Criminal |
外が徐々に明るくなってきた。 昨日、自分で「眠らない方がいい」と言った手前眠るわけにも行かず、朝までずっと頑張って起きていた。 占い師としてなのか一人の人間の直感としてなのか、嫌な感じはまだ続いている。 これから絶対に何かよくない事が起きると思う、言い切っちゃいます。 それにしても、やっぱり徹夜は辛い。 夜更かしは精神的にもお肌にも健康にも良くないからいつも12時に寝て9時に起きる生活をしてたりする。 だから眠いのなんの・・・ それでも眠ってる間に死ぬよりはずっとマシなので頑張るわけです。 死ぬような事が起きるとも限らないけど起きないとも限らないし、もしかしたら昨日のETIがまた襲ってくるかもしれないし。 ふと、何処かの部屋のドアが開く音が聞こえてきた。 そして「ふぁああ」と大きな欠伸も一つ。 「この声は・・・ゼルさん?」 一般的な人間が起きるにしてはまだまだ早い時間だと思うんですけど・・・ もしかしてゼルさんも徹夜かな? 私が「眠らない方がいい」なんて言ったから? むむむ、悪い事しちゃったかな。 次に、階段を下りる足音が聞こえてきた。 母さんは下で寝てるから、これも多分ゼルさんだと思う。 「う〜、やっぱ朝は寒ぃ・・・」 足音と一緒に聞こえてくるこの声は・・・やっぱりゼルさんだ。 下に降りて何するつもりだろう?寝ぼけてるのかな。 私の部屋は隣ですよー? やがてゼルさんの気配は足音と共に消えた。 私の家は昔宿屋も兼ねていて、一階はかなり広かったりする。 だから私の部屋からだと一階の音はあまり聞こえない、よっぽど騒がしかったりすると話は別ですけど。 食器が割れる音でやっと音量をギリギリまで絞ったような音として聞こえてくる。 つまり足音程度じゃ全く聞こえなくなってしまう。 別に私はゼルさんのストーカーという訳ではない。 ただ何処に行くか気になったから足音に対して敏感になっただけです、誓って絶対。 「ぶッ!?なんだこの水!?」 下からゼルさんの声が聞こえてきた。 ハッキリ一句一句聞き取れるほど大きい声。 水? ・・・あ、もしかして、トイレの水飲んじゃったかな? 男子トイレの方は長年使ってないし掃除もしてないからいたる所が汚くて、蛇口をひねって出てくる水は蛇口のサビのせいで血のような味がする。 一度好奇心で口に含んでみて深く後悔した。 「ゼルさんに言ってなかったなぁ・・・」 でもなんでトイレの水を飲もうとしたんだろう? リビングに行けば綺麗な水が飲めるのに。 歯磨き、かな? 私の占い師としての直感が「歯磨きです」と訴えてくる。 歯磨きだ、きっと歯磨き。 別に家の中のトイレなんだからどっちのトイレ使ってもいいんだけどな。 昔の名残でまだトイレに男マークと女マークが貼り付けてあるんだけど、それがいけないんだろうか・・・ 私がそんな事をぽやーっと考えていると、今度は何かが大騒ぎしているような音が聞こえてきた。 「今度は何?もう・・・」 ガシャン!ガシャン!ドン!ボッカン!おらあああ!! ・・・おらあああ? ゼルさん、何してるの? いくら町外れとはいえこんな朝っぱらから騒がれては近所迷惑だし、母さんもまだきっと寝てるし、静かにして欲しい。 私は注意する為に部屋から出て、階段を下りた。 一つ段を降りる度に確実に音が大きくなってくる。 物が壊れる音とゼルさんの声。 うおおおお!!やら、はぁっ!やら、色々聞こえてくる。 ほんとに何やってるんだあの人。 階段を降りきり、音のする場所を探す。 この感じ、多分リビングからだろう。 私はリビングに向か・・・おうとした。 店内に誰かいる。 リビングに行く為にはどうしても昔店として使っていた大広間の前を通らなきゃいけないんだけど、その大広間に人がいた。 しかも一人じゃない、店の入り口に5人ほど。 もう宿屋は廃業してるんだけどたまにこういう事がある。 いつまでも「宿屋」看板を出しっぱなしにしているので、事情を知らない他所の町の旅人がたまに来たりするわけです。 でも追い返すのもかわいそうなのであまった部屋に泊めてあげたりしてます。 「あの、お客さんですか?」 集団に近寄っていって声をかける。 リーダー?的な人が私の方を向くと、皆それと同時に機械的に私の方を向いた。 何だか本当に機械みたいで気持ちが悪い。 しかも驚くほど無表情。 「あの〜?」 無言で私を見つめてくる集団。 本格的に気持ち悪くなってきた。 「お客さんじゃないんですか?」 「・・・・・・・・・か・・・・・・」 「はい?」 リーダー的な人が何かを呟いた。 だけどリビングの方の騒音がうるさくてハッキリ聞き取れなかった。 「すいません、もう一度言って頂けますか?」 「・・・・・・奴はいるか・・・・・・」 機械のような表情を崩さず口を動かす彼。 奴って誰でしょう? 今ここに居る人といったら私と母さんとゼルさん・・・ 「あ、ゼル・・・ゼルプストさんのお知り合いの方でしょうか?」 