フロンティア・ストーリー 十話
「「うぉわっ!!」」
 
 明秀と真次は突然地面に足がつき、バランスを崩してしりもちをついた。何かくらくらして目が回っている。町長の家の地下にあったテレポート装置で白く強い光を浴びたと思ったら床が抜けたような感じがし、気がつくと地面についていた。
 少ししてから二人は立ち上がって辺りを見回す。それから明秀は後ろを向いて今は光を発していないプレートを見た。これがその別の装置ということだろう。装置から装置へと瞬時に移動する技術。魔法よりもずっと現実的な装置だった。もっとも、現代の世界でもとても現実離れしていることに変わりはないが。

「それにしても、ここはどこだろう?」

 真次がそう呟いて辺りを見回す。町長の言葉によるとここは試験部屋のはずなんだが、そこはどう見たって全く手入れのされていないボロボロの小屋だった。あるとしたらそのテレポート装置と木の板で粗末に作られているドアだけだった。

「どこが試験なんだ?」

 明秀がそう呟くが案内人はどこかに行っているらしく何も返さず、とりあえず外に出てみるしかないと明秀がドアを少し開き、外の様子を伺う。
 ぱっと見はただの広い平原だ。しかしそこらでうごめいているのは――

「モンスターだ……」

「うそっ!?」

 明秀がドアをそっと閉めながらそう呟くと真次が驚いたように返す。つまり試験の内容はモンスターと戦えという事だろう。

「ちっ……」

 明秀は舌打ちすると槍を左手に持ってドアに手をかけ、その後に真次も斧を両手に持って続いた。
 そこにいるモンスターはブーボウのような武器を持ったモンスターではなく、簡単に言うと大きなトカゲとか明らかに肉食っぽい鳥とかだ。二人は深呼吸すると各々の武器を構えて同時に地面を蹴った。それと共に大きなトカゲや肉食っぽい鳥が飛び掛ってくる。

「はぁっ!!」

 しかしその牙や爪が突き立てられる前に明秀が明らかに射程範囲外から槍を振るう。すると冷気が空気中の水分を一瞬で氷結させ数本の矢を作り出してトカゲと鳥を貫いた。その次の瞬間、人間の赤ん坊くらいの大きさの蜘蛛が飛び掛るがそれは真次の斧が的確に捉え断ち切る。

「走れっ!!」

 明秀は真次を引っ張るように走り、槍を振るって氷の矢を作って敵を威嚇する。すると彼らの前に一つの洞窟が現れた。

「よし、真次!!」

「了解っ!」

 明秀が叫ぶと真次は斧を振り上げ、己の力を集中して振り下ろす。

「らぁっ!!!」

 それが地面を叩いた瞬間巨大な岩の槍が追ってきたモンスターを貫いていき、明秀は槍を背負うと真次を引っ張って洞窟の中に突っ込んだ。そして

「はあぁっ!!」

 己の掌から氷の力を発動し、洞窟の入り口に氷壁を張る。これで少なくとも挟み撃ちの心配は消えた。その代わり退路も絶たれた事にもなるが関係ない。
 二人は顔を見合わせると頷きあい、再度武器を構えなおして洞窟の奥を見た。

[この先に何かあるんでしょうかね?]

「今出てくるか案内人……」

 突然出てきた案内人の言葉に明秀は律儀に突っ込む。それから互いの死角を補うように歩いていると不意に何かが光った。

「シャアァ!」

「どわっ!?」

 蜘蛛だ、赤い目をした巨大な蜘蛛が天井から襲い掛かってきたのだ。明秀は反射的に顔に張り付いてきたそれを引き剥がして地面に叩きつけ、左手で握った槍を突き出して蜘蛛を指す。その手ごたえを感じつつ明秀は一つ息を吐いた。

「びっくりした……」

「う、うん……」

 明秀の言葉に真次もそう言い返し、さらに警戒を行いながら歩いていく。すると彼らの前で見覚えのある装置が光に照らされた。いや、淡い白い光を放っているプレート――テレポート装置が闇を打ち消す白い光を放っている。

「このテレポート装置がゴールかな?」

「多分な。ま、行ってみりゃ分かるだろ」

 真次の言葉に明秀はそう言ってプレートに足を乗せようとすると、突然光が強くなった。

「モンスターか!?」

 明秀は瞬時に槍を構えて数歩下がり、その横に真次も立って斧を構える。しかしそこに現れたのはモンスターなんかではなかった。二メートル近くはある巨体に鉄の塊のようなボディ、そして妖しく赤い光を放っている目、町長の家にあったあの人形だった。

