フロンティア・ストーリー 六話 |
シルバー・ウイングと別れた後、竜一達は町を出て案内人の案内に従い、次の町へと続く一本道を歩いていた。道の脇には緑の溢れる草原が広がり、真由や真次は凄いなと感心しているかのように眺めていた。するとふと両手を頭の後ろに回して歩いていた明秀がため息を吐きながら呟いた。 「……暇だな」 その言葉に竜一と直人も沈黙を以って肯定する。真由と真次は子どもみたいにはしゃいでいるが、ただ歩いているなんて暇以外のなにものでもない。が直人は何かに気づくと背負っていた弓を下ろして矢をつがえた。そして竜一達もそれでようやく気づいたかのように武器に手をやって直人が弓を向けている方に目をやる。とそこには木で出来たような棍棒を持った二足歩行の豚みたいな怪物が三体立っていた。 「モンスター出現ってか」 「いきなり暇じゃなくなったな」 「名前はブーボウかな?」 「とりあえずそうしよ」 竜一は二刀を構えながら言うと明秀も苦笑しながら槍を構え、真次が真剣な顔でそう言いながら斧を構えると真由がそう言いながら長刀を構える。そして直人が便宜上ブーボウと名付けた怪物に矢を放つと同時にブーボウも棍棒を振って矢を弾き、前線に出ている四人に向かっていった。 「散開!!」 竜一が叫ぶと共に全員離れながら、他に比べて攻撃範囲の広い明秀と直人がそれぞれの武器でブーボウを一体ずつ挑発して上手く引き離す。 「真由はナオ兄の援護に向かえ!」 「了解っ!」 竜一がブーボウと斬りあいをしながら叫ぶと真由は急いで直人の下へ向かう。それを見届けると竜一は相手の振り下ろしてきた棍棒を素早く後ろに下がってかわす。 ブーボウの力は見た感じ明らかに自分よりある。しかし小回りという点においては明らかにこっちの方が優勢だろう。 「だったら」 竜一は一気にブーボウ目掛けて突進し、それに面食らいながらもブーボウは棍棒を振り下ろす。しかし竜一はそれを紙一重でかわし、無防備になった身体を切り刻むように二本の刀を振り回した。 「グガアアァァァ!!!」 ブーボウは刀で斬られたところから血を流し、悲鳴を上げながら倒れる。竜一は相手が倒れた事を確認するとふぅと息を吐いて辺りを見回す。と丁度ブーボウの心臓を明秀の槍が貫き、それとは別のブーボウの額を直人の矢が貫き、止めに真由の刀が胴を真っ二つにするように斬り裂いていた。そして全員が無事だと確認すると、竜一は少し浮かない顔をしながら案内人を呼ぶ。 「案内人」 [皆まで言わないでください……] 竜一の言葉に案内人も浮かない声で返す、と明秀が胸糞悪そうな顔で言った。 「やっぱこいつらも、ブレンか」 [正確にはブレンが感染しただけの、普通のプログラムです] 「やっぱりね、この違和感」 明秀の言葉に案内人が返すと真由は死体と成り果てたブーボウを一瞥しながら呟き、皆も頷く。 そういう設定なのかもしれないと思っていたがリアルに痛みを感じているような悲鳴に流れ出る血。前の町でブラッド・ファングの者達が変身したモンスターと同じ感触を感じていたのだ。 [皆さん、嫌な予感がします。急いでください!] 案内人の言葉に誰も聞き返すことなく走り始めた。 そして息を切らせながら彼らが到着した町では、惨劇が起こっていた。さっきの町よりも数倍大きいこの町はたくさんの建物が並んでおり、まるで観光地を思わせる。しかしその町のどこを見ても平和なんて微塵も感じられなかった。 住人達は悲鳴を上げながら逃げ惑い、色々な武器を持った様々なモンスター達がそれを追いかけていく。さっきのブーボウはもちろん三又の槍を持った二足歩行の狼やスライムみたいな生き物。見つかったらただじゃすまないと感じ取ったのか竜一達は物陰に身を隠しながら案内人を呼んだ。 「案内人、ブレンってかなりやばいな」 [当然です。あれはもはや一つ一つの意思、見つかったら間違いなく殺されます] 案内人の言葉に全員深いため息をついた。少し前までのちょっとは平和な雰囲気が台無しになった。それからふと気づくと辺りは静かになっている、恐らくこの辺の住人が言いたくは無いが全滅したのだろう。