Criminal
番兵がいない村の入り口を抜け、俺はルーズヴェルドの地を踏んだ。
このご時世どこの村にも言える事だが・・・やはり活気が無い。
そりゃ夢と希望を禁じられちゃそうなるのも仕方ないだろうけど、ちょっとキツいもんがある。

この二年間立ち寄った町・村の中では、俺が元々住んでいた町が一番活気があっただろう。
まぁそれもオヤジさんが死ぬまでの話に過ぎないし、多分あの町はもう存在しないだろうと思われる。

俺があのまま町に残っていても残っていなくても、起こしてしまった結果に事実がついてくるだけなのだ。
あそこで、故意でなくとも連中を殺してしまった時点であの町の命運は決まっていたのかもしれない。

「―――そこのお兄さん」

町を歩いていると不意に、脇道の方から誰かに声をかけられた。
建物と建物の間の暗くて細い道の奥、いわゆる路地裏にその声の主はいた。

若い女性のようだ、しかもかなりの美人。
だがあの身なりは・・・


「・・・もしかして占い師? よくもまぁそんな危険な仕事をするもんだ、一歩間違えれば連中の餌食になりかねないぞ」

「私も今までそれに怯えながら日々過ごして来たんです」


この女はいきなり何を言ってくるんだ。
初対面に過ぎない上、金も持ってない俺を勝手に占われちゃ困る。
そして俺は占いなんて信じないし、さっきも言ったように占いなんか信じて夢を持ち、殺されたんじゃ話にならない。

だから占い師は、何処に行ってもゴミ以下の扱いを受けているそうだ。
俺にはそこまでの扱いを受けながらそれを貫き通す占い師達がわからない。


「私は占い師のアリシア、貴方は?」

「占ってくれるのか?悪いが俺は占いなんて信じないし金も持ってないんだ」

「いえいえ、貴方を占うなど意味が無い。叶うか叶わないかわからないのが夢と希望という物なのですから」


――今この女は「夢と希望」と言ったのか?
馬鹿な。
その言葉を口に出すだけで連中がやってくるってのを知らないのか・・・!!


「お前、今自分が何を言ったのかわかってるのか?命が惜しいなら早急にここを立ち去った方がいい・・・いや、少しでも生き延びたいなら」

「大丈夫です、貴方がいるので」

「俺がいるって・・・俺まで殺されてたまるかよ」

「戦わないのですか?」

「なんで戦―――」


早かった。
俺が「なんで戦わなきゃいけないんだ」と言い終わる前に、連中はやってきた。
身なりは、そこらへんの普通の村人と言った所か・・・

考えている事や行動パターンがすべて同じな割りに毎回姿形だけは違うのだ。
だがこいつらの目を見れば連中の一味かどうかはすぐわかる。


「この「自分の意思が無い目」は・・・くそっ!だから逃げろって言ったのに!」

「逃げても無駄なのは貴方が一番、この世の誰よりも深くご存知なのでは?」


会話など許してくれない、アリシアを「敵」として認識し、間髪いれず自慢のナイフで襲い掛かってくる。
・・・初対面の人間だろうと、俺の目の前で誰かに死なれるのはもうご免だ・・・

「チッ!!アリシア、伏せてろ!絶対にこっち見るなよ!!」

できれば人前では使いたくなかったこの力。
下手に人に見せれば「奴等を倒せるじゃないか!」等という希望を持ち、奴等に殺されるのがオチなのだ。

一瞬で双剣のイメージを完成させ自分の内から具現化する・・・!

