幼き城主と若き死神〜第二話〜 |
「おい、ヴァン」 ベインがヴァンに話しかけた。 「ん?」 ヴァンが返事をするとベインは歩みを止めて、振り返る。 「守るのはお前とそこのオッサンだけでいいんだな?」 契約内容の確認かとヴァンは少しホッとして頷いた。 「ああ、それだけでいい。少し良心は痛むが、いたしかたない」 そんなヴァンを見てベインは少し笑って言葉を続けた。 「その点なら安心しろ……もうここでの生き残りは俺たちだけだ」 その言葉に仲のよさそうな老夫婦とあの親子が思い出される。 「どうした? そんな顔して」 ベインの言葉にヴァンはハッとする。どうやら考えていたことが顔に出たのだろう。ヴァンは一言 「なんでもない」 とだけ言うとベインから視線をそらした。 「……いたぞ3体だ」 出口の目の前まで来て残っていた3体と遭遇してしまった。 「ついてないな」 ヴァンがつぶやくとベインがそれを否定する。 「いや、そうでもない……もし、あいつらが後ろから追ってきたらそっちの方がたちが悪い。……敵が来る方向が限られているだけ……」 「まだ、まし……か」 ベインは軽く頷くと銃の装填数だけ確認して3つの影の前に出た。 獲物を見つけた影が歓喜の叫びを上げる。 「喜んでる暇があったらしっかり狙うんだな」 三つの影のうち1つを一閃にて切り払い、2つの影に向き合う。 影はどこで声を出しているのか、唸り声をあげた。 「俺に遭えたのがそんなに嬉しいか? 悪いが俺はお前たちが嫌いだ」 軽いジョークを混ぜた言葉を影にかけるが影はそれに反応することは無かった。 「言ってもわからねえか……俺が馬鹿だった」 ベインは笑いながら影の攻撃をかわす。 「おい! ベイン! さっさと終わらせてくれ」 それを聞いたベインは忘れてたといわんばかりに二人に手を振るとかわすのをやめて鎌を腰にすえるように構えた。 そのままの構えでベインは静止する。すぐに影がベインに向かう。 「秘技! 帝!(みかど)」 ベインは掛け声とともに居合いの要領で鎌を抜き放った。 抜きはなたれた鎌は範囲内にいた影を容赦なく一閃し、わずかに離れたいたもう1つの影も捉えた。 「こういうの真空波っていうんだぜ」 ベインは鎌を一振りすると肩に掛ける。 「おい! ヴァン……終わったぞ」 「あ、ああ……」 怪しい銀の輝きに見入られかけていたヴァンはその言葉にふと我に帰った。 「1つ……まだ気になることがある」 「ん? 気になること?」 ベインが深刻そうな表情を浮かべていう。 「ああ、一体たりないんだ」 ヴァンはハッとした。確かに最初にベインが言っていた数とギドが言っていた数は5体……しかし、今まで倒したのは4体。 「まあ、最下級の『ブラック』だけなら心配することは何も無いんだが……」 恐らくベインが言っているブラックとは今まで倒してきた影のことだろうとヴァンは思った。 だが、口にする必要も今は無かったので、一切の言葉を出さずその場をすごした。 すぐに危険な汽車を出て、線路に沿って草原を歩いていると…… 「で、聞き忘れたが……」 ベインが二人に問う。 「俺はいつまでお前らについていけばいいんだ?」 ヴァンは少し黙った後、ゆっくりと口を開いた。 「報酬の事もある……俺の家につくまでは一緒にいてもらうつもりだ」 ここで城と言わなかったのは、城の外ではできる限り普通の国民と同じように振舞えと幼いときから周りの者に口うるさく言われてきたからだ。 「だが、その前に俺は祭りに行きたくてこの汽車に乗ったんだ。それをやめるのはあまりにも惜しい……」 「要するに俺に祭りが終わるまでつけと……」 ベインの表情が厳しい物に変わる。 「報酬は……」 ヴァンがそれについて言おうとしたが、ベインがそれを止めた。 「そういえば、俺は一度食ってみたいものがあってな……林檎飴っていうらしいんだが」 林檎飴……祭りの露店に良く出されるそれは祭り以外にはそうそう出回る物ではない。 その妙な稀少さゆえに祭りに行かないものには王宮に出される料理くらいに物珍しいもののようだ。 「祭りでなんか、おごれ……それで延長分もチャラにしてやる」 本当に食う事ばかりだなとヴァンは思ったがさっきも思ったようにいう必要が無いので、そこは軽く頷いておいた。 |
ZERO◇6ocnM3HRdjQ
2008年04月10日(木) 22時42分04秒 公開 ■この作品の著作権はZERO◇6ocnM3HRdjQさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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その『残り一体』が祭に居そうで怖い……。 ブラックの上は何かな、……想像がつかないwww 楽しみですよ。 |
40点 | 凰雅沙雀 | ■2008-04-14 23:00 | ID : FZ8c8JjDD8U | |
合計 | 40点 |