幼き城主と若き死神〜第一話〜
「王子ー!王子ー!」
城中にこだまする喧騒。ここリビン城は現在14代目の城主を迎えたのだが、それがまた困ったわがまま王子。
歳は先日14を迎え、現在は年に一度の祭りへ向かう支度を行なっている途中だ。

「何だよ! さっきからうるさいな」
このクソ生意気なガキがこの城の今の主……ヴァンだ。

「何だではありません。これから汽車に乗って国境付近まで向かうのです。ボディガードをつけなくては」
ヴァンがムッとして言う。

「俺はもうガキじゃねえんだ……第一ここにいる奴らは皆そりが合わない」

「しかし……」

「しかしじゃねえ! いらねえって言ってんだよ!」
ヴァンが怒鳴り声を上げた。

「……歴代の城主は皆それぞれに専属のボディガードをつけていたのです。あなたもそろそろ……」

「今に考える」
ヴァンは軽くそういうとさっさと城を出てしまった。

「それに……ボディガードは俺が見つける」





城を出た後の汽車の中にて

「王子こちらです」
さっきからうるさくヴァンの名前を呼んでいるこの執事の名はギド……最近ため息が多くなったと日記にも書いてあった。

「おう……」
汽車の廊下を歩いていたヴァンの視界に入ってきたのは個室の中で仲良く話をしている老夫婦……外を見ながらはしゃいでいる子供とその母親……顔を帽子で隠して居眠りをしている二十歳ほどの青年など、全く何の共通点も持たない面々だ。

(色んな人がいるな)
ヴァンはそんなことを思いながら廊下を歩く。

「つきましたよ王子……ここです。ここが王子の部屋です。可能な限りここから出ないようにして……」
ギドのそんな言葉をヴァンはうるさそうに遮った。

「分った分った……ったくうるせえな」

「それでは王子……良い旅を」
そんな会話をギドと交わした後すぐにヴァンは眠ってしまった。



――それから数時間後――
ドゴオオオン!ギギギィィィィ!
物凄い轟音とブレーキ音が同時に鳴り響いた。
ヴァンはすぐに目を覚ますと周りを見る。どうやら何らかの爆発物が原因で汽車が止められたようだ。

「クッソ! 盗賊かなんかか?」
ヴァンは身の危険を感じ、すぐに部屋を出た。

「ギド! おいギド!」
ヴァンが叫ぶが、ギドからの返事がない。

「おい!ギド!……いて!」

「うるせーな何だお前は」
ヴァンがぶつかったのはさっき見た居眠りをしていた青年だ。

「おい……聞いているのか?」
その青年は大きなアタッシュケースを持ち、逃げる様子も無くそこに立っていた。

「あ、ああ。すまない……」
ヴァンが返事を返すと青年は相変わらず無愛想に

「気をつけろ」
とだけいうと自分の部屋に戻ってく。

「おい!ちょっと待ってくれあんたなにが起きたのか知っているのか?」
ヴァンが聞くと青年は面倒くさそうに答えた。

「心配することはねえ……ここにいる奴ら俺を除いて全員あの世行きってだけだ」
ヴァンの表情が凍りつく。

「ど……ういう事だよ」
恐怖におののきながら青年に質問をする。しかし返ってきた答えはまともな物ではなかった。

「なーに……死神が5体ほどこの汽車に乗り込んだだけだ」

「死神? なにを馬鹿な……そんなのがいるわけ」
ヴァンの言葉をさえぎったのはギドだった。

「ヴァン様ー! 大変です!」
ギドの顔は信じられない物を見たように凍りつき、声はほとんど裏返ってる始末。
ヴァンはいたって冷静にギドに言葉を掛けた。

「落ち着け……何が起きたかゆっくり言ってみろ」

「は、はい……さっきの爆発音を不審に思い車両の最前列まで様子を見に行ったんです」
青年は相変わらず何も言わないで二人を見ている。

「そしたらなんと……異形のものが5人……汽車の乗り組み員と乗客を襲って……」

「それ以上は言わなくてもいい」
話の途中から再びギドの顔に恐怖の表情が戻り始めたのに気付き、ヴァンはすぐに話を止めた。このような状況では、冷静さを欠くことが何よりも恐ろしい。ヴァンはそのことを直感的に悟り、今の行動に走った。

