Criminal
見上げた空は一面の快晴だった。
今までの暗い空気を洗い流すかのような透き通った青色。
大きく深呼吸すると、冷たくて気持ちいい空気が肺を満たしてくれる。

―――正直なところ、連中にとっての俺の扱いとはどのようなモノなのだろう。
こうしつこく殺しに来るという事は・・・少なくとも連中に命令を下している存在にとっては邪魔者にすぎない、という事だ。

今の時代、何処の町にも村にも必ず一人や二人連中の手先がいる。
だが連中はごく普通に人々の生活に紛れ込んでおり、正体を知って驚くこともしばしばだ。

町人村人とてそれは理解している、だから安易に夢や希望を語る事も出来ない。
語ることが出来ないだけではなく抱くことすら許されない。
どういう仕組みなのかは知らないが、夢や希望を抱いた時点で連中にバレてしまうらしい。

俺は二年間のうちにたくさんの町や村に立ち寄った。

勿論連中とご対面した事だってあるが、不思議なことに襲い掛かってこないのだ。
この疑問がずっと拭えない、何がどうなっているというのか。

命令を受けた時にしか俺を殺しに来ないとか?
いや、それこそ本当に機械に過ぎない。

一応人間なんだから少しは融通ってもんを利かせるべきなんじゃなかろうか・・・
いや、別に襲って欲しいとか。そういう意味ではない。

ただ命令を受けていないとき、連中は至って普通の人間だった。
なんか、その、家に泊めてもらったり晩御飯ご馳走になったり、実は結構お世話になってたりする。

だから余計に不思議なのだ。

命令を受けていない時は敵ではないと?
しかし俺は連中の組織にとって最重要とも言える存在だ。

何しろ夢と希望を武器にする能力だなんて、それが許されない世界においてなんという皮肉か。
そしてそれは俺が精神的に成長していくにつれより強力な能力になる。

倒すなら今の内だと思うんだが、一体どういう意識なんだか。
町の中にいるときは戦わないというのなら、二年前オヤジさんが殺されたのは辻褄が合わないというもの。

案外、連中は・・・知らず知らずのうちに連中の一味になっていて、命令を受けるまでそれが自覚できないとか?

だとしたら怖いな、一刻も早く自分の責を果たさねば―――


「まぁ、誰に言われたわけでもなけりゃ俺がやらなきゃいけない責任でもないんだけどな」

回想の世界から帰ってきた。
モヤモヤした頭を、深呼吸してスッキリさせる。
歩きながら考えている内に結構時間がたったのか、今は冷たい空気というより若干ぬるかった。

洞窟を出たのは日の出とほぼ同じくらいで、今太陽は腕をまっすぐ伸ばし握りこぶし一個分上にずらした位置にある。
9時か10時ぐらいだと思われる。

イメージを具現化できるのだから時計を作れば早いんじゃね?って話だが、実際そうはいかなかった。
前に同じことを考えてやってみたが、どうにも上手くいかない。

イメージを具現化するという能力上、イメージがあやふやではちゃんとした形にならないのだろう。

「ならせめて食物だけでも!」と思ってやってみた事もある。
実はパンだけなら作れないことも無いのだが、俺のイメージで作り上げたものは短時間で消えてしまう。

だから連中と戦うときもなるべく短時間でケリをつけるか、連続で具現化して戦うかのどちらかをとっている。

だがそれが有効なのはあくまで武器ぐらいの話で、食べ物でやっても栄養が吸収される前に消えてしまうのだ。

それに具現化に使うエネルギーだって結構なもんだ、作っといて意味が無いならプラマイ0、むしろマイナスに過ぎない。

なのでどうしても町に立ち寄らざるをえず、傭兵や畑仕事など色んな仕事で日々を食いつなぐ。
便利なようで不便だが・・・俺の力不足が原因だから文句は言えない。
これでも二年前と比べてずいぶん良くなったんだがな。

「・・・見えてきた」

旅に行く当ては無いが、先程も言ったように町には立ち寄らざるを得ないのだ。
前回立ち寄った町で購入したここら一帯の地図通り、ここまで歩いてきた訳のである。

俺の所持金から考えて、どうしても次に立ち寄らなければならないのは今見えてきたあの町・・・

「ルーズヴェルドの町、か。地名って言うより人名みたいだが」

町の名前ってのは必ずなんだかんだの由来がある。
ルーズヴェルドは紛れも無く人の名前であり、きっとこの町の初代町長とか・・・そういう所から来てるんだろうなと思う。

「はぁ・・・今回も事が無く終われば良いんだが・・・」

もう一度空を見上げると、朝ほどではないがやはり空は透き通っていた。
朝ほどではないが空気も心地いい。
深呼吸したときの爽快感も朝ほどではないが、俺の雑念を払うには丁度良かった。

靴紐を結びなおし、俺はルーズヴェルドに向けて歩き出した。


mlk
2008年03月20日(木) 12時41分13秒 公開
■この作品の著作権はmlkさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
凰雅さん、是非オリジナル投稿してくだされ!
こっちの方で書いてるのが俺だけなんてさびしいのもあるけど、ほかの人の作品も読んでみたいんです
そして願わくばオリジナル掲示板を発展・・・いや、なんでもないです

この作品の感想をお寄せください。
おはようございます。
想像の創造。良いですね、格好良いと思いました。面白みのある能力です。
一見最強な感じですけど、レーザー砲だのビームサーベルだの。或いは拳銃もそうでしょうけど、想像した所で威力の程は?と思いました。
あやふやではいけないのなら、どれもこれも最強と思われる武器は使用不可と言う形ですね。鉄パイプ辺りなら全然余裕でしょうけど、身近な時計ですら上手く行かないとなると……戦い方に制限が出来る分、どう進めていくか楽しみです。
30 アルマ ■2008-03-24 07:00 ID : v4cg/M7Tu5I
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了解しました!投稿、近いうちに。
能力について少しずつ明かされてい感じかな、『敵』の目的と言うか、色々気になるところです。
>発展、させましょう!と意気込んでみる。他の人も来てくれないかなぁ………、向こうで宣伝………。
40  凰雅沙雀 ■2008-03-21 21:56 ID : FZ8c8JjDD8U
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