サモナーズストーリー 最終章
「全力をもっててめえを潰す!!!」

「うっ、せ、精霊王よ!! 奴を殺せ!!!」

 精霊を無くしたセントはもはや普通の人間。だがその気迫は猛獣を思わせ、その気配を感じると同時にタルロスはたじろぎ、精霊王に指示をする。が精霊王が行動をおこす前にセントが精霊王に飛び掛り、その手を手刀のような形にして叩き込み貫通させた。そして拳を握り締めたかのようなグチャリという音が響く。

「返してもらうぞ! 俺達の精霊!!」

 そしてその言葉と共に手を引き抜く。と辺りに光が飛び散り、リムス達にそれぞれ一つ、セントに四つの光が入った。そして素早く精霊を召喚する。
 
「サキュバス! リムス達を助けろ!!」
 
[はいはいっ、ったく]
 
 セントが叫ぶとサキュバスはそう言ってリムス達を拘束している縄を黒い矢で断ち切る。とロイがティーグルを、レンがアレスを、シグルスがルーネスを召喚し、他の仲間を助けて上手くセントのいる所に移動した。そしてリムスがセントに少し慌てながら尋ねる。

「セント! 大丈夫!?」

「ったく、ひどい目にあった」

 リムスの言葉にセントはへっと笑いながらそう返す、とその直後精霊王を睨みつけて吼えた。

「ぶっ潰すぞ!! 突撃だヤロウども!!!」

『おう!!!』

 全員既に精霊の召喚は終えており、セントの号令と共に精霊王に向かっていった。

「ティーグル! 素早く決めるぜ!!」

[あいよっ!!]

「ユニス、二人に力と加護を!」

[はいはい!]

 ロイがそう言うとティーグルはそう言ってロイを乗せ、ロイは両手剣を突くように構えて精霊王に突進していく。そしてロイとティーグルにエレナの精霊――ユニスから発された光の力と加護が加わった。

「[マッハ・ストライク!!!]」

 そしてそのまま風の道を突っ切って精霊王を貫く、と思ったがそれは巨人へと姿を変えた精霊王に受け止められ、チャンスと見たタルロスが叫ぶ。

「よし! そのまま潰せ!!」
「させないよっ!!」
[せやぁっ!]

 しかしその言葉を遮ってギィの巨大ブーメランが凄い勢いで精霊王目掛けて飛び、そこにヘルレアの二刀が斬り裂く。それに精霊王がたじろぎ、その隙をついてティーグルはロイが剣で一回斬ってから脱出する。
 そしてその直後、シグルスがハルバードを構えてルーネスに乗り精霊王に向かって行く、その後ろでレンが片目を瞑って弓を構え、アレスと共に狙いを定めていた。

「……シッ!」
「はぁっ!!」

 そしてビィンッという弦のしなる音とヒュンという風を切る音が響き、つがえていた数本の矢が次々と精霊王に向かっていった、そしてそれにアレスの発した炎や雷が纏われる。それが精霊王に刺さると、炎と雷がそこから入り込んで内部から精霊王を攻撃する。その矢は一つもシグルスにもルーネスにも当たっておらず、シグルスの振り回したハルバードがさらに精霊王を斬り刻んだ。

[ギャアアァァァッ!!]
 
 精霊王が悲鳴を上げるが、そこに更に落雷と炎、さらに冷気の刃が突き刺さる。と精霊王はその相手――セリアを睨みつけてその巨大な拳を振るう、がそれは光の壁に阻まれた。彼女の精霊――リューネの防御能力だ。そしてその一撃を防御され、跳ね返された反動で精霊王がふらついた瞬間、そこに巨大な氷の刃が振るわれる。
 
「くらえ!! 零氷斬!!!」

 氷の刃とそこから発される冷気の棘が精霊王を斬る。が精霊王は[ガァッ]と雄叫びを上げてリムス達を見据える、とその前にセントが立ちはだかって拳を構えた。

「ふざけおって……精霊王よ!! 奴を叩き潰せ!!!」

「徹底的に喰らい尽くしてやるよ、雑魚が」

 タルロスがそう叫ぶと精霊王はそれに従って拳を振り上げ、セントも拳を後ろに下げた。策など一つも無く、ただ全身全霊を持って叩きぬく一撃だ。
そして同時に精霊王の巨大な拳とセントの拳とがぶつかり合った。片方は人を超える力を持つ精霊、片方は普通の人間。だがその力は互角だった。

「バ、バカな……何故だ……」

「クソが! うぜえんだよ!! 雑魚如きが俺の前で得意面してんじゃねえぞ!!!」

 タルロスの呟きに返すかのごとくセントも吼えた。それは虚勢でも何でもない、ただ思ったことをそのまま口に出しただけだ。セントの拳が振りぬかれ、精霊王が押されて数歩下がった。そして突然セントの召喚腕輪が光り始める。