「くっ・・・!」

いつもは前もって「俺は死なない」イメージや双剣のイメージを作っているが、今回は急すぎた。
急ごしらえに作った双剣は敵の一撃の下に砕け散った。

「―――」

そして容赦ない喉元への斬撃。
それを残った左の剣で受け止め、再度急ごしらえのイメージで作り上げた双剣
を右手に具現化し、反撃の切り替えし。

「―――」

飛びのく刺客。
反動なのか、それとも距離を取ったのかは俺の知る所ではない。
だがこの隙に欠陥があるイメージを補足する。

0.5秒程目をつぶり今両手に握っている双剣のイメージを完成させる。

目を開けたと同時に、再度俺の目の前まで距離を詰めてきた刺客の攻撃を、今度はガッチリ受け止めた。

「よし・・・これなら・・・」

最後のイメージ。
鍔迫り合いをしている内に完成させる。

―俺は死なない――俺は倒れない―――コイツより強い――――絶対負けない―――――

物を創造するイメージ以外なら目を閉じる必要など無い、自己暗示のような物でも俺なら確実に力にできる。

湧き上がる力を確認した後、攻撃を押し返す事で鍔迫り合いを終了させ、今度は俺が敵の間合いに踏み込んだ。
ここまで来ればもういつもの戦闘と変わりない。

「―――」

力任せの攻撃で、防御に入ったナイフ毎敵をぶった切る――
――つもりだったのだが

「うわぁ!!人殺しだ!!」

予想外の邪魔が入った。
そうだ・・・ここは街中、路地裏といえどキンキンガンガン鳴らしてりゃ人も来る。

途端、腹部に指すような痛みを感じた。

「ぐ・・・?」

俺の一瞬の隙を見逃さなかったのか、刺客に残された一本のナイフが俺の腹の中をかき回していた。

痛みでイメージが乱れる。

双剣が消え去った。

だが・・・俺はここにいる・・・!!

「うぉおあああああ!!」

腹にナイフが突き刺さったまま、刺客の体を持ち上げる。
そのまま要所要所を掴み、俺の究極必殺最強奥義の投げ技「ドラゴンスクリュー」を放った。


「俺は逃げる、アリシアも逃げろ」

「その怪我で何処に行こうと言うのですか?」

「ここで死ぬよりはマシだ、じゃあな」


しつこく腹にささりっぱなしのナイフを抜き、悶絶する刺客と村人を尻目に走り去る。


「町外れの宿屋に来てください!お礼はしますので!」


最後に聞こえたのは村人の野次にまぎれるアリシアの声だった。
mlk
2008年03月25日(火) 23時32分35秒 公開
■この作品の著作権はmlkさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
モンスターと戦うより対人の方が描きやすい件

「連中」「奴等」「刺客」と色々呼び方が変わっておりますが、敵の組織の名前が判明してないので我慢してくだされ

あえていおう
ガイアネタバレ自重wwwwwww

この作品の感想をお寄せください。
ィィイヤッホオオオオーーーwwwww
ネタバレっぽいらしいから削・除。w
ま、かなり遅かったけどなwwwwww

あえていわないでwwwwwwwwww  自重するからwwwww
30 ケルベロス ■2008-04-20 21:59 ID : If3qiekeSNg
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「なんで戦―――」
やっぱ戦うのには理由が必要ですね。ロープレだと何が何だか分からないままに戦いますからね。大体は。

<「連中」「奴等」「刺客」と色々呼び方が変わっておりますが、>
いいと思いますよそれで。
40 生徒会長7 ■2008-04-07 20:12 ID : SRGaKim4DWg
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……アリシアの言動が、なんか……、やだな。なんか、良く分からなくて。
予想外の邪魔というのは大変だなぁ。なんてったって予想外だからね。先も待ってます。
30  凰雅沙雀 ■2008-03-25 08:21 ID : FZ8c8JjDD8U
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こんばんわ。
不 思 議 美 女 アリシア登場。
見ていると、占い師と言うよりは預言者と言った感が強いかもですね。
臆さない態度には、一体どういう意味があるのか。この前、戦闘の描写の話感想に書きましたが、早速始まりましたね。
完璧なイメージを持たねばならない。気が弱くては一向に強くならない能力ですな。腹を刺されて双剣が消え去ると言う事は、ダメージもむざむざ受けてられないと。益々難しい戦闘になりそうですね。
30 アルマ ■2008-03-24 20:11 ID : v4cg/M7Tu5I
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