時空回帰〜日常の為に〜 3
―参― 試行 


「おいっ、なにぼぉーっとしてんだよ!」

「えっ?」
「えっ?じゃねぇよ。突然止まって……」
 話しかけてきていたのは南だった。

(何だ?僕は確か強盗に殺されて……)
 今、怜司は南と歩いている。いや、歩いていた。

(殺されていたんなら、僕は今、此処に居るはずが無い。ということは、幻覚?でも、あんなにリアルだった……)

「じゃあな、ぼーっとしてると車に轢かれるぞ」

(さっきのは、何だったんだ?殺される前の痛みも全て覚えてる……幻覚?) 
 相変わらず止まっている怜司に、南が話しかけたが、怜司は動かない。
「なんだよ……」
 そう言って南は家に入っていき、扉を閉めた。

「あ………」
(今は止めよう。考えるのは家に帰ってからだ)
 そう思い、怜司は家へと歩き始めた。
 
 家には直ぐ着いた。自室へ入る。
「さて、どうしよう」

 考える。と、決めたのだが、そう簡単に答えが見つかるはずが無い。
(………そうだっ!)
 怜司は、簡単かつ楽な方法を見つけた。

 それは、実際に幻覚(?)で見たことを実行する。というものだ。

 確かに簡単だが……危険な方法だ。最後に怜司は殺されてしまった。それを完全に実行するということは、“死”を意味する。でも、怜司は途中まで試そう。と思っているだけだった、とても、軽い気持ちで決めたのだった。 

 そうと決まったら家にいる意味は無い。怜司は外へ出かける。
 自転車に跨り、街を目指す。


「僕が入っていったのはこの店だな……」
 記憶を辿り、出てきた店へと入る。

(よく来る店だし、不自然さは無いよな)
 この“不自然さ”とは、先ほど見たものが、現実で起こりうるものなのか、と 考えた結果、自身が行くはずも無い場所に行ったとなると、現実とは全く関係が無いことになる、と判断したのだ。しかし、出てきた店は、自分にとって馴染みのある店。現実で起こる可能性がある。

(あれは…未来を見せたものだったのかな……?)
 怜司は、自分が殺される所までは行かなくとも、ある程度は幻覚の通りに行動するつもりだ。だが、夢と同じように、記憶は曖昧で、詳しい行動までは覚えていなかった。

 だから、覚えていない部分は自分の意思で行動した。幻覚の自分と今の自分の行動が同じだと信じて。
(とりあえず、時間が来るまで暇を潰していよう……)
 店の一階で本を手に取り、眺める。

 “眺める”なのは、小説などは、読んでいると集中してしまう性質で、騒ぎを逃すかもしれないからだ。

 その後、五分経たないうちに、外から悲鳴が聞こえてきた。
(来たっ!やっぱり未来を示していたんだ!)

 持っていた本を棚に戻し、大急ぎで外に出る。
 走って騒ぎの中心に急ぐと、
「はぁ……なんだ、見れないよ」

 野次馬が周りに沢山群がっていて、中を見ることが出来ない。
(これは……強行突破だな)
 人ごみを掻き分け、前へ進み出る。

 怜司の目に映ったものは、強盗と思われる人物―マスクで顔を隠してるし、ナイフを持ってるし間違いないだろう―が、店員一名を人質に、金を出せと要求している。
(これは……凄いぞ!)
 鞄の中に手を入れ、カメラを取り出し、写真を撮る。

 撮ったものを眺めると、
「駄目だな……もっと近くに行かないと」
 写真には、人が二人並んで立っているだけのようにしか写らず、怜司を残念がらせた。

 近くに寄ろうと足を踏み出したとき、幻覚を思い出した。
(そうだ!強盗が逃げ込むビルを警察に教えれば……)
 幻覚では、強盗を追って、殺された。

 ならば、追わなければいい。

 至極簡単な事を実行に移そうと、公衆電話を探す。だが、こんな街中に公衆電話があるはずが無い。昔はそこそこあったそうだが最近は携帯電話が主流になり、姿を消している。

 携帯電話を持っていない怜司にとっては大変迷惑だった。といっても、殆ど使ったことは無いが。
(さて、どうする?) 
 自身に問いかける。

 だが、そう簡単に答えが見つかるはずも無い。
(早くしないと……強盗が逃げてしまう!)

