フロンティア・ストーリー 十一章
「く〜……ん……」
 
 とある宿屋の一室。ここに泊まっている青年――伊達竜一はぐっすりと眠っていたがふと目を覚ましてしまう。何か冷たい感覚がしたといえば分かりやすいだろうか。
 
「何だ?……窓?」
 
 竜一は何故か開いている窓を見てそう呟く。そこから入ってきた冷たい風で目を覚ましたのだろう。だがちゃんと閉めた事は昨夜確認したはず。と突然何か冷たい風とは別の寒気を感じ取った。
 
「……真由っ!」
 
 隣のベッドでぐっすりと眠っている幼馴染の少女――前田真由を黒いローブに身を包んだ何者かが立っており、明らかに凶器と思しきものを振り上げていた。それを見ると同時に竜一は枕元に置いていた一本の刀を抜き、その何者かの胴を目掛けて振りぬく。
 
 「ギッ」
 
 しかし手ごたえなんて感じ取れず、その何者かは竜一が起きた事に気づいたように声を短く上げ、竜一の方を向く。髑髏の仮面をつけた人間らしきもの、という言い方が一番正しそうな外見だ。
 竜一はその仮面目掛けて柄の部分でぶん殴り、吹き飛ばした直後真由を守るように立ちながら叫ぶ。

「真由! 起きろ!!」

「ふえっ!? な、何!?」

 真由は夜中に突然竜一の声を聞いた事に驚いたのかそう叫ぶが、竜一が刀を構えている事からただ事じゃないと悟ったらしく、すぐに冷静さを取り戻したかのように尋ねる。

「敵襲か何か?」

「ああ、とっとと長刀を持て。狭いと戦いにくいから隙を見て外に逃げ、そこで叩く」

 竜一の言葉に真由は了解と言わんばかりに笑みを浮かべ、長刀を持つと暗がりで見つけた髑髏仮面に風を巻き起こし、その隙に竜一はもう一本の刀を取り直後二人揃ってドアを開け、外に逃げ出した。その直後それを追うように髑髏仮面も滑るように動き出す。
 それから二人は公園と思われる場所に辿りつくとようやく足を止め、それぞれの背中をカバーするように立って武器を構えた。それと共に暗闇からさっきと同じ黒いローブで身体中を覆い、髑髏の仮面をつけた人間らしきものが三人現れる。

「はっ、死神サマが迎えに来るなんてな。俺達、もう死ぬのかな?」

 竜一は嘲るようにそう言い、真由もくすっと苦笑する。相手は黒いローブで身を覆った髑髏仮面、その上おまけに武器として鎌を持っている。これで死神を連想するなと言う方が恐らく難しいだろう。とはいえそんな迷信を信じるほど二人は愚かではない。

「悪いが俺無神論だし、んなもん信じるほど心綺麗じゃないんでね……。敵なら斬り倒す。それだけだ」

 そう言い終わると共にドクロの一体が鎌を振り下ろし、同時に二人は地面を蹴る。その直後二人が立っていたところを鋭い風のようなものが通り、その場を切り裂いた。

「ヒュゥ♪ 冗談じゃない相手だな」

「言ってる場合じゃないでしょ!」

 竜一は口笛を鳴らしながらそう言い、真由が長刀を構えながらそう言うと竜一もへいへいと言いながら二刀を構えて、同時に散らばるように地面を蹴った。

「行くぜっ!!」

 そして竜一は右手に握っている刀を滑らせるようにドクロの一体の胴体目掛けて振りぬく、がその攻撃は完全に空を切っていた。外れたのではなく、すり抜けたように。それを感じ取った瞬間竜一は舌打ちをしながら叫んだ。

「真由っ! 風で衝撃波を作れ!!」

「えっ!? う、うん!」

 竜一の指示を聞いた真由は大慌てで風を地を這う衝撃波のように撃ち出し、その風がドクロのマントをすくい上げる。その中に胴体は無かった。

「幽霊みたいな奴だなくそっ!!」

 竜一は嫌な予感が当たったとばかりに吐き捨ててもう一度突進する。確かに胴体がないというのはやりづらい、が逆に言うと弱点も分かりきった事だ。実体があるのはドクロの仮面とマント。マントに攻撃しても何ともないとしたら狙うべきは。

