夢より現実、未来にて 〜remake ver.〜 |
【夢】睡眠中にもつ幻覚。多く視覚的な性質を帯びるが、聴覚・味覚・運動感覚に関係するものもある。 【正夢】夢に見た通りの事が現実となる夢。 私は、何故か夢を見るとそれが現実になる。友達と喧嘩をする夢を見た数日後、夢に出てきた友達と喧嘩をした。転んだ夢を見た後は、本当に転んだ。場所も夢と同じ場所で。この現象を『力』とでも言うのなら、最近この『力』が強くなってきている。 以前は、一ヶ月に一度くらい正夢を見た。元々私は夢をあまり見ない体質だ。見ないといっても起きた頃には忘れているだけだろうけど、正夢になる夢は何故か覚えている。だから夢を見たと実感したときはその夢の内容が現実になる。これはもう言い切って良いと思う。事実外したことは記憶に無い。 その力が最近強い。一週間に2〜3回見る。それが全て現実になるんだから予言者と言っても過言ではないだろう。それと、経験から出た結論で、未来は変えることが出来るのだ。 未来を見た後、その出来事に関係することを『無理矢理』変更するのだ。ここでの無理矢理は、本来無いことをするという事――つまり、見た夢に関係のあることで、夢に見なかった事をするのだ。 例を挙げてみよう。私が中学三年の九月半ば頃の事だ。その夢を見ることになる日、私はいつもの様にベッドに入って目を瞑った。 私は、大都市と言えそうな大きな町に居た。沢山の人が横断歩道の上を、忙しなく歩いている。とてもその中を歩きたいとは思えない。一瞬でもみくちゃにされそうだ。 空を見上げると、高くそびえ立つビルの隙間から、青い空が見える。差し込む太陽の光で、辺りは明るい。 そして私は、交差点の真ん中に居た。 そこまで考えてから気付く。これは少し、危ないんじゃない? いや、少し所じゃない! 信号が変わって、車が動き始める。そして、一台の車が私の方へ向かって来て――― 「―――っ!」 思わず後ろに飛び退く。車に轢かれることはなかった。けど、依然この状況は危ない。早く車道から立ち去らないと。……って、え? 後ろを振り向く。私を轢きそうになった車が、何事も無かったかのように走り去っていくのが見える。ちょっとムカッときた。轢かれはしなかった訳だけど、私が避けなければ間違いなく交通事故の完成だった。 ぶつぶつと文句を言いつつ、歩道へ入る。何もしないのも嫌なので、この町を歩くことにした。 民家は無く、道の脇は全てビルに埋め尽くされている。こんな建物は私の住む町には無い。近隣にも無いはずだ。だからこの風景は新鮮で、なんだか楽しい。 楽しくて、高いビルを見上げながら歩いていた私は、人の接近に気が付かなかった。気配を感じて前を見ると、目前にスーツ姿の男の人が迫っていた。 「わっ!」 驚いて声を上げ、避けようとしたけど……、間に合わなかった。ぶつかる! と思った瞬間、その人は私をすり抜けた。 唖然とする私。男の人は何事も無かったかのように歩き去っていった。私をすり抜けた……? いや、違う。私がすり抜けたんだ。男の人は他の人――私以外の人にはぶつからないように避けながら歩いている。ということは、 「これは……、夢だよね」 そう、これは夢だ。そして私の場合、この先現実になる可能性がある。現実になる可能性がある夢の舞台に、そこに行けない私が居たらおかしい。私はここに来れないんだから、ここに私が存在するわけが無い。 だから、私はこの夢を見ることは出来るけど干渉は出来ないんだ。 そんな事を色々と考えて、一人で勝手に納得する。そのまま歩いていくと、コンビニが見えてきた。バス停の前にあるコンビニだ。地名は、 そのままコンビニの前に行き、自動ドアの前に立つ。 「………」 なのに、ドアが開かない。ちょっと悲しくなったけど、直ぐに思い出した。当たり前だ。私の実体はここに存在してないんだから。存在して無い私は、どうやったら入れるだろう? ちょっと考えて、直ぐに思いついた。 ドアに手を伸ばしてみる。ドアに手がぶつか――らなかった。ぶつかった感触が無い。やっぱり、と思う。そのまま前に手を突き出してみると、通り抜けた。腕がドアを貫通している。