サモナーズストーリー 23章 |
「こんなに多くの精霊を私欲のために使うなんて間違ってる!!!」 どことなくある少年に似た雰囲気のある男性は老人に向かって叫ぶ、が老人は冷めた目でその男性を見つめ、またその場にいた彼の妻と息子をも見据えた。 「やれやれ、我が息子ながらここまで聞き訳が悪いとは……」 「俺は俺の信じた道を進むだけです!! この計画は間違っている!!!」 男性はそう叫ぶが、老人はやれやれと言わんばかりに息を吐き、言った。 「興も冷めた、消えよ」 老人はそう言って黒いカードを取り出す。と彼から常人ではあり得ないほどのオーラが発され、男性も妻と子を守るように立って精霊を召喚しようとする。がその強大な力には抗えず、その精霊の気配が消えると同時に男性と女性は崩れ落ちた。そして子も意識を失ったようにダランと力なく倒れてしまう。 ここはアニムスと言う町にある一つの孤児院。元々ここに住んでいたセントはここの庭で少々運動をしていた。 「セントにいちゃんがんばれぇ!」 「ロイにいちゃんもまけるなぁ!」 しかしその運動は少々ハード、と言うか一歩間違えれば大怪我は免れない物だった。いわば簡単、模擬戦闘だ。その理由は簡単、ロイは自らの過去の罪を忘れないよう元々使っていた剣――両手剣を封じ、ナイフを使って戦っていたためまだ両手剣のカンを取り戻しておらず、ここで休暇を過ごして学校に戻る前に感覚を少しでも取り戻しておきたいとセントに申し出、セントも二つ返事で受けたためである。 勿論このメンバーで唯一まともな回復術を持つ精霊の主――エレナは両手を組んでどうか怪我しませんようにと祈っている。 「らぁっ!」 掛け声と共にロイの振った両手剣がセントの胴体を真っ二つに割ろうと横に薙ぐ、がセントはそれをジャンプしてかわすとそのまま身体を捻り、勢いをつけて蹴りつける。がロイはそれを数歩下がってかわし、セントの攻撃の届かないところで詠唱を始める。 「来い! ティーグル!!」 ロイが自分の精霊――ティーグルを呼び出したのはただ攻撃の手を増やすためだけではない。彼は幻影の狂戦士と言う名を裏の世界に轟かせていた存在。その理由は精霊も無くその才能と己の力だけで一般人越えを軽くする程の脚力を身につけ、その速さは正に幻影が見えるほどと言われたからだ。そんな彼がさらに脚力やスピードを上昇する能力を持つティーグルを呼んだら、まあ答えは簡単だろう。 「らぁっ!!」 次の瞬間ロイはセントの懐に入り込み、剣を振るった。その速さたるやここの子供は勿論、戦いに慣れているリムス達も反応が遅れたほど。セントがその斬撃をかわせたのは己の直感の良さと身体能力の高さゆえだろう。そしてセントは素早く詠唱し、精霊を呼ぶ。 「来い! ワルフ!!」 彼が呼び出したのは一番付き合いの長く、真に相棒と呼べる存在である人狼、そして彼は召喚と共に獣化をし、狼となった状態でロイを睨みつける。それからセントはパンと両手を打ち鳴らしてナックルを構えなおし、彼のその姿を見てロイも息を深く吐いて剣を握りなおす。仕切りなおしだ。 「行くぜっ!」 「ああ!」 最初に仕掛けたのは機動力で勝るロイだ。ロイはセントの死角に入り込んで剣を斜め上に振る、がそれをセントは予測しており、ナックルの鉄の部分で無理矢理刃を受け止める。そしてお返しとばかりに蹴りを入れるがロイは剣が止められた瞬間距離を取ってその攻撃をかわす。 とさらにセントにティーグルの嘴が迫るが、それはワルフが受け止め、逆に牙を突きたてようとするがティーグルは素早く宙に上がってワルフを振り下ろす。召喚士、精霊共にその実力は同等だ。それからまた似たような激闘が十分ほど続き、二人が距離を取ったところでロイが剣を地面に突き刺し、言った。 「充分だ、おおよそ勘は取り戻せた。ありがとよ」 「どういたしましてっと。やりたけりゃいつでも相手するぜ」 ロイがそう言うとセントは腕を組んで伸ばしたり屈伸をする。それからリムスが言った。 「さてと、二人とも治療が必要な怪我はないみたいだし、ここの観光でも行こっか」 リムスはセントに顔を向けながら言う、やはり彼に案内を頼むつもりだ。とセントは頷きながら返した。 