「ここだっ!!」

 叫び声と共に刀がドクロの仮面を砕くかの勢いで振り下ろされ、その仮面にヒビが入る。そしてもう片方の刀も振り下ろし、その仮面を勝ち割った。

「ギャァッ!!!」

 それと共に仮面が溶けていくかのように消えていき、マントもどこかに消え去った。

「まず一体!!」

「よしっ!!」

 竜一と真由はそう叫んで残り二体のドクロを一瞥する。そのドクロ達は表情が読めないのでよく分からないものの動揺を見せず、一直線に二人目掛けて突っ込んできた。

「左は任せた!」

「はいはい!」

 竜一はそう叫びながら右の方のドクロに突進し、真由も長刀を構えなおして左のドクロを迎え撃つ。

「そりゃあっ!!」

 そして鋭く長刀を振り下ろすが、それはドクロの構えた鎌に阻まれる。しかしそれは真由の予想の範疇だ。

「やぁっ!!」

 力を込めて刀を押すと共に突風を吹かせて勢いを増す。それにドクロが押された一瞬の合間に素早く刀を引いて一歩下がり、勢いをつけて仮面目掛けて突きを叩き込んだ。

「突きぃっ!!!」

「グォッ……」

 その一撃は仮面のど真ん中を捉えてヒビを入れ、さらに真由が左手を右から左に振るとその軌道を描くように風の刃が仮面を横に一閃し、斬り割った。それによりドクロが消えていくのを見届けてから、真由は竜一の方を見る。


「おらおらぁっ!!」

 竜一は右手の刀と左手の刀を休む間もなく交互に振るい続けてドクロを圧倒している。事実ドクロは鎌を構えて防御するのに手一杯……と見えるのは間違いだった。

「……」

「ぐぁっ!?」

 ドクロは竜一の呼吸と刀の軌道から刀が来ない一瞬を読んだのか、そのピッタリのタイミングで小さく鎌を振る、と共に竜一の脇腹から血が溢れ出た。

「しまっ……」

 一番最初に見た真空波だ。思わず痛みで左手の刀を落とし、その隙をついたドクロは一気に反撃に出る。しかし竜一の目はまだ諦めていなかった。

「いっけぇっ!!!」

 竜一は左手を突き出して火球を撃ち出し、それに思わずドクロは怯む。その隙に竜一は右手に持っていた刀を両手で握り締め、素早く相手の懐に入り込んだ。

「らぁっ!!!」

 そして素早く仮面目掛けて刀を振り下ろす。剣道の試合なら間違いなく面ありで一本取れるだろう勢いのある一撃に仮面は耐え切れずにヒビが入る。そのヒビが広がって割れていき、ようやくドクロは消えていった。
 それを見届け、落とした刀を拾い上げて鞘に収めてから、竜一は口を開く。

「……なんだったんだ?」

「さあ?……」

 竜一と真由は今はもう自分達以外誰もいない公園を見回しながらそう言いあうが、一つ息を吐くと竜一がまた言う。

「……とりあえず帰るか」

「……うん」

 何だかすっきりしないが、とりあえず二人は宿に向かって歩き始めた。
カイナ
2009年06月20日(土) 16時48分02秒 公開
■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
カイナ:……すっごい久しぶりだな、モンハンもこっちも。
竜一:ちゃんとモンハンの方も書けよ?
カイナ:はいはい。ま、とりあえずそれでは。

無名の一般人さん:えっと、それでもこちらこそすみませんでした。誤字脱字、結構あると思いますけどね……面倒だから直さないけど。
ありがとうございました。それでは。

ケルベロスさん:ふむふむ、なるほど。参考にさせてもらいます。
それと「?……」の形はこれですっかり慣れきっちゃってるんでこのままいかせてもらいます。でもありがとうございました。それでは。

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