Criminal
「くぅ・・・いたたた・・・」

やっと町人と追っ手を巻き、今俺は人気が全く無い先程とは別の路地裏にいる。
逃げてる時は必死だったからあまり気にならなかったが・・・落ち着いてくると同時に刺された箇所が鋭く痛む。

正直「いたた」のレベルじゃない、普通に失神しそうなぐらい痛い。
イメージで直せれば楽でいいのだけどこんな状態じゃイメージに集中できないし、そもそも俺は体の構造なんて全くわからんのでイメージしようが無い。

腕時計やパン等、俺がそういった物を上手く作れないのは構造を理解していないからなんだと思う。
その分双剣は単純な構造で、尖った刃物に握りをつけた物をイメージするだけで完成する。
そして完成した剣がどれほどの代物になるのかは、完成してから続ける俺のイメージに左右される。

夢や希望が簡単に叶わないように、俺の能力も簡単なものではない・・・って事。

「なーんて考えてる場合じゃなかった・・・早くなんとかしないと・・・」

いつまでもここにいるわけには行かないし、逃げる際に垂れた俺の血の後を付けられれば見つかってしまうかもしれない。
まぁそんな事しなくても奴等の組織には見つかるが、町人に見つかるのだけは勘弁してもらいたい・・・

「あ、ここにいたんですか?」

って考えてた矢先に誰かに見つかった。
マズい、顔見られたら町に滞在できなくなる

「くそっ・・・!」

俺は動くのを拒む体に鞭打ち立ち上がり、その場から逃げ出そうとした。

「その傷で何処に行かれるのですか?私の家すぐ近くですから、手当てしましょう?」
「そういうわけにはいかない・・・って、あんたどっかで見た顔だ」

なんだろう思い出せない、喉まで来てるのに名前が出てこない。
ついさっき見かけた気がする・・・誰だっけ・・・
痛みで何も考えられない・・・

「むむ、意識が朦朧としてるのかな?私です、アリシアです」
「アリ・・・シ・・・ア・・・?」

何故なのかはわからない。
何故なのか、彼女の名前を聞いた途端急激に体から力が抜けていった。
何故なのか、俺は安心したようだ。

何故なのか、このまま気絶しても、問、題ない気が、し、てきた


「      !?   !   様!!」



女が何か言ってるけど、よく聞こえない。


「寝るわ、あと任せた」



















嗅いだ事の無いにおい。

はじめてみる天井。

久しい、柔らかい布団の感触。

意識が徐々に回復してくる。

体に力が入った、動ける。


「―――」


自分が生きている事を確認した後、俺はゆっくりと上半身を起こした。
そして腹に鋭い痛みが走る。


「―――」


痛む場所を右手で擦ってみた。
包帯が巻いてある、誰が巻いてくれたんだろう?

と、その時、誰かが部屋のドアを開けて中に入ってきた。

「目、覚めたんですね」

あぁ・・・まだ意識がハッキリしない、誰だっけ

「一応ですが、私の力で直せる限界まで傷は塞いでおきました。でもまだ動いちゃ駄目ですよ?2日は絶対安静です」

俺の反応などお構いなしにベラベラ喋りだす女。

「・・・?どうしました?何処かお腹以外に調子が悪い所があるんですか?それなら遠慮なく言って下さい、治しますから」

ほんとによく喋る人だ、誰だっけ
なんとなく、俺の事を助けてくれたのはこの人だってのがわかる。

「何かしゃべってもらわなくちゃ何もわからないですよぅ、ほら、声出してください」
「・・・ん」

声を出そうとして口から漏れた声は「ん」だった。
まだ意識がハッキリしない、ココは何処でお前は誰で、俺は何を話せばいいんだ?

「今頭の中で考えていることを話してくだされば結構です、思ってるだけじゃ何も伝わりません。思いを具現化するのは貴方や私にだけ許された事でしょう?」

ほんとに良く喋るなコイツは。

「まだ意識がハッキリしない、ココは何処でお前は誰で、俺は何を話せばいいんだ?と思っていた」
「はい、それでいいんです。それじゃ説明しますね」

俺の無愛想でぶっきらぼうな言い方を気に留めた様子は無く、彼女は俺の質問に答え始めた。

「まず今私達がいる場所ですが、ココは私の家です、何故私の家にいるのか思いだせますか?」
「・・・いや。お前が誰なのかもわからない」

記憶を辿ると、この町に入ってからの記憶が全く無い。
腹をナイフで刺されたという断片的な記憶が残っているが、何故刺されたのかは思い出せない。

「貴方は「ETI」の一人に襲われたんですよ、まぁ・・・原因は私にあるのですけど・・・その傷は私を庇って負った物です」
「名前も知らない奴を庇うなんて、我ながらどうかしてたな」

俺がそういうと、彼女は初めて悲しそうな顔をして「名乗ったんだけどなぁ・・・」と呟いた。

「悪いな、この町に入ってからの記憶が全く無いんだ、続けてくれ」
「えっと、その後貴方は追ってを巻いて路地裏に逃げ込んだんですけど、そこで気絶しちゃいまして・・・私がここまで運んできました」

ふむ、全然覚えてない。
つまりどういう事なんだ?

「助けて貰ったお礼に助けたって事か?」
「助けて貰ったのも助けたのも予想外の事です、私の用件は貴方に協力してもらう事です」

協力?

「はい、でもその話は食事を取って落ち着いてからにしましょう。お腹空いてるでしょ?母さんがシチュー作ってますから食べてください」

ほんとに、なんでそんなに喋るんだ?

「楽しいからですよ。立てますか?立てないなら今だけ肩をお貸しします」

足を床に下ろし、力を入れてみる。

「立ち上がれた、肩はいらない」
「ではご案内しますね、体に障るようでしたらゆっくり歩きますから行って下さいね」


こうして俺は何が何だかわからないまま、知らない人の家でシチューをご馳走になるハメになった。
状況は気に食わないが・・・シチューなんて食べるのは二年ぶりだ、とりあえず今は美味しく頂こう。
mlk
2008年04月21日(月) 21時11分08秒 公開
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■作者からのメッセージ
ネトゲはまったせいで更新してなかったmlkです、皆コメしないでごめんね><

この作品の感想をお寄せください。
なんのネットゲームでしょう!?と、私は何一つ知らないんですがね。
何で記憶が無くなったのか、うーむ。自然で良いです、とても。色々と彼女が話してましたね、『ETI』とか(読みはなんですかね?)、『想いを具現化』とか。
40  凰雅沙雀 ■2008-04-25 20:32 ID : FZ8c8JjDD8U
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