「全員集合だ! 叩き潰すぞ!! ワルフ、サラマンドラ、ガーディ、サキュバス!!!」

「俺達も援護だ!!」

 セントが叫ぶと同時に彼の持つ精霊が召喚され、さらにレンの指示で全員が動き出す。
 サラマンドラとアレスの炎、サキュバスとレンの矢、セリアの出した雷を纏ったギィのブーメランが精霊王を襲い、さらにその隙に近づいたリムスの刀とロイとティーグルの作った風の剣、シグルスのハルバードと、エレナとガーディの槍が精霊王を斬り、貫く。そして最後にセントとワルフのコンビが精霊王に突っ込んでいった。

「[アアァァァ!!!]」

 二体の猛獣が同時に吼え、一体の獣―ワルフの牙や爪が精霊王を襲い、そこにもう一体の猛獣―セントの拳が突き刺さる。とついに精霊王は倒れ、その姿を無に返していった。

「この喧嘩、俺達の勝ちだ!!」

 セントは目の前にいる祖父――タルロス・サンディ向けて吼える、と同時に辺りが揺れだした。

「なっ!?」

「精霊王が倒れるほどの衝撃……ここも無事ではすまないか……」

 タルロスはそう言うと同時にどこかに去っていき、それと同時にレンが叫んだ。

「くそっ、急いで逃げるぞ!!!」

 レンが叫ぶと同時に全員セントが通ってきた道を逃げていき、研究所から脱出する。


「間に合ったか……」

 最後に出たロイがそう呟くと、辺りを見回していたリムスが驚いたように叫んだ。

「セ、セントがいない!!!」

『!?』

 その言葉と同時に全員が顔を見合わせる、とそこにはどこにもあの黒髪のはねかえり、セントの姿は見られなかった。それからまさかと呟いて研究所を見る。



「……クソが……ぜんっぜん身体に力が入らねえ……あの無茶な同時召喚のせいかよ……」
 
 壊れていく研究所の中、セントは天井を見て倒れながらそう呟く。逃げようにも手も足もまるで鉄の塊がくっついてるみたいに身動きが取れず、いっそ拘束されていると言った方が正しいかもしれないな、とセントは失笑していた。それから疲れがたたってかセントの意識が消え去っていく。





「やあ」

 そこにいたのは自分であり自分でない存在、この空間の番人。倒れている自分の顔を覗き込んでいるのをうっとおしく感じ、左手を振るって払いのける、と少し経った後身体が軽くなったのに気づいてセントは座りなおす、と番人はふっと笑いながら言った。

「いらっしゃいと言っとこうか?」

「……俺はどうなったんだ?」

 番人の言葉にセントがそう聞き返す、と番人はくすくす笑いながら言った。

「死んだとしたらどうする? で、ここに来た」

「これからずっとてめえとにらめっこしているのはごめんだな。地獄の方がまだマシだ」

 その言葉を聞くと番人はやれやれと言うように表情を変え、それから諭すような真剣な表情をする。自分の顔でここまで表情をころころ変えられたらまるで別人のようだ、セントは心の隅でそう思っていた。と番人は口を開く。

「大丈夫だよ、君はまだ死んでないから。まあ現実の君は意識が無いんだから放っといたら瓦礫に潰されてどっちみち死ぬけどね」

「物騒なことをにこにこと笑いながら言うな」

 番人の言葉をセントは睨みながら一蹴する。と番人は「はいはい」と軽くいなして言った。

「さてと、朗報をあげよっか?」

「何だ? 天国地獄どっちに行けるかか?」

「残念。君の祖父のタルロスだけど、森を出たところで君の両親を殺した殺人罪で警察に捕まった。ある意味復讐は果たせたね」

「どうでもいい」

 その言葉をセントが一蹴する、と番人は何かに気づいたように言う。

「これで死んでもくいは無い、か?」

 その番人の口調は若干だが棘があった、がセントはそれに気づかずに口を開く。

「……かもな。少なくとも俺が死んで悲しむ奴なんてっ!?」

 次の瞬間セントは吹き飛んでいた。流石はセントでもある番人のパンチか、その威力は中々のものを誇っていた。するとセントはダンと荒っぽく立ち上がって怒鳴る。

「何しやがるてめえ!」
「なんだは俺の台詞だ!!!」

 番人の怒号からはいつもの飄々としたところや生真面目そうな部分は少しも見受けられず、正に自分自身と言っても過言ではなかった。それにセントが押されて黙ると番人は一回座り込んで言う。