恐る恐る一歩踏み出る、何の感触も無い、思い切って通り抜ける。 「はぁ……」 安堵の溜息をつく。不思議というか、なんだか変な気分だ。そんな気分のまま、コンビニ内を見回す。入って直ぐにあるレジ、沢山の商品が並べられている商品棚、飲み物とかが置いてある冷蔵棚。そして、視線をレジに戻し、その横を見ると、新聞が並べられている。そこで一つ思う。 これは未来の出来事。どうせなら、いつ起きる事なのかは知っておきたい。なら調べようじゃないか。新聞を見る為、それが並べられている所へと向かう。 ぶつからないので避ける必要は無かったのだけれど、ものを通り抜けるというのは気分の良いものでは無かったので、レジに並んでいる人達にぶつからないように迂回する。そして新聞を取ろうとして、手がすり抜けた。 ……忘れてた。持つことは出来ないから、しゃがんで見る。新聞には、『十月十八日』と表記されていた。 「来月、か」 そう思ったとたん、レジに並んでいた藍色のジャンパーの男がいきなり「金を出せ!」 と叫んだ。手には十五センチ程の刃のジャックナイフが握られている。レジを乗り越え、店員の一人を後ろから掴む。そしてその首にナイフを突きつける。 「ひっ……!」 小さく悲鳴を上げた店員は、「早くしろ!」と怒鳴られて、震える手でレジを開ける。強盗は、そこにあったお金を全てバッグに入れさせると、走り去った。 このとき、私は何もしなかった。……いや、出来なかった。それは私の実体が無かったということは関係ないと思う。恐怖で単に動けなかっただけなのだろう。私はただ、その場に立ち尽くしていた。 私はいつの間にか自分の部屋、ベッドの上に居た。 その夢を見た後、私は少し躊躇ったが警察に電話をした。出た相手に、 「十月十八日にあるコンビニで強盗事件が起こります。禄条通りという場所のバス停の前にあるコンビニです。犯人は一人、藍色のような色のジャンパーを着た男です。ナイフを持っています」 と色々な事を単刀直入に言った。私の言葉を聞いた相手は驚いて絶句していたのを覚えている。 その後、十月二十日だったか。それくらいに警察から連絡がきた。 「いやぁ、ありがとうございます。最初はただの悪戯かと思ったんですが、もしもの事もと思い、一応警官を数人配置したんですが……、まさか本当に強盗が現れるとは。助かりました」 電話をくれたのはかなり陽気な声の男の人だった。それで、未来は変えられるという事を知った。 そんなことがあったから、変えられそうな不幸な未来は変えてみたりしている。変えても良いんだろうか? などとたまに思うけど、起こると分かっている不幸を放っておくのは、流石に気分が悪い。お人好しなのかも知れない。 ……… 今日は良い天気だった。朝から晴れていて、気持ちの良い日だった。 そんな事を思いながら、私は今自室の椅子に座っている。窓の外を見ると、真っ暗な夜空に、所々光り輝く星が見える。灰色の雲も見えない。清々しい空だ。 そろそろ寝よう、と思ってベッドに潜り込む。その柔らかさに身を任せると、疲れていたのか直ぐに眠ることが出来た。 「ふぁあ……」 部屋の窓から光が差し込んでいるのか、眩しくて起きた。欠伸をして、両腕を上に伸びをする。そして、ベッド倒れこむ――つもりだったけど、何かおかしい。 ふかふかとしたあの感触が無い。床に落ちた? とも思ったけど、床なら硬くて痛いはずだ。柔らかさも硬さも感じない。 これは……。似たような経験を思い出して、跳ね起きる。視界に入ったのは、砂色の景色。全てが黄土色の世界。 私は、荒れ果てた大地に居た。 どこだ? ここは。辺りを見回しても人が居ない。見慣れた町の姿は面影も無い。空を見上げても、鳥も飛んでない。あるのは、静寂のみだった。 遠くを見やると、なだらかな砂丘が続いている。たまに岩のようなものも見える。そして、その風景が歪んでいた。なにか地面から立ち上っている。それは、熱気だった。 立ち上る陽炎により歪む砂丘。見慣れないこの景色は、どこか恐ろしいものも感じられる。風が吹くと、砂が巻き上げられて砂嵐を起こす。……砂漠だ。 ふと後ろを見てみる。