「・・・・・・ゼルプスト・・・・・・」 名前をかみ締めるように繰り返し呟いている、ゼルプスト・・・ゼルプスト・・・ ゼルプスト・・・ゼルプスト・・・ゼルプスト・・・ 「・・・・・・・・・奴か・・・奴だ・・・呼んで来い・・・・・・」 「?はい、わかりました・・・」 何か腑に落ちないまま、私が振り返ろうとしたその瞬間――― 「アリシア!!!頭下げろおお!!!」 驚くほど大きい声が聞こえてきて、私は反射的に身を屈めた――― その一瞬後に私の頭があった空間を何かが飛んでいった。 「アリシア!!!頭下げろおお!!!」 正直頭を下げてくれるとは期待してなかった。 が、下げてくれたので遠慮なく左手の双剣を投げつける。 双剣はさっきまでアリシアの頭があった空間を通って飛んでいき、背後から襲い掛かろうとしていたETIの眉間に直撃した。 「ちっ、まだいるのかよ!」 こんな大人数いっぺんに相手するのは初めてだ! たった今やっとのことで1+4人始末したばっかりだってのに、また5人かよ! いや、今一人殺したから残り四人か? 「アリシア!こっちに来い!」 人間にはリアクションタイムという物が存在し、鍛え上げられた人間でも不意の出来事に直面すると15秒間は正常な判断が出来なくなってしまう。 しかしアリシアは俺の指示通り身を屈めながらこっちに走ってきてくれた。 こいつが優秀で助かった。 眉間に直撃させた双剣を消し、再び左手に具現化させる。 そしてこちら側に走ってくるアリシアとすれ違いながら、敵に向かって突っ込んだ。 「ふっ!」 とりあえず一番近い場所にいたETIに切りかかる、が、回避される。 そしてその隙に俺を囲むように散開するETI共。 敵も馬鹿では無い、というわけだ。 俺の力的に長時間イメージを行使できないのでなるべく早く片を付けたい所なのだが・・・ 普段は1、2分で終わる戦闘をもう10分程、だ。 そりゃ疲れるわな・・・ 飛んできたナイフを切り落としながら、バックステップでアリシアの近くまで下がる。 近くにいるのも危ないが遠くにいるのも危ない、ならどっちを取る?といえばまさかの時に逃げ出せるようにアリシアとは近くにいるべきだろう。 「アリシア、戦えるなら手伝ってくれ。無理ならテーブルの下にでも潜ってろ」 「・・・え?あの、何が起きてるんでしょうか?」 「潜ってろ!」 会話中でも敵は遠慮してくれない。 二人がかりでコンビネーションをかけるかのように迫ってくる―――そしてナイフも飛んでくる――― 「畜生!腕たりねえっつーの!」 上段の切り払いを右双剣で受け 喉元を突いてくる攻撃を頭を捻ってギリギリ回避し 的確に俺の腕を狙って飛んできたナイフを左双剣を振りぬいて叩き落す 「おいおい・・・腕を狙うなんて聞いてないぞ・・・」 言いながら、降りぬいた左双剣を戻す勢いで喉元を突いてきた奴の首を撥ねてやる。 腕や脚を切った程度ではまだまだ動いてくるのだ、できれば殺したくないが俺も死にたくないのでこうするしかないんだ、勘弁な。 上段を切り払ってきたETIが俺から距離を取る。 追い討ちしようとした所でまたナイフが飛んでくる。 「いつもより多目だなぁっ!」 一本落として 二本落として 三本弾く そのナイフは全て同じ奴から投げつけられてくる。 一人二本だった時代はもう終わったのか?でもあいつ以外は二本しか持ってないように見えるが・・・ なんて考えてる場合じゃない、まずはアイツから――― 「―――ぐぅっ、邪魔だお前ら!」 俺の考えている事が読まれているのか、はたまたそういう段取りなのかは俺の知るところではないが、俺がナイフ野郎に近づこうとすると残りの二人が俺を阻む。 これだから多人数戦は嫌いだってんだ・・・ 「くそっ、イメージが・・・!」 二人を切り返した後、一瞬双剣が「ブレた」 集中力が切れてくると段々双剣のイメージが曖昧になっていき、最終的には消えてしまう。 一般的な人間だと、集中力は大体20分続くらしい。 俺が戦いはじめてからもうすぐ20分か・・・ 「アリシア!いつでも逃げられるように準備しとけよ!」 飛んでくるナイフと敵の攻撃を受け流しつつ、アリシアに逃げる準備を促した。 後ろが振り向けないからわからんけど、アリシアはうなずいたような気がした。 |
mlk
2008年05月06日(火) 20時16分03秒 公開 ■この作品の著作権はmlkさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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良かったと思いますが。 さて、逃げ、かな? どうなるのかな? 毎回、楽しんでおります。 |
30点 | 風斬疾風 | ■2008-05-08 17:08 | ID : FZ8c8JjDD8U | |
アリシアって、こんなキャラだったけか?www むむむ、とか・・・、 |
30点 | ケルベロス | ■2008-05-06 22:35 | ID : 8u0JUU1wUZY | |
合計 | 60点 |