「ロボットだったとはな……」

 明秀と真次はそろそろと左右に動き、相手の動きを見据える、と突然テレポート装置のさらに後ろにあったモニターが動き出し、町長が現れる。

「ハロー、アキにシーン! ごきげんヨーウ!」

「よお町長、わざわざこんな可愛げのない人形にお出迎え? それとも合格発表か?」

 明秀は不敵な笑みを浮かべながらまるで喧嘩を売るかのように言う。と「ふふふ」と笑いながら町長は言った。

「ノンノン、どちらも違いマース。一つ言い忘れましたがこの試験、今まで誰一人として合格したものはいまセーン。何故か分かりマスか?」

「そりゃ、あんなにモンスターがいたら運良くこの洞窟を見つけられない限り……」

 町長の質問に答える真次の言葉を聞くと町長はまた笑いながら返した。

「答えハー、生きて帰ったらいけないからデース」

「……」
「まさか……」

 明秀は「なるほど」と言わんばかりの笑みを浮かべ、真次は嫌な予感とでもいうように呟く。と町長は怪しげな笑みを浮かべながら言った。

「私の研究に付き合ってもらった者ニハ……死んでもらわなくてはならない」

 途端に町長の口調が変わる。ほんの一瞬前まではかなり明るいお調子者のような口調だったのに今はもうその面影も見せない、狂った科学者――マッドサイエンティストの顔。

「ちっ、やっぱてめえみたいな怪しいくらいに調子のいい奴は信用ならねえ!」
「あなたは……一体……」

 明秀は舌打ちをしながらそう叫び、真次は町長の変わりように驚きながらそう聞く、と町長はフッと冷笑しながら言った。

「そこまで知る必要は君達にはない。ここまで来たのは君達が初めてだ、そこのところは褒めてあげよう。だから――」

 そこまで言うと町長はモニターの中で二人に背を向ける。

「いい加減、死んでください」

 その言葉を最後にモニターが消え、ロボットが動き出す。

「町長の野郎、ぶっ飛ばす……」

 明秀は怒りに燃えながらそう固く決心する、が今はまずこのロボットをスクラップにすることの方が先決だ。ロボットは町長の命令で二人を殺しにかかった。

「ハカイスル、ハカイスル」

「うっせえポンコツが!!」

 明秀はそう叫びながら槍を握ってない左手を振るい、冷気を浴びせる。そして思いっきり槍を地面に突き刺して氷の槍を地面から突き出した。さらにその後ろから真次が思いっきり飛び立って斧を振り下ろす。

「つぁっ!! かったい……」

 しかしその攻撃は真次の腕を痺れさせてしまうだけに終わり、せいぜい氷が相手の動きをほんの少し遅くしたくらいだろう。そしてお返しとばかりにロボットはまるで丸太のような太さの腕を振りかぶり、真次目掛けて振り下ろす。

「させんっ!!」

 しかし明秀は瞬時に反応して氷の壁を作り出し攻撃を防ぐ。そして同時に叫んだ。

「真次! あの手で行くぞ!!」

「了解!!」

 明秀はそう叫びながら槍を構え、真次も斧を構えなおす。そして同時にロボットの横に回りこんで槍を地面に突き刺し、斧を振り下ろした。
 洞窟内にドォンという音が響き、氷の槍と岩の槍がロボット目掛けて突き出す。しかしその攻撃でさえロボットには少ししか傷がつかなかった。
 
「嘘……だろ?……」
 
 明秀は信じられないというようにそう呟く、がまだ手は無いではない。
 
「逃げるぞ!!」
 
 引き返して入り口まで逃げるのだ。氷の壁を砕くなんて真次の力なら簡単なこと。かっこ悪いが今は逃げに徹するしかない。だが、それすらもロボットは許さなかった。目の赤い光が強くなり、次の瞬間赤いレーザーが天井を削って落石を起こす。その落石は入り口を完全に崩してしまった。

「……出ると思ってたよ……さっすがロボット……」

 完全に追い詰められた、明秀の思考はそれで一杯になる。ロボットは町長に獲物をじわじわ追い詰めるように指示されているのか二人をビームで攻撃しようとはせず、明秀を捕まえるとじわじわと首を掴み、締め上げる。

「が、あぁ……」

「アキ! 離せこのっ!!」
[明秀さん! しっかり!!]

 真次は思いっきり斧を振り回してロボットに攻撃し、案内人が叫ぶ。しかし攻撃は全く効果はなく、案内人の言葉すら明秀には届いていない。

「くっそ……」

 意識が朦朧としていく、がその次の瞬間、真次の他に竜一と真由、そして直人の顔がふと浮かんできた。それを考えた瞬間自然と明秀の表情に笑みが浮かび、呟いた

「……こんなとこで死ぬわけにゃ、いかねえよな……絶対」

 その瞬間明秀の中の何かが揺らぎ、自分の中の何かがはじけた。

「うおおぉぉぉ!!!」

「アキ!?」
[明秀さん!?]

