フロンティア・ストーリー 五話 |
不良達が戦っている川原、そこから少し離れているところで直人と利隆が今は赤鬼のような姿になった修司と対峙していた。 「トシさん、どう言う事だか分かりますか?」 「分からねえ、だが油断だけはするなよ」 トシがそう言うと同時に二人はその場を左右に分かれる、とその直後その場に修司の右腕がその場の地面を殴っており、その場の地面はクレーターのように抉れてしまっていた。だが次の瞬間直人は姿勢を低くして突進し、鋭くナイフを突き刺そうとする、がそのナイフは刺さらずにその動きを止める。直人の力はある方になる。と言う事はそれほどに修司の肉体が強靭という事になる。 しかし効果が無いというわけではないらしく、修司は痛みにか顔を歪めるとすぐさま第二打を放とうとする。だがその直前利隆のナックルが修司の腕をそらせる。それから利隆は直人に指示をするように叫んだ。 「分かった。攻撃は俺がやる! お前は囮に徹してくれ!」 利隆の言葉に直人はこくりと頷く。流石にそれなりにボクシングとかで戦い慣れているとは言え実戦では明らかに劣っている。これは懸命な判断だろう。 そして直人は隙を見せないように小さくナイフを振って修司の気をそらせ、その隙に利隆の拳と蹴りが修司に突き刺さる。攻撃力は明らかに修司に劣るものの正確に敵の急所を突いて確実に敵を弱めていく。 その戦いぶりは自分はもちろん言ってはなんだがヨシ達を軽く凌駕する、凄まじい運動能力だった。が利隆がいくら強くとも相手もかなりのもの、彼の少ない隙を見つけると利隆の右腕を掴み、思いっきり地面に叩きつけた。 「がっ!?」 「死ねぇっ!!!」 「させるかっ!」 思いっきり地面に叩きつけられた瞬間意識が朦朧とし、修司の追撃をかわす余力は無かったが、直人は力の限りナイフを振るってその攻撃を止める、がその代わりにナイフが完全に折れてしまった。 「くっ!」 その一撃が修司の動きを僅かに止め、次の瞬間利隆は起き上がり様に思いっきり修司の首を蹴り上げる。 「直人、下がってろ!」 利隆はナックルを構えなおしながら直人に叫ぶように言う、と直人は渋々ながら引き下がり、辺りを見回し始めた。 「……」 利隆はまともに動く事ができなかった。今まで直人が囮に徹してくれていたため相手に隙ができていたが、直人がいない今相手の隙は明らかに少なくなっている。その上右腕を叩きつけられた時に痛めてしまい、下手に動くわけにはいかなかったのだ。 「来ないのか? ならこっちから行かせてもらう!!」 修司はそう叫びながら利隆に襲い掛かり、利隆も素早く反応してかわしきる。が次の瞬間修司のラッシュが続き、中々利隆が攻撃に転じる事ができない。すると突然直人の声が響く。 「トシさん! ジャンプ!」 その声に半ば反射的に従って利隆はその場を飛び退くように地面を蹴ってジャンプする、と同時に何かが利隆の下を潜り抜け、修司に突き刺さる。その何かの正体は矢だった。修司がその痛みにうめいた瞬間利隆は残った力全てを振り絞って拳を振りぬく。 「ぐああぁぁっ!?」 まるで散弾銃のように利隆の拳が次々修司に突き刺さり、鋭い左アッパーが修司の顎を跳ね上げる。そして止めと言わんばかりに鋭く、重い右ストレートが修司に突き刺さった。 その格闘乱舞が終わった後利隆は静かに踵を返し、次の瞬間ズゥンと音を立てて修司が倒れる。それから利隆は小さな弓を構えている直人に近づき、口を開く。 「ったく、俺に当たったらどうする気だったんだ?」 「当てない自信があったんです」 利隆の言葉に直人は不敵に笑みを浮かべながら返す。それから二人はパシンと手を叩きあい、直人が今はもう普通の人間の姿に戻った修司を眺めながら尋ねる。 「どうするんですか? あいつ」 「殺してはいないからな。こいつをポリに引き渡しゃ俺らの無実だってすぐに証明されるだろう」 利隆はそう言い終えるとモンスターと化していた不良を無駄に殺さずにしておいた隆一達を眺めながらまた口を開く。 「お前の、いや、お前たちのおかげで助かった。何か礼ができればいいんだが?」 「そうですね……」 折角の厚意を無下にするわけにもいかない。直人はそう思いながら考え、決めたように頷くと口を開いた。 「今日の晩飯と宿を彼ら含めて用意お願いできますか?」 「ははっ、そいつぁ大層なお願い事だ。了解」 直人の言葉を聞くと利隆は笑いながらそう言い、直人は交渉成立と言わんばかりに笑みを浮かべると竜一達の方に走り出した。 その日の夜は昨日以上に盛り上がっていた。がそこから少し離れたところで赤い髪の青年――竜一と金髪の青年――直人、そして案内人が話していた。 