フロンティア・ストーリー 八話 |
五人は謎の能力を手に入れた後、川原で野宿を行っていた。 ゲームの世界に夜という概念があるのもおかしな話だが、とりあえず直人は見張りのために起き、残りはすやすやと眠っていた。 「この世界[ユグドラシル]、ブレン、タナトス、そしてこの力……」 直人は自分の掌に電気を纏わせながらこの世界で鍵となるであろう情報を呟く、と案内人が尋ねてきた。 [気になりますか?] 「まあな。この中で一番こっち方面に特化してんのは俺だ、俺が考えないとどうにもならない……つっても情報が少なすぎるな……このまま一緒に行ってても手に入る情報は変わらないだろうし……」 直人は自分の頭をトントンと叩きながら言う、がその後苦虫を噛み潰したような表情でそう呟き、それを聞いた案内人が再度尋ねる。 [どうしますか?] 「……とりあえず手がないではない。でも竜一達に相談しないとな」 直人は焚き火に照らされている竜一達の寝顔を眺めながらそう呟いた。 そして翌日、竜一達が目を覚ますと早速と言うように案内人が口を開く。 [おはようございます皆さん。早速で申し訳ないですが、昨夜直人さんと少々話し合った事があるんです] 「ん? 何?」 案内人の言葉に竜一がそう聞き返すと、直人が口を開く。 「簡単な事だ。ここから俺達は分かれて行動を取ろうと思う」 その言葉に四人が「は?」と言わんばかりの顔をするが、直人はそれをも見透かしていたように続ける。 「今の俺達には情報が少なすぎる。情報収集という意味でも、万一タナトスの刺客が来た時全滅を免れるためにも俺はこの方法を推したい。もっとも、危険かもしれないから皆の意見を聞きたい」 直人の言葉を聞くと全員少し考え出し、気づいたように真次が尋ねる。 「ってあれ? 情報を入手したにしてもどうやって皆に伝えるのさ?」 [その点なら御安心ください。私はあなた方の居る位置を瞬時に把握し、移動することが出来ます。つまり仕入れた情報は私に教えていただければ随時他の方に伝えることが可能です] 真次の疑問に案内人が返す。と竜一と明秀が「別にいいんじゃないか?」と言うと共に真由もこくりと頷いて言った。 「うん、ナオ兄さんの考えた手なら安心だよ」 「ありがとな。それでチームだが、流石に一人ずつだと危険すぎるから、二人一組程度に分かれたらどうだろう? 残った一名は俺がなる」 その言葉にまた四人が驚いたような声を上げるが、直人は笑いながらそれに返す。 「心配するな。皆が寝ている間にちっとこの力や弓の特訓ならしたし、俺は一人で行動してる方が性にあってるからな」 直人がそう言うと四人は渋々納得し、それからチームを決める。とはいえ後四人を二チームに分けるだけなのでものの数分で終了した。 「それじゃ、気をつけろよ」 「何かあったらすぐに伝えてね」 「そっちこそ気をつけとけよ。色々と」 「変な事が無いよう気をつけてね」 竜一・真由ペアがそう言うと明秀・真次ペアがからかうようにそう返す。それに二人が思わず僅かに顔を赤くするが、直人がそれを治めるように言った。 「さてと、全員気をつけろよ。この世界は俺達が今までいた世界とは訳が違うんだからな」 言われなくても理解しているつもりだが、四人はこくりと頷く。そしてそれぞれ三チームは別々の方向に歩き出した。 「さてと、これからどうするか……」 「まずは森を抜けてから考えよう、えいっ」 竜一の言葉に真由は竜一より数歩遅れながら返す。背負った刀が少し長すぎて木々に引っ掛ってしまうのだ。すると竜一は少し呆れたように息を吐いて一本の刀を抜き、真由の歩く先の枝を切り払っていく。 「ご、ごめん」 「別にいい」 真由の言葉に竜一は少し微笑みながらそう返す。そして森を抜けた二人の目の前に広がったのは広い草原だった。 「お〜……」 「……何も、ないね……」 思わず二人はそう呟く。広がる草原以外は何も無い。元の世界ではそう見られない光景だが何の目印のないままでは流石に困る。と彼らの目の前に突然一台の馬車が現れた。 「おう、一体どうしたんでい?」 そして馬車は二人の目の前で止まり、それを操っているおじさんがそう尋ねる。が二人がそれに返す前におじさんは笑いながら言った。 「そうか、きっとどこかからか逃げてきた恋人ってとこだな? 駆け落ちってやつだろ?」 「えっ、い、いや! 違いますよ!!」 おじさんの言葉に竜一はぶんぶんと首を横に振りながらそう叫ぶが顔を赤くしながらそう言っても全く説得力がない。