時空回帰〜日常の為に〜 1
―壱― 開始。

 現在、中の良い友達―南と中川―の二人組と下校中。
 僕も含めての三人組は家も近く、登下校はいつも一緒に行っている。何故かと言うと、僕達の通う学校、めちゃくちゃに距離が遠いのである。しかも自転車通学禁止。これは、僕達の住む家の場所は丁の端にあり、学校は隣の丁の端―勿論遠い方の端―にあるからで、これはもう此処に引っ越した親に文句を言うしかない。
 
 だから、登校、下校中はかなり退屈なので、友達と雑談しながら通うのが日課だ。ちなみに、僕の家が学校から一番遠く、次に南。学校に一番近いのが中川だ。だからまず僕が家を出て、二人の家のインターホンを押すことに自然と決まった。
 二人はそれまで居間でテレビでも見ているらしく、なんとも不愉快だ。しかし、それくらいで怒るようじゃまだまだ子供だ。中学生にもなったんだから我慢、我慢。
 
 今、僕らは中学二年生。入学して直ぐの少し怖いような感覚もとっくに消え、この生活にも慣れている。まだ受験は先だから、一、遊び。二、勉強。の順番になってしまう。半々が理想なんだけど、どうしても誘惑に勝てない僕を誰が責められよう……先生、親だな、多分………。
「じゃあね!」
 中川と別れの挨拶をし、また歩き始める。何時もの事なので中川もさっさと家に入ってしまう。中川と南の家は近い、最初からこの地域に住んでいて、幼稚園からの友達だそうだ。直ぐに南の家にも着き、別れの挨拶をして、また歩く。
 
 ここで僕は一人になる。しかも、僕は小学校からの転入で家も徒歩五分くらいに離れている、口に出したことは無いが少し悲しい。僕ももっと近くがいいな………
 今日はなんと短縮日課なので下校が早い、今の時間は多分三時くらいだと思う。こういうときに学校が遠いと損をする、家が遠い分、遊ぶ時間が短くなってしまう。まぁ、愚痴はこれくらいにしといて、家に帰ったら何をするか考えよう。さっき二人に聞いたら、予定が入っていて遊べないという。だからって、家で勉強するのは短縮日課の日の過ごし方ではないと思う。
 「そうだ!街の本屋に行こう。CDも売ってるし、欲しいのがあったら買うとして、いい時間が過ごせる」
 
 彼の名は時津怜司。普通の中学校に通う、普通の中学生である。怜司は、今まで日常を過ごしていた、このとき、街に行くと決めるまで………。
「ただいまー」 
怜司は、家に帰ると直ぐに部屋に入る。少しでも時間を無駄にしないためだ。「時は金なり」彼の好きなことわざだ。
 部屋に入って、机の脇に鞄―学校の―を置き、鞄―遊びに行くとき用の―を拾い、引き出しの中の財布を鞄の中に放り込む。
「いってきまーす!」
学生服のまま玄関に進むと、玄関の脇の棚を開け、自転車の鍵を取り出す。街は駅の近くにあるので遠い。自転車を使わないとまさに、「時間の無駄」である。

 外に飛び出ると、銀色の鍵を差込み、回す。カチャリと音がした瞬間、駐輪所から引きずり出す。
 道路まで持っていくと飛び乗って、足を動かす。ぐんぐんと車輪の回転スピードは上がり、身体いっぱいに風を感じる。
(はぁー、気持ち良い風………)
一気に加速させてから、足の回転を止める。そうすると、暫くは足を動かさなくても自転車は進み続ける。このとき、身体で風を感じるのが怜司は好きなのだ。
 先ほど、“遠い”と述べたが、それは歩く場合に。であって、自転車などの移動器具を使えば二、三十分で着く。

 こぎ続けること三十分。怜司は街に着く。更に進んで、本屋の前に止まる。
この本屋、本だけでなく、CDやDVD、ゲームソフトまで売っていて、とても便利なのだ。
駐輪場まで押して進み、自転車を止めて鍵をかける。
そうしてから、自動ドアを通り店内に入った。