「……この世界を破壊する……か」 直人はそう呟きながら賑やかな宴会場を眺める、と案内人が返した。 [はい、そうしないと万一あなた方の世界にブレンが漏れたら大変なことになります] 「分かってるつもりだ……でも……」 案内人の言葉に今度は竜一も返す。会ってほんの少しだが彼らはまるで人間と同じ、いや、彼らは正に[人]なんだ。竜一達はそれを知ってしまい、直人は一番痛感してしまっている。と案内人はそれを察したのか言う。 [こんな事を言うのは無責任かもしれませんが、ブレンは必ずしも良い者だけと思わないでください] 「分かってる。人と同じだって事だろ」 案内人の言葉に竜一が返す。ブレンは人と全くと言えるほど同じだ。もはやプログラムなんて言えない、それぞれが一つの生命。それを聞くと案内人は言葉を選ぶように黙り、それから言う。 [嫌な予感がするんです……何と言えばいいのか分からない、根拠の無いものですが……] 「あの不良達のモンスター化か?」 竜一は悟ったように返す。あれは一体何なんだ? プログラムと言ってしまえばそれだけだろうが、あれはそんな一言で済ませられる事ではない、何故かそんな気がする。 「材料が少なすぎる、結論を出すにはまだ早いさ」 直人はそう言いながら立ち上がって宴会場へと向かっていき、竜一もその後について歩いていった。 その次の朝、二つの不良がぶつかり合った川原で竜一達はシルバー・ウイングに見送られていた。 「気をつけろよ。また来たらいつでも寄ってくれ、歓迎する。俺達の力が必要な時はいつでも頼ってくれよ」 「ええ、ありがとうございます」 利隆がそう言うと竜一が頷いて返し、皆も頷く。とそれから利隆が思い出したように直人を呼び、直人が利隆の前に歩み出ると利隆は一本の小弓と矢筒、そして皮製のナックルを手渡した。 「せんべつだ。遠慮すんなよ」 「……ありがたく頂戴いたします」 利隆がにっと笑いながら言うと直人は丁寧に礼を言ってナックルを手にはめ、弓と矢筒を背に背負う。 それから五人合わせてもう一度礼をし、シルバー・ウイングに背を向けて歩き出した。 「いい人たち、だったよね……」 茶髪の少年――真次が呟くと青い髪の青年――明秀と緑髪の少女――真由も頷く。彼らもブレンと言う存在に竜一達と同じ疑問を持ってしまったのだ。すると歩みを一回止め、竜一が口を開く。 「俺達は俺達にできることをしよう。もしかしたら何か方法があるかもしれない」 その言葉に皆は静かに頷き、もう一度歩き始めた。 |
カイナ
2009年03月10日(火) 10時33分12秒 公開 ■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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どうも、今回は中々早い段階に拝見して、コメントできたようです。 ゴーレムについてですが、一般的には『岩』『巨人』なんてのが印象深いでしょうし、普通に通じるとは思います……が、それは一般論ですからね。 『鉄』だったり、『小さい』かったり、あるようですが、基本的には『主人に服従』している『何か』が個人的には『ゴーレム』だと考えています。 wikiでは『ユダヤ教の伝承に登場する自分で動く泥人形。「ゴーレム」とはヘブライ語で「胎児」の意味』ともあります。 そういうところは各々で調べて適切な表現方法を探してみては堂でしょう? 今回気になった箇所は、書く登場キャラの紹介的な部分でしょうか。 何かを行動した後の人名が『明秀』『真次』というようにではなく、『青い髪の青年』『茶髪の少年』などと、一度出した情報を再度出して描いてあったのが気になりましたね。 おそらく――しなくても、仕様だとは思いますが、どういった感じでこのように描いたのかは存じませんけど、私には少々くどい気がしましたね。 章が変わる……小説の場合は本そのものが変わったり話しそのものが変わったりしたときに初めて読む読者に分かりやすいように描くのでしょうが、これは連載で、一話一話がそれほど長いものではないので、不必要かと私は思います。 私の意見なので他の人の意見も聞いてみたいものですが、中々コメントは少ないようですからね……。このオリジナル小説板は……。 あまり必要ない話も少々ありましたがまた、次作でお会いしましょう。 私の作品にコメントしてくれてありがとうございます。 |
30点 | ケルベロス | ■2009-01-31 23:33 | ID : 8u0JUU1wUZY | |
合計 | 30点 |