 そのとき、要求したものを手に入れたのか、強盗が店から飛び出してきた。
(あっ!このままじゃ逃げられる!)
 考えるより先に、身体が動いた。

 強盗が逃げ込んだ路地へと歩を進める。
「君っ!」
 幻覚に出てきた男の人のものと同じ声が、怜司に静止の声を送ったが、怜司は気にせず走っていった。

 ただ、走りながらも怜司は思っていた。
(幻覚のものと、言葉が違ったような……)
 という疑問を。


 強盗は、幻覚に出てきたビルと同じビルに逃げ込んだ。
(これに入ったら、命が無いんだったな)
 そう思って、中には入らないつもりでいた。

(でも、あいつが居たのは二階だ、一階は問題ない。それに、もしものときの為に、武器が欲しい。) 
 中には、鉄パイプがあったはずだ。と思い、音を立てないように忍び足で入って、武器となるもの―錆付いた、腕の長さくらいの鉄パイプ―を手に取り、また外に出た。

 出口付近の草の茂みに隠れ、カメラを構える。
 出てきたところを撮って、それを警察か何かに届け出ようと考えたのだ。
 十分くらい待っただろうか……強盗犯と思われる、三、四十代の男が出てきた。

(こいつか!)
 男の顔を写真に撮った。

(よし、後はこれを届ければ……っ!)
 安堵が油断を生んだのだろうか、脇に置いておいた鉄パイプが音を立てた。金属と、何か硬いものがぶつかるような音が、鳴る。

 男の足が止まった。

 ゆっくりと、此方へ向き直る。

(これは、危ない!)
 そう思って、焦る間にも男は近づいてくる。

 男は、怜司の隠れている茂みを覗き込む。
 覗き込んで、怜司の姿を認識した瞬間!視界に鈍く光る銀色の棒が入った。

「うぉお!」
 男は反射的に身を翻らせ、眼下に迫った鉄パイプを避ける。が、咄嗟の事だったので地面に尻餅を付いてしまう。

 痛む腰などを擦りながら、起き上がろうとした所に、また銀の棒が目に映る。
「ちっ!またか」
 また、よく見直すと、それは鉄パイプを掴んだ少年だった。
「小僧、よくもやってくれたな………」
 そう言って、内ポケットからナイフを取り出す。

 それを構え、応戦しようとするが、
 少年は走って逃げた。
「おいっ!待ちやがれ!!」
 静止の声を無視し、怜司は走り去った。

 男は、怜司の、鉄パイプを持っている手で無い方の手に、カメラが握られているのを確認した。
「なっ!………あいつ!」
 男は、怜司の走り去った方向に走り出した。
 凰雅沙雀
2008年03月21日(金) 23時21分05秒 公開
■この作品の著作権は 凰雅沙雀さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも、久しぶりの更新、読んだら、感想下さい………。
え〜、訳が分からなくなりそうなストーリー展開?分かってもらえると………。分かり、ました、よね?
えっと、うん、まぁ、こんな話です。この後も、たまに更新しますんで(不定期)、今後とも宜しくお願いしま〜す。

返答、というもの。
え〜、主人公は、変わりません。多分、いや、予定には無いです。そして、『嫌な予感』?なんだろ………、嫌な予感、的中しましたか?どうなんだろ。

訳が分からなくなったら、1と2を。お願いします。………まとまらなさ過ぎかな。


三代目Lさん、挨拶?やめて頂きたい。感想を書いて下さい。あと、零点を入れるなら、ダメな理由を教えていただきたい。

mlkさん、出来れば、コメントを編集してやって欲しいです。

この作品の感想をお寄せください。
ちょっと!!危なっかしいですな!
未来予知ですか。漫画アンカサンドラに近いものを感じますな。

タイムパラドックスというものをご存知ですか?
歴史は変えられないといったアレです。
?ちょっと違うか。
30 生徒会長7 ■2008-04-07 20:19 ID : SRGaKim4DWg
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久し振りにここにきたから、コメントあまりしていなかった・・ゴメン。

金属と何か堅いものがあたるような音って硬いものってなんですか?
本編に関係ないなら別にいいですけど。・
30 ケルベロス ■2008-03-25 22:35 ID : If3qiekeSNg
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おはようございます。
これは、タイムパトロールに捕まりそうな…。
簡単に歴史を、些細な事ですが塗り替えてますよね。
何故こんな能力が、と言うのも野暮ですが。
日常の為に。ちと、正義思想が段々曲り、悪に走って……と言う嫌な落ちを連想させるタイトルに恐怖です。
30 アルマ ■2008-03-24 07:04 ID : v4cg/M7Tu5I
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こん 0点 三代目L ■2008-03-22 18:57 ID : RC7OcmiRpKM
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↓我慢できずに「ファンタジア!」とか突っ込んでみるwww 0点 mlk ■2008-03-22 16:56 ID : VCYg4qBnRYU
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時をかける青年、クレs・・・あ、気にしないで下さい、分かる人には分かりますが。
未来が分かってる青年、さてと、逃げ切れるかな?
30 カイナ ■2008-03-22 11:17 ID : w9eT4U6tOE2
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時をかける少女ならぬ時をかける少年・・・?
さて、逃げ切れるのか・・・
30 mlk ■2008-03-21 23:23 ID : VCYg4qBnRYU
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