時空回帰〜日常の為に〜 2 |
―弐― 結果 路地に入る強盗を追う怜司。 追いかけて路地に入ると、その先の角を曲がる強盗の足が見えた。 (この距離なら、勝てる!) 怜司は、このような裏通りなどには無駄に詳しく、勝たなくても良いのに、勝てると確信していた。しかし、それは追いつくまで。その先は、分からない。 狭い家と家の間の細道を縫うように走る強盗。おそらく、まだ怜司が追っていることには気づいていない。何処かに隠れるつもりなんだろう。 その後を、なるべく音をたてないように走る怜司。慎重に、見失わない程度の距離を保って追う。 そんな状態は長くは続かなかった。 強盗が走るのを止めたからだ。 怜司も足を一旦止め、慎重に後をつける。 背中を見ながら追っていると、強盗は何処かのビルに入っていった。見掛けから判断するに、何にも使われて無いだろう。灰色のような壁には無数のひびが入り、窓も全て閉まっていて、中は暗い。 強盗が一旦逃げ込むには最適だと思う。怪しすぎる気もするが……きっと、少し休んで、その後何処か遠くに逃げるのだろう。 強盗が入った後、その後を追う。恐怖心に好奇心が勝った。警察に連絡することも忘れ―忘れてなくとも、携帯電話は持っていない―中を探ることに決めたのだった。 中は薄暗かった。照明は壊れていて、付きそうもない。窓からの明かりに頼るしかなかった。 また、床はコンクリートが剥き出しになっていて、そこら辺に色んな物が散乱している。ゴミ袋、角材、布切れ、紙くず。他にも、鉄パイプやコンクリートの破片が落ちていた。 それを踏みつけながら―音は立てないように―強盗がいるであろう場所、音の聞こえる方面を目指す。 音は、上から聞こえてくる。二階に上がったらしい。 怜司も手すりに掴まりながら階段を上がる。 上がった後、柱に身を隠しながら窺うと、強盗と思われる人物―“思われる”なのは、マスクを取っているからだ―がいた。年齢はよく分からないが、男だということが分かった。 床に座り込み、バックの中身を見ている。そのバックの中には、札束が見える。 (やっぱり、こいつが強盗だな) そう確信し、顔を覚える。 (でも、記憶は曖昧だ。物的証拠を………) カメラを取り出し、躊躇なくシャッターを押す。 カシャリ。 機械の無機質な音がビル内に響く。 (し、しまった!此処は静かだから……聞こえた!) 柱に隠れて見えないが、男が立ち上がった。気配で分かる。 (こ、れは、不味い!) 鞄にカメラをしまう。だが、その動作も不味かった。 「やあ、こんなところで……何をしているんだい?」 男の、太い声が投げかけられる。素早く顔を向けると、男が隣に立っていて、手を振り上げていた。そして、その手にはナイフが。 「う、うわぁあぁぁあぁ――!」 考えるより先に、鞄を持っている腕を思いっきり振った。 鞄は見事男のわき腹に命中。男は意表をつかれ、驚いた顔をしながら…怜司の鞄を掴んだ。 「小僧がぁ!」 男は、怜司の鞄を後ろへ放り投げる。 中を舞う鞄には、証拠の写真が入っているのだが、 (命のほうが大事だ!) 背を向けて、一目散に階段へ向かう。そして階段を下りようとしたとき、その襟首を掴まれ、下に放り投げられる。 「痛っ!うぅ……」 階段の角に肩やら腹やらを強く打ち、打った部分を押さえながら倒れた怜司に、上から声がかけられる。 「別に、お前に恨みがあるわけじゃねぇが、顔を見られたんだ、生かしてはおけないなぁ……。俺を恨むなよ?恨むなら、自分の弱さを恨むんだな!」 男が階段の中程まで降りたとき、怜司が立ち上がった。そして、落ちていた鉄パイプを手に取る。 「おぉ?やるかぁ?」 男が挑戦的な眼差しで怜司の目を睨む。怜司はそれに対して睨み返した後、横に走った! 「ちっ!逃げるなよ!!」 男も怜司の後を追い、走る。怜司は窓までたどり着くと、鉄パイプでそれを殴った。ガシャァン…という音が響き、そこから逃げる筈だったのだが、 (強化ガラス!?) 窓には白いひびが大量に走り、外が見えなくなっただけだった。 (無駄に金をかけて!) 目を見開いて、心の内で悪態をつく。そして、身体と共に振り返ると、男が走ってきていた。 自分の腕ほどの長さの鉄パイプを両手に構え、来る敵を迎え撃つ。心の内で、今の自分の勇敢さを称えるが、しかし自分は嫌がっている。早く逃げ出したいと思っているのを、震える膝に思い知らされる。 「あぁああぁぁあぁあ―――!!」 恐怖を吐き捨てるように叫び声を上げ、持つ鉄パイプを振り下ろす。 しかし、男の手にも似たようなものがあり、激しい音を立て、その場で固まる。 「ぐっ――!」 力の差は圧倒的だった。 鉄パイプを弾き飛ばされ、男に腹を殴られる。 「がっ、ぐ、はぁ」 怜司の身体が、膝をつき、崩れ落ちる。 「は、はぁ……ぐっ、あ、はぁ……」 肩で息をして、地に蹲る怜司に、男が鉄パイプを振り下ろす。 灰色のコンクリートに、赤い血が飛び散る。 ひゅっ―――ぐちゃっ……ひゅっ―――ぐちゃ。 殴る、殴る。 一回の動作につき、一度、血が飛び散る。 同じ動作を、地面が赤に染まるまで続ける男。 「はぁ……はぁ…はぁ」 息を荒げた男の足元に、血に塗れ、不自然な格好の少年が、横たわっていた。 |
凰雅沙雀
2008年03月21日(金) 23時08分32秒 公開 ■この作品の著作権は 凰雅沙雀さんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | |||||
---|---|---|---|---|---|
凰雅沙雀がこれから投稿する小説はこれの続編ですか? 楽しみです、wktkで待ってます |
40点 | mlk | ■2008-03-21 23:21 | ID : VCYg4qBnRYU | |
・・・なんかまた嫌な予感がするんですが・・・ まあ気のせいとしておきます。 |
30点 | カイナ | ■2008-01-27 09:13 | ID : w9eT4U6tOE2 | |
えーと・・・・・主人公がこの男になりました、本当にありg(ry | 30点 | メタルギルド | ■2008-01-26 15:06 | ID : NkC/XpGFwbw | |
合計 | 100点 |