「さて、どこから見ようかな」
 店は一階と二階で、一階が本、二階がCD、DVDというつくりになっている。
(まずは、CDからかな)
 二階に上がる窓際の階段を上り、まず上がって直ぐにある新作コーナーを一通り見てから、ぐるっと回る。
(前とあんまり替わってないな……)
 そう思うと直ぐに、階段へ向かう。すると、外から悲鳴が聞こえてきた。
(なんだ?隣からだ。強盗でも入ったかな)
 窓から外を見ると、一つの店の周り―店(危険)から充分に離れた距離、道の中ほど―に人だかりが出来ている。
こういうとき、人間は二種類くらいに分かれる。大体が、面倒ごとに『巻き込まれないように素通りする人』と、『騒ぎを楽しんで、よく見ようとする人』…つまり野次馬、に分かれる。

 怜司は、近くで見ようとする人、だった。
 階段を走って下りて、ドアから出る。人ごみの前まで来て、自分は背が高いほうでないと気づく。クラスの背の順では、いつも真ん中と一番後ろの間くらいに居た。
少し跳んでみたりもするが、全く見えない。
(さて、どうするか……)
 暫く考えた結果。一番シンプルで手っ取り早い方法に決めた。それは、強行突破!人ごみと掻き分けて、無理矢理前に出る。
「おい!押すなよ!」「ふざけんな」などの声が聞こえたが全く気にしないで進み出る。一番前に出ると、此処より先に立ち入ると危険、と思わせるものが見えた。
 
 それは、怜司の予想が当たり、強盗だった。入られた店はコンビニエンスストア。中では店員が一人、人質となっている。
 強盗は、顔を謎のマスク―白っぽい色に赤の模様が書いてある、目に穴が開いているだけの面―で顔を覆っている。手にはナイフが握られている。
(これは……凄いぞ!)
 人質になっている店員には失礼だが、こう思わずに入られなかった。無意識に、鞄を漁る。怜司は常にカメラを持ち歩いていて、今、それをを取り出していた。
 
 カシャリと音を立て、写真を撮る。撮った写真を確認すると、
「はぁ、駄目だな。もっと前からじゃないと」
 そう言って、前へ進み出る。
「おい……それは、多分不味いぞ」
 後ろに居た男の人が制止しようとするが、怜司は聞かない。こんな中だ、写真を撮ってる人間くらい沢山居るだろう、でも、それは遠くから。近くからじゃないと犯人の顔は判別できない。
 
 そのとき、強盗が店から飛び出してきた。
 そして、直ぐ隣の路地に入ろうとする。
(これは、追いかけるしかない!でも、自転車は鍵を掛けてある。走っていくか)
 そう決断した刹那、怜司は走り出していた。
「おい!止めろ!!」
 と、さっきの男の人が叫んでいるが怜司の耳には聞こえない。
 走って後を追いかけると、角を曲がる強盗の足が見えた。
 凰雅沙雀
2008年03月21日(金) 23時07分05秒 公開
■この作品の著作権は 凰雅沙雀さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも、ゲームをして泣く凰雅です。
新作で、続き物ですね。
 
さて、今回こんなところで区切りましたが次回の長さに足りるかどうか不安です……次回、ずいぶん短くなっちゃうかもな。しかし、思い切りは大切なので特に気にせずUP!では、感想お願いします。

なんかタイトルに数字が無いので、+間があったので、しなくてもいいのに再投稿。

この作品の感想をお寄せください。
続きが読みたくなる内容ですね 50 三代目L ■2008-03-22 10:49 ID : RC7OcmiRpKM
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すごいな、俺なら見に行くとしても追いかけるなんて真似できねえや。
なぜカメラを常に持ち歩いているんだwww
40 ケルベロス ■2008-01-13 19:04 ID : If3qiekeSNg
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とりあえずトカレフ一丁持っておけw 40 メタルギルド ■2008-01-12 14:09 ID : t3bSKwRpPcI
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怜司は防犯のためかばんの中ににスタンガンやナイフが・・・
いや、クロスボウかもしれない。
いやいやいや、やくざから購入した拳銃とか?
40 荒覇吐 ■2008-01-12 12:42 ID : 9whcjPgGIeo
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「家で勉強するのは短縮日課の日の過ごし方ではないと思う」←激しく同意w
それにしてもなんという好奇心と勇気、、、私にもわけて欲しいwチャリで2、30分だったら私の家と高校までとちょうど同じくらいですね、確かに歩けば辛い、、、すごい坂もあるしw
40 Seraphim ■2008-01-12 12:12 ID : jbVTm2OgWU6
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