「了解だ、そこまで案内するようなとこもない田舎だけどな」 セントが頷きながらそう言うとリムスやロイ、エレナ等仲間を連れて出かけていく。といきなり町の人に声を掛けられた。 「ようセント、帰ってきてたんだってな」 「ちっす」 その男の人にセントはにっと笑いながら返す、とおじさんもまたにっと笑いながら返した。 「いい目になったな、もうあんな真似だけは止めてくれよ」 「分ぁってますよ……あの生き方はしないって心に決めたんで」 セントはどことなく真剣味の漂う表情で言う、と男性もふっと笑って去っていった。するとリムスが「えっと」と呟きながらも聞いた。 「セント……あれって誰?」 「昔世話になってた先公……先生だ。院長と同じく、俺を支えてくれた人って感じだな」 セントは懐かしむような目でそう言った。すると「「おうおう」」と声を上げてガラの悪そうな男が二人セントに声をかける、とセントはふっと笑ってそいつらに声をかける。 「よう、久しぶりだな」 「ああ、何か知らねえがどこかの学校できちんと通ってるらしいな」 「へへっ、更に彼女まで作ってるとはなぁ」 「黙ってな、てめえらみたいに起き上がって進もうともしない馬鹿に言われる筋合いはない」 二人の言葉をセントは一蹴する、と男の一人が怒った様子で怒鳴った。 「んだとてめえ!!」 「丁度いい、積年の恨みだ!!」 するともう一人も叫んで二人まとめてセントに殴りかかる。それをセントは冷めた目で眺めており、相手が自らの領域に入ってきた瞬間しかけた。 「はっ、らぁっ!」 まず最初の一人はその衝撃を受け流して足を払って転ばせ、更にもう一人をその場所に寸分たがわず軽く投げる。その衝撃に二人がげほっと息を吐くと、セントはそいつらを興ざめと言うように見つめ、言った。 「錆びついたり穢れきってる魂じゃ何百回やっても勝てねえよ、んじゃな」 「「ぐっ……」」 セントはそう言うと二人の返答も待たずに歩き始め、リムス達もその後を慌ててついて行った。 それからはしばらく適等に良く学校をサボって寝てた公園や学校をサボって煙草吸ってた裏路地への道やら学校をサボってジュース飲んだり飯を食ってた喫茶店などを案内していた。すると彼らの前に一人の老人が現れた。 「おや、あなた方は孤児院の」 「院長と話してた方ですね……どうかしました?」 その人物はセント達が帰って来た時に院長と話していた老人で、セントはにこっと微笑みながら聞く、と老人はふふっと笑いながら言った。 「いえ、ある召喚士の噂を聞いてここに来たんですよ。その力を貸して欲しいと思いましてね」 「そうですか、ここは田舎とはいえそれなりの広さのある町、手伝いますよ。見つけたらどこに行くように教えましょうか?」 老人がそう言うとセントは笑みを浮かべながら答える。と老人もまたふっと笑みを浮かべて返した。 「それはありがたい。ここの近くの森の入り口、すぐに分かるでしょう。そこに来るようお伝えください、見つかればね」 「ええ、必ずお伝えしますよ」 老人の言葉にセントもそう返す、と老人は一礼をして去っていった。それから今日の観光を終え、セント達は孤児院へと戻っていく。ただその中でセントだけは複雑そうな表情をしながら。 |
カイナ
2009年03月17日(火) 09時35分06秒 公開 ■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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お久しぶりです。にしても、オリジナルのほうは寂しいですねぇ。 カイナさんの作品で埋め尽くされてますよ。 この作品を読んでて思ったんですけど、 魔法系を書くのも面白そうですよね。 召喚などの要素が自由度が高そうですよね。 神話の怪物なども面白いものが多いですし。 ワルフさんもそうですが、人狼も面白いですよね。 だいたいあの手の怪物って昔話の中でも弱点とか明記されてるじゃないですか。 そういうのがあるから組み立てが楽しそうですよね。 なんか感想っていうより意見がなりたてたみたいになってすいません。 |
40点 | 生徒会長7 | ■2009-03-17 11:53 | ID : lNYxSGwKx1I | |
合計 | 40点 |