そして真次が気づいたように口を開く。 「ねえ、あれ見て」 その言葉に全員がその方向を見やる、とさっきのモンスター達が町の中心に向かっている。何かあるのかもしれない、全員同じ事を考えたらしく互いに頷くとモンスターに見つからないように静かに物陰に隠れながらその後についていった。 それから彼らがたどり着いたのは大きな噴水広場。そこにモンスターが多数整列しており、その前には黒いローブに身を包んだ見た目人間らしき者が立っている。そしてその上に立っている影が喋り始めた。 「中々楽しめたな、あの悲鳴。プログラムとはとても思えない」 「!?」 あいつらをプログラムと知っている。その事に全員が気づいたがうっかり少し動いてしまったのが悪かったか、ガタンと何かが倒れる音がしてモンスター達は一斉に竜一達のいる方を向く。そしてその影が言った。 「生き残りがいたか、引きずり出せ」 気づかれたか。そう考えながら竜一達は降参の意を示すため両手を挙げてモンスター集団の輪の中に半ば引きずられるかのように入っていった。 「ふふふ、ターゲット捕獲」 その影はどこか嬉しそうに笑って隆一達を見下す。近くで見て改めて分かったがその影は見た感じ人間の男性で黒い髪に血のように赤い眼、その顔立ちもかなり整っている。その威圧感はかなりのものだが、突然明秀が口を開いた。 「なんでここの住人を殺した?」 「邪魔だから、といえば満足かね?」 明秀の言葉を笑いながら男性は返し、続けた。 「中には物分りの良い者達もいるがほとんどは利用価値も無い」 「……斉藤修二って野郎を知ってるか?」 男性の言葉に次は直人が尋ねる、と男はまたにやにやと笑いながら言う。 「ほう? そう言えばあいつが行った町で何者かがあいつを打ち負かしたと聞いたがなるほど。貴様らか」 「お前は何者だ? 何が目的なんだ?」 切り替えが早いのか直人は次々に尋ねていく、と男は笑いながら言った。 「知らなくても良い事だ。俺は忙しいんでな」 そして男は竜一達に指を突きつけ、たった一言言い放った。 「消えろ」 その言葉と共にモンスターが一斉に向かってくるが、竜一はいち早く反応して刀を抜き、居合い斬りの要領でモンスターを斬る。そして全員素早く立ち上がって武器を構えるとブーボウやその他のモンスターを次々なぎ倒していく。しかしいかんせん数が違いすぎ、数に押された竜一達は一瞬の隙で反撃され、押し返された。 「くっ……そぉ……」 自分が倒れる音も聞こえず、竜一は倒れ伏せた。その周りでは真由たちも倒れており、男は笑いながら言う。 「所詮ザコか。捨てておけ」 男はそう言い残すと黒いローブに身を包んだ者達と共に消えていく。 そして竜一達の意識も闇に包まれていった。 |
カイナ
2009年03月10日(火) 10時32分15秒 公開 ■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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どうも。テストが終わっても何らかのプレッシャーに押されてモヤモヤした気持ちがいつまでも続いているN.Hです(鬱になりそうww)。 まず一言。 「竜一一同は死んでないかー?」 です。ブーボウですか? 私はこれで「雑魚も集まれば強くなる」って言葉を改めて感じましたね。私がそう思えた、ということはやはりそこのところの描写が上手だったんだと思いますね。いやはや、参考になりますよ。 それにしても最後に敵が竜一達にトドメを刺さなかったことは敵にとってあとで致命傷になりそうですね、と率直な意見を述べさせてもらいますね。 それでまあ一応誤字の報告を。最初の 「シルバー・ウィングと分かれた後」 って部分ですが、「分かれた」は「別れた」に修正したほうがいいです。 P.S いやー、最近誰も小説投稿しないですから、ね。誰かが投稿する日を私は楽しみにしてましたよ^^ |
30点 | N.H | ■2009-02-27 23:00 | ID : ViblgHAUaNg | |
合計 | 30点 |