「お前が死んで悲しむ奴ならいるだろう、院長や孤児院の子供、そしてリムス達」

 番人はそう言いながらパチンと指を鳴らす、と虚空に研究所の外の情景が映った。
 そこに映っているのはレンとシグルスが精霊を召喚してリムス達を抑えている姿があった。

「離してよ! セントが!!」
「先輩!!」

「無茶だ! 最悪お前たちまで!!」
「セントを失うのは悲しい……だがそれ以上の悲しみを作らないでくれ!!」

 泣きそうになりながらリムス達が叫び、説得しているレンとシグルスの目にも涙は溜まっていた。それを見てセントは黙り込み、番人が口を開いた。

「これでもまだ言うか? 自分が死んで悲しむ奴はいないって」

「……分かったよ! でもどうやって逃げるってんだ? 現実に戻ったら身体は全然動きやしない」

 セントがそう言うと、番人はくすっと笑って返した。

「心配しなくっても君は助ける、我の存在全てをかけてでもね」

「あ?」

 番人の言葉にセントが呆けたようにそう返す、と番人はまるでセントが召喚を行うような動作をとりながら言った。

「我の力を君に与える。もっとも、代わりに我は消えちゃうけどね」

 あくまであっさりと、番人はそう返す。そしてそれにセントが驚いて返す前に言った。

「最初に言ったよね? 君は我、我は君って。ここで我が消えても我は君と一緒だ」

「気持ち悪い言い方すんな。まあこのままここでギャアギャア喚いて死にたくもないし、任せたぞ」

「りょーかい」

 セントの言葉に番人はくすくす返しながらセントが召喚を行う動作をもう一度行った、するとそれと同時に番人を中心に辺りが不思議な白い光に包まれる。





「つっ……」

 崩落しかけた研究所、セントは起き上がると辺りを見回した。まだあの道は使えそうだ。それを考えると同時にセントはそっちに駆け出す。その肢体はさっきまでの重さが嘘のように軽くなっていた。



「崩れるぞ!!」

 レンが叫んでアレス達がドンとリムス達を押す、と研究所が全壊し、リムス達は唖然として座り込んでいた。そしてリムスがぼそっと呟く。

「セ、ント……」

「呼んだか?」

『!?』

 突如明後日の方向から聞こえてきたその言葉に驚いて全員声とは逆の方向に数歩下がる。とその人間―セント・プレアスは少しむっとしたような表情をし、眼に力を込めながら言った。

「おいてめえら、そりゃどういう了見だ?」

「「セ、セント!!」」

 リムスとロイはそう言うと同時にセントに向かっていき、セントもにっと笑いながら言う。

「へっ、何とか生き延びたぜぐあっ!」

 しかしそれと同時にリムスの拳とロイの蹴りがセントの腹に入り、少しうずくまった後セントは二人目掛けて怒鳴った。

「な、何しやがるてめえら!!」

「心配かけさせた罰! セルスで斬るまでいかなかったんだから感謝しなさい!!」

「上等だコラ! 喧嘩なら買うぞテメエ!!」

「望むところだこの野郎!!」
「来なさい! セルス!!」

 セントの怒号にロイがそう返して剣を抜き、セントも拳を構えてリムスもセルスを召喚する。それはある意味ではいつもの光景。残ったメンバーはそれを安堵の表情を浮かべて見守っていた。
カイナ
2008年12月14日(日) 16時51分27秒 公開
■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
カイナ:と言うわけで最終章も終了して、セントさん、何か一言。
セント:絶対戦闘があっけないと言われるな。戦闘より俺と番人の掛け合いとかの方がが明らかに多い。
カイナ:言うな……あれだよ、絆の力ってやつさ。あれだけ苦労してても皆で力を合わせれば楽勝、的な。今回の話のテーマの一つは絆だし。
セント:へいへい、つか嘘つくな。
カイナ:まあいいや、次から新しいやつを考えてるのでそっちが投稿されたらよろしくお願いします。
セント:それじゃな。


ケルベロスさん:そうですか……考慮してみます。
ええ、実際まずいですよ。でもそれを仲間と共に打ち砕くのが猛獣、セント・プレアスなんですよね。
さて、こんな展開は予想してたでしょうかね? 猛獣と化したセントは強いですよ。それこそ獣並みにね。
お楽しみに。と言えるほどの作品になるかは分かりませんが、それでは。

この作品の感想をお寄せください。
とりあえず、お疲れ様です……といったほうがいいんでしょうかね?w

まぁ読み進めていて思ったのが、『そして』が多い気がしますね。(人の子といえるような作品出してないけどw)
接続詞はどうしても必要なときはあります。ですが、それ以外のときに多用すると正直リズムが乱れるように感じてしまいます(個人的な意見です)
なので、必要のないときは『そして』や『なので』などを控えたほうがリズムよく読み進められるかと思います。

それからこれは個人的にはこの作品とカイナ氏の特徴だと思っているのですが、会話の後の『!』が多いですね。これは別に悪いとは言いませんが、あまり多用しすぎると常に怒鳴ってるように感じてしまいます。実際この作品ではほとんど叫んでいるように感じましたがw

『とそこにはどこにもあの黒髪のはねかえり、セントの姿は見られなかった』
 この文ですが、黒髪のはねかえり、セントの姿は〜〜というところの意味が分からなかったので誤文又は脱字かと思いいます。


テーマの一つは絆。それはセントの心の番人(であってますよね?)もはいっているんでしょうかねww 現実世界だけじゃなくて心の世界も。

最後にはいつもの光景。安堵の表情。日常への帰還。まぁ自分が語ってもどうにもならないんですけどね。

次から新章? または新作? 始るようですが、がんばってくださいね。
30 ケルベロス ■2008-12-16 22:57 ID : If3qiekeSNg
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