同じような景色が延々と続いている。その砂の中、なにか別のものを発見した。そのとき、横から強風が吹いた。砂は吹き飛ばされ、隠れていたものが出てくる。 灰色で、四角くて、穴が開いていて。 それは、家の塀などによく用いられる……コンクリートブロックだった。 「え……?」 一瞬言葉を失い、嫌な予感が脳裏をよぎる。風は吹き止まず、どんどん地面は削られていく。そして、見慣れた道――アスファルトが顔を覗かせた。乾燥した台地だと思っていたこの場所は、アスファルトの上だ……上に砂が積もっていただけだ。 「って事は…………」 先ほど見つけた岩のようなものに駆け寄る。近くでよく見ると、それは家の破片だった。日本風の。つまり、ここは日本。住む人が居なくなった家は、長い年月をかけて雨や風に晒され壊れていた。 今、私が立っている場所より高い丘があった。地面が盛り上がっている所だ。遠くが見えるかもしれないと思い、そこに上った。そして辺りを見回してみる。 ……何も無い。何処まで行っても延々と茶色い台地が広がっているだけだ。これが、未来? 急に恐怖が湧き上がる。心の中が寒くなる。 いつかは知らないけど、日本は――地球は、こんな草も水も無い星になってしまうのか? そう考えると、居ても立ってもいられなくなった。普段より速く、激しく動いている自分の心臓の音だけが、嫌に大きく聞こえる。焦燥感に駆られる。 怖い、怖い、怖い、怖い! 私は走った。出来る限りの速さで走る。必死になってひたすら走った。自分以外の生き物を見つけようとして。私は、体力が尽きて、崩れ落ちるまで走り続けた。 ……… もう、走る必要はなかった。自分のベッドに横になっているからだ。体中に汗をびっしょりとかいていて、心臓はまだばくばくと高鳴っている。そして、夢のことを思い出す。 「あんな ベッドから出て、立ち上がった。 |
風斬疾風
2008年08月09日(土) 20時20分48秒 公開 ■この作品の著作権は 風斬疾風さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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あああ……この発想はなかった。 「良いセンスだ」 なるほど、予知夢と言うやつですかね。 人は特別な能力にあこがれます。 私も一時期、オカルトに興味を持ってその研究を行っていた時期がありましてね、その時にオンライン上ではありますが懇意になった霊能力者がいました。 彼に一度、その能力を羨ましがる発言をしたときですが、彼は怒り出しましてね……「こんな能力無い方がましだ」とね。 特殊な能力は、持たざる物から見れば良いものに見えるのでしょうが、持つ物から見れば常人とは違う人生を運命付けられると言う意味では、厄介なもの以外の何ものでもないのでしょうね。 そんな過去の思い出がよみがえってくる作品ですね。 それは、人の心に響くからで、人の心に響く作品は良い作品です。 事実、ちょっとした短編集なんかに載っていそうですもの。 しかし……こんな未来は怖いですなぁ。 一瞬、広島を思い出しましたよ、私は……。 |
40点 | アダムスカ | ■2008-08-10 00:45 | ID : MXRHzdRQNyI | |
えぇ、さびしいですよ、このオリジナルのコーナーは。 俺は少々パソコンに手が届かなくてしばらくこれませんでしたが、これからもたまにみにきますよ、投稿もしますし。 内容は、素晴らしいと感じますよ? 話題変わりますけど、連載ものは書かないんですか? |
40点 | ケルベロス | ■2008-07-25 20:37 | ID : 8u0JUU1wUZY | |
未来を変える話ですか 何か怖いですね もし僕が正夢を見るようになったら……怖くて何も出来ません。 僕は 風斬疾風さんの次の作品を楽しみにしてます 余談ですけど このサイト、最近寂しいですね。 |
40点 | 幻の賢者 | ■2008-07-21 15:19 | ID : Qi5gdBQMmRA | |
合計 | 120点 |