おじさんは「はっはっは」と笑いながらまた口を開いた。 「まあ別にいいだろう。それよりこんな所で突っ立っててもなんだろうし、近くの町まで乗せていってやろうか?」 「いいんですか!?」 その言葉に驚いたように真由が返すとおじさんはこくりと頷きながらそれに返す。 「どうせ荷物も少ないからな、二人くらい荷物が増えてもどうって事はない。遠慮せんでええぞ」 おじさんはにこにこと微笑みながらそう言うと二人はじゃあ遠慮なくと馬車に乗り込み、それから馬車は走り始めた。 直人は一人で森を歩いていた。幸い軽装のため森を歩くのに何の不都合も無いが。ふと何かの気配を感じると足を止め、背負っていた弓を構える。その目の前にはモンスターに襲われている少女と一人のボディガードらしき男がいた。 「くそっ、お嬢様、お逃げください!」 しかし少女は足を怪我してしまったのか座ったまま動けず、思わず直人は弓に矢を番えてモンスターに狙いを定め、放った。 「ギィッ!」 その矢は棍棒を持った二足歩行の豚――ブーボウのこめかみに突き刺さり、その隙にボディガードの振った剣がブーボウを斬り倒す。そして直人が現れるとその男性が頭を下げながら口を開いた。 「すみません。助かりました」 「はい、ありがとうございます」 男性が頭を下げると共に高貴な雰囲気を漂わせる少女もにこっと微笑みながらお礼を言う。その可愛さに思わず直人は目を奪われかけるが首を横に振って微笑み返しながら言った。 「いえ、礼には及びません。ただ……実は道に迷ってしまいまして、最寄の町まで送っていただければ助かるんですが……」 「まあ、それは大変ですね。分かりましたわ」 「では私が案内いたします。ついてきてください」 直人の言葉に少女はすぐにそう返し、ボディガードの男が歩き出す。そしてその後に少女を、直人は最後に歩きながら心の中で呟く。 「(俺はマジに人型のブレンと縁があるんだな……)」 恐らく最初に人型のブレンと深く接触したのも自分だ。直人はため息をつきながらも不審がられないように少女達を追いかけた。 そして最後に明秀と真次。この二人はラッキーな道を選んだのか残る二チームより早く森を抜け、既に小さな町に到着していた。 その町はとても活気があった。立ち話をして笑っているもの、買い物をしているもの、とてもほのぼのとしており皆生き生きとしていた。 「いい感じだな」 「そうだね……」 明秀の言葉に真次がそう言う、そして真次は続けた。 「さてと、とりあえず宿を取ってこの先の事を考えよう」 「残念ながら、それは無理だ」 しかし真次の言葉に明秀は無情にそう返す。それに真次が「は?」と言うと同時に明秀は金を入れている袋を真次に見せつけ、真次もはっとしたような表情になる。 三チームに分かれると共にお金も三等分したのだ。一泊は出来るかもしれないがそうなったら明日どうなるやら分からない。そして「分かったか?」と明秀が聞くと真次はこくんと頷き、明秀は顔を上げて言った。 「まずは金を稼ぐぞ。バイトだ」 「……うん」 その言葉に真次がまたこくんと頷くのを見ると明秀は街中に歩き出し、真次もその後に続いて歩き出した。 |
カイナ
2009年03月31日(火) 17時09分23秒 公開 ■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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どうも、お久し振りのケルベロスです。 気になる点をちょっと……。 直人が助けたお嬢様とボディーガードですが、お嬢様は怪我をして逃げれないというせっていがあったので、案内をするのは設定上僅かにずれるかと思います。ボディーガードに背負ってもらうか、肩を貸してもらうなどの描写をしておいたほうがいいと思います。 細かい箇所ですが、僅かながら気になったので……。 『この二人はラッキーな道を選んだのか残る二チームより早く森を抜け』この部分ですが、最後のチームなので『残る二チーム』ではなくて『他の二チーム』と表現した方がいいかと思います。 与えられる力にしても何かできると思います。次の作品を作り、このような展開があれば、考えてみるといいと思います。 口煩くてまことにすいません。 長文、そして細かい箇所をチマチマと失礼しました。 それでは、また。 |
20点 | ケルベロス | ■2009-03-31 21:33 | ID : 8u0JUU1wUZY | |
合計 | 20点 |