日常〜変化は突然に〜 |
―――今日も朝が来た 制服を身に付け、髪を整える。 「いってきま〜す」 誰もいない室内に向かい声をかけ家を出る。 天上空也、それが俺の名前だ。空也ってホストみたいな名前が正直嫌いだ。 親父が付けた名らしいが、そんな事知ったことない。身長百六十センチ。 「空也〜!」 学校に向かい歩いていた空也の後方から声がする。立ち止まり振り返る。 「おはよ!」 三浦葵、俺の彼女だ。と言っても、付き合ってまだ一ヶ月弱。身長百五十五センチ。 「おはよ」 「ねぇ、昨日のドラマでさ…」 正直彼女の話は聞いていない。適当に相づちを打つだけ。眠いからだ。 郵便局の角を曲がり、信号を渡る。人通りの多いこの道では、同じ学校に通っているであろう生徒達が歩いている。 「葵、今何時だ?」 「まだ7時だよ」 早く来すぎた。すでに校門が見えている。いつもなら、一時間後に学校に到着している。 「コンビニ寄るか」 これが俺の日常。なんの変化もない。彼女が出来たぐらいだ。高校に入れば変わるのだろうか?そんな疑問を抱きながら、俺はコンビニ目指し歩く。 「あっ!待って!」 後ろから葵が追いかけてくる。 ―――学校に行きたくない そう思いながら、今日も学校に来た。 教室に入る、誰も気づかない。机が無い。 まただ。 「ダニく〜ん。何してんの?」 後ろから声をかけられた。 「……小谷」 「は?」 「……ダニじゃなくて……小谷」 「ダニが口聞いてんじゃねぇよ!」 体を突き飛ばされる。 「……ごめん」 小谷健太。僕の名前だ。名前のせいか、根暗な性格のせいか、小さい頃から虐められていた。身長百六十三センチ。 いつも僕を虐めてくる、小柳。下の名前は……知らない。 「哲!隣のクラスに転校生くるってよ!」 「マジか?見にいこうぜ」 哲って名前なのか……どうでもいい。 朝のHRが始まる。 「え〜小谷」 担任が名前を呼んでいる。朝の出席確認だ。 「……はい」 「声が小さいぞ〜」 担任は僕が虐められていることを知らない。知っててどうにかなるわけではない。 「天上!」 担任が名前を呼んでいる。天上音也、カッコイイ名前だ。 「天上は遅刻か…」 天上、彼だけは十五年間の人生の中で唯一話しかけてくれた【他人】である。ノートを貸して落書きしないのも彼だけだ。 「三浦!」 担任が名前を呼んでいる。三浦葵、カワイイ。 「三浦も遅刻か…」 三浦、僕の好きな子だ。最近、天上と付き合い始めたらしい。 天上なら良いかと、人知れず思う。 「ダニ…おい」 後ろから声がする。小柳だ。 「ニヤついてんじゃねぇよ。キモイ」 何で後ろにいるのに解るんだ?ああ、窓ガラスね。そんなに僕のこと観察してるのか。お前こそキモイよ。 「……ごめん」 どうせ天上にはビビってるくせによ。 これが僕の日常。なんの変化もない。小柳に虐められるだけ。高校に入れば変わるのだろうか?そんな疑問を抱きながら、担任の話を聞く。 この時僕は知らなかった。あんな事になるとは。 あの時僕が決断すれば。こんな事にはならなかったはずだ。 |
やまぴー@うみぴー
2011年11月04日(金) 02時24分19秒 公開 ■この作品の著作権はやまぴー@うみぴーさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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