。
その体つきですら偽りである。本当の彼の体は、浅黒く焼けた肌など無く、病的なほどに白く、握れば簡単に折れてしまいそうな物だった。

そして彼の言う、自分は何処にでもいる在触れた一般人である。というのもやはり詭弁であった。彼の精神は、あと一押しで奈落の底まで落ちていってしまうような、崖の先端で必死に落ちまいとしている。統合失調症にはなっていないものの、他人から見たら、彼は精神病なのだろう。

彼の父親は、仕事で日本各地を飛び回り、もう二年と三ヶ月も彼と会っていなかった。二年と三ヶ月前に彼と父親が良い関係を築いていたかどうか、彼自身記憶していなかった。

母親は、彼が気づいた時、既に居なかった。
それがどういう意味か。彼は知らない。
二年と三ヶ月前に彼と彼の父親が会った時、彼は聞いた。

「お母さんはどこにいるの?」

父親は答えなかった。
それがどういう意味なのか。
彼は今でも、この「応答無し」という答えの意味する本当の答えに辿り着けていなかった。
彼が気づく前に離婚して、他の男と家庭を築いたか。深夜の歌舞伎町を彷徨っている可能性も無い訳では無い。

そうでもなければ、死んだ、か。







砂嵐の発する濁った光と、それ以外の単純な暗闇の中。俺はベッドから立ち上がる。
そして腕を引き、雑音と砂嵐で構成されたテレビに向かって打ち出す。

本来なら、テレビの液晶がぶっ壊れる筈だ。
しかし、やはり違った

渾身の力で打ち出した拳は、液晶に当たった。ような気がした。
当たった感触があったような、それでいて無かったような、そんな感じだった。
結果としてテレビに一切の衝撃は無く、砂嵐は続いた。

「・・・・・・」

僕は柔らかい感触のあるようなないようなベッドに、座る。
そして急に、淋しくなって、自分の体を抱き締めるように膝を抱えてベッドに転がった。

「夢、か」

理想だった。僕の夢は。
浅黒い肌や、黒い短髪、低い声。全てが理想だ。夢だ。現実には絶対にあり得ない。あってはいけない。
僕にそんな幸福は訪れない。訪れちゃいけないんだ。

「・・・・・・嫌だ・・・・・・」

何時の間にか、髪は伸び、声は高くなっていた。


そんな気がした。

テレキャスカスタム
2009年08月11日(火) 08時50分31秒 公開
■この作品の著作権はテレキャスカスタムさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうもはじめましてこんばんみ
モンハンの方で田中角way でちょっとやらかしたやつでございます
田中のまんまもなんなんで適当な名前にしました。
使ってるギターはレスポールカスタムの白ですが、次欲しいのはテレキャスターちゅわんのじゃきじゃき感なので適当にこんな感じの名前にしました。

いつかモンハンの方の後書きでこっち用になんか書くっていってた気もしないでもないので、なんとなく書いてなんとなく投稿します。

続きは書くかもしれません。飽きたら書きません。
つまりモンハンの
方はもう飽きたので書きませんという事ですねん。

この作品の感想をお寄せください。
なるほど、オリジナルでもコメントすらしねぇ訳だ?

あっちでは飽きたからコメントすらしねぇで投稿だけして、んでここでもこれか。お前はマナーってもんを知らないようだな。

50点やるから、考え直してくれ。
50 烈風真 ■2009-08-27 01:08 ID : gwPZs19BUJ2
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