「あんた……」
ヴァンが青年に話しかける。

「ここにいる『自分以外の』全員が死ぬと言っていたな」

「…………」
青年は無言のままだ。

「それは自分は助かることができるということだろ?」

「ああ……それで?」
青年が重い口を開いて、ヴァンに問う。

「俺とギドを守ってくれないか?」
ヴァンの予想外の一言に青年とギドは目を見開いた。そして……

「俺は雇われボディガードだ……ただでは働かんぞ」
ヴァンはコクリと頷き、

「報酬は?」
と青年に聞く。

「金はいい……美味いもんたらふく食わせろ」
ヴァンは笑いながら青年に言ってやった。

「食いきれなくても残すなよ」

「いうじゃねえかガキ!」
青年は笑いながら言う。

「俺はガキじゃねえ! ヴァンだ!」

「俺はベイン……それじゃあ交渉成立だな」
ベインは笑うのをやめてそう言うと、すぐにアタッシュケースから巨大な銃を一丁と分解してしまってあった鎌を取り出した。
ヴァンは銀色の鎌の輝きに一瞬魂を吸われるのでは無いかと思ったが馬鹿馬鹿しいと首を横に振る。

「……早速お出ましか?」
ベインがそう言った直後個室の入り口に不気味な人影が浮かび上がった。
ぐおおおおおおぉおぉぉ!
物凄い唸り声の後その人影はドアを突き破り部屋へと侵入した。

「何だよ……こいつ……」
ヴァンの顔が恐怖の表情に固まる。
そこに現れたのは人ではない……人の形をしているだけの真っ黒い影……。
影はヴァンとギドを見つけるとすぐに襲い掛かる。

「悪いな……せっかくの仕事だ失敗するなんてことにはしたくない」
ベインがそういった直後、影の動きがピタリと止まった。
ヴァンがベインの方を見るとベインの銃の銃口から煙が上がっている。

「どうだ? 銀の弾丸は? 高いからあまり使いたくないんだが……効果は絶大だろ?」
ベインがヴァンに向かって言う。

「そうだ……止めを刺してやらないとな」
ベインが影にゆっくりと歩み寄り……手にした大鎌で黒い塊を一閃した。

「残り4体」
ベインは小さくつぶやくと、個室を出た。ヴァンもそれについて行く。ギドも……

「こんなとこに一人残されるのは御免だ」
と二人の後を足早に追った。
ZERO◇6ocnM3HRdjQ
2008年04月10日(木) 22時33分23秒 公開
■この作品の著作権はZERO◇6ocnM3HRdjQさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
えーと、僕がとある掲示板で書いた小説をそのまま載せただけです。
結局いまのところここの小説と別の掲示板のをあわせると、6個くらい小説掛け持ちしていますね。
   レス返し
生徒会長7さん>ヴァンの名前は適当です。あえて言うなら『ヴ』を入れたかったんです。

この作品の感想をお寄せください。
これを見たとき、即座に『○リー○ッター』を思い浮かべてしまったんだが……。気にしないで下さい。
続きが気になりますね。わくわくです。
30  凰雅沙雀 ■2008-04-14 22:57 ID : FZ8c8JjDD8U
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FF12とかゾイドとか名前の下ネタ的なものは色々考えられますな
30 mlk ■2008-04-11 01:48 ID : LcaT1Dw0IZw
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死神・・・ですか。
よくまとまっていていいと思います。
ヴァン?どこかで聞いたような・・・?名前の由来は何ですか?
よければ教えてください。
40 生徒会長7 ■2008-04-07 20:09 ID : SRGaKim4DWg
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