 明秀が叫ぶと共に突然ロボットの頭上に巨大な氷の塊が落ち、それの激突のショックでロボットは明秀を離す。明秀は地面に降り立つと同時に明秀は落ちていた槍を拾って思いっきり両腕を振るった。
 するとまるで吹雪のような冷気がロボットを襲い、ロボットは冷気によって行動を停止する。その次の瞬間明秀は一気にロボットへの距離を詰め、何度も槍で突き続ける。そして止めと言わんばかりに後ろに下がり、まるで滑るように走り出して勢いをつけ、生み出された幾多の氷の矢と共に頑丈な氷によってさらに鋭利な刃となった槍で思いっきりロボットを貫いた。

「ガ、ガガガ……」

 その一撃が止めとなったか、ロボットの目の赤い光が消え、完全に行動を停止する。それと同時に明秀はガクンと膝をついた。

「アキ! 大丈夫!?」

「な、何とか……な」

[大丈夫なら急ぎましょう!]

 明秀が真次の言葉にそう呟き返すと案内人が叫ぶ。それに二人は頷くと真次が明秀の肩を支えて立ち上がり、二人揃ってプレートに乗ると真次がスイッチを入れる。その次の瞬間光が強くなり、二人はその場から消え去った。

「……ここは?」

 真次はそう呟いて一度明秀を下ろし、ワープした先の建物――倉庫を見る、とその入り口は広く造られており、そこからはさっきとは違う平原が見えた。やっぱりこっちにもモンスターがいる。それと共に見えるのは間違いなくさっきの町だ。

「……なるほどね」

 つまりさっきのワープ装置の電源を防壁が出来ると共に入れ、それからこっちにモンスターを転送していく。さっきの平原のモンスターは恐らく町長の言動から実験で作り出したものと考えられる。

「……この手の知識はありがたいよ……ゲーム方面だけど……」

 真次はそう呟いてワープ装置のスイッチを切り、モンスターが入ってこないようにシャッターを閉める。明秀は疲れがたたったのかぐっすり眠り込んでいた。

「案内人、竜一兄ちゃんや真由姉ちゃん、ナオ兄さんの所に行ってていいよ。僕達しばらくここで休憩とるから」

[分かりました。でも気をつけて]

 そう言うと共に案内人の声が聞こえなくなり、それからふぅと息を吐くとただ一言だけ呟いた。

「よかった……生きてて……」

 そう言うと共に真次も目を瞑り、軽い眠りについた。
カイナ
2009年04月20日(月) 19時11分21秒 公開
■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
カイナ:やれやれ、疲れた……。
竜一:よかった、二人とも生きてて……。
カイナ:さて、次回はどうなる事やら? まず竜一は一線越えているのか!?
竜一:てめえいい加減にしねえとマジで斬るぞ! 火葬するぞ!!
カイナ:断るっての、それじゃ。

ケルベロスさん:あ〜えっと、それは心の中で呟いたつもりなんですが、分かりにくかったですか……すいません。
町長は悪者です、完全に二人を殺しにかかってましたし。
二人は……さぁってどうなるでしょうかね♪(後ろでは鎖で縛り付けられて口を塞がれている竜一が殺気ばりばりで暴れている)

無名の一般人さん:え、えっ!? ちょっと、これどこのドッキリ!? エイプリルフールはとっくに過ぎてますよ!?
いや……嬉しいですけどあんな誤字脱字のありすぎる駄作をここの訪問者以外に見られるのは恥ずかしいというか……ごめんなさい。
でもありがとうございました。フロンティア・ストーリー頑張りますね。

この作品の感想をお寄せください。
『それが地面を叩いた瞬間巨大な岩の槍が追ってきたモンスターを貫いていき』この部分ですが、
『それが地面を叩いた瞬間、巨大な岩の槍が、追ってきたモンスターを貫いていき』
こんな感じに『、』を入れた方が読みやすいかと思います。『、』が多く感じますが、それなら『――』などに変えればいかがでしょう。とりあえず私としてはそのほうが読みやすかったですね。

『秀は反射的に顔に張り付いてきたそれを引き剥がして地面に叩きつけ、左手で握った槍を突き出して蜘蛛を指す』
ここの最後の『蜘蛛を指す』は『刺す』の方が正しいです。

前にもいったような気がしますが、『「嘘……だろ?……」』この部分『?』の後は一つスペースを入れておいたほうがいいかと。
20 ケルベロス ■2009-04-26 22:32 ID : 8u0JUU1wUZY
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