Wimps
Pppppp...

目覚ましか・・・。ていうかもう朝か・・・。
それは、枕元にある。どこかの雑貨店で買った適当な色の目覚まし時計の上部にある突起。僕はそれを人差し指一本で潰すように押した。

「ふぁ・・・」

やばっ、何時?

時計の短針は6と7の丁度真ん中辺りを指している。
この時点で慌てなくてもいいし、長針の位置の確認など僕にとっては今はどうでもいいのだが、一応、万が一、というか目に入ってしまったので、それ、を確認することにした。
長針は8の文字の丁度中心を指していた。

余裕だな。と思い、僕はフラフラとおぼつかない足で洗面所に向かった。

途中で母親に会った。
「おはよう」
と挨拶を交わし、その後の行動は特に興味がなかったので無視した。

洗面所に入るときのドア一歩前は、「ギシッ」という。
僕が生まれる前からこうなのだろう。
この音を聞かなかったときの記憶は一切無い。

洗面所に入ると、姉が下着姿で顔を洗っていた。
顔をあげ、「あ」と言いたそうな顔でこちらを見た。

「あ、光季、おはよ。今日も暑いねぇ・・・」

「おはよ。お姉ちゃんは仕事?」

「ううん、今日は午前中から友達と遊ぶ予定。」

お姉ちゃんの下着姿はいつもなので別に気にせず、一切、1mmの興味も持たず会話を交わした。っていうか平日なのにお姉ちゃんもその友達も何遊ぶつもりでいるんだ。
しかも午前中遊ぶ、というのに6時半はいくらなんでも早すぎだ。

そう頭で思いながら顔を洗った。
髪も少し濡れたが気にしなかった。乾くだろ。
別に乾かなくても生活に支障が出るほど濡れてはいない。

居間へ行くと、さっきの全く興味を誘わない下着を着たままソファーでごろん、としている姉を見つけた。見つけたところで「だから何だ」と言いたくなるぐらいどうでもいいことなんだけど。

「お姉ちゃん、テレビつけて」

だるっ、と今にも口から言葉を発しそうな姉は、人差し指を机の上のリモコンに「自分でつけろ」と言う様に指した。

無言で僕はチャンネルを取った。
「Power」と表記してある突起。それを僕は突起全体に力が広がるように丁寧に親指で押した。

プツッ、と言う音と少しの間の後、テレビの画面に映像が入った。
画面の中の映像と、スピーカーから発せられる音声などの情報からして、
朝のニュース番組だろう、と僕は予想した。

画面下には「2016年、オリンピック開幕まであと1日」
と大きな文字で書かれていた。

マジか・・・。明日は見たい番組が指でやっと数えられるぐらいにあるのに。

僕はスポーツなどに興味はない。中学校の部活も特に入っていないし、
帰ってきたら勉強をして、休憩の間や暇な時はテレビゲームなどをして余暇を潰し、それが飽きればまた勉強、という端から見れば「超」や「ド」がつくほど普通の生活を送っている。

ぼけっ、としていると時計の短針はもう7の中心を指していた。
今度は長針の位置を確認せず、僕は自分の部屋のハンガーにかかっている、
夏の学生服目掛けて階段を歩いた。

こんなこと、慣れなくても別にいいんだけど。
慣れた着方でカッターシャツに袖を通し、
穿いていた短いジャージを降ろし、勉強机の下方に置いてあるチェック柄の制服を代わりに穿いた。

特に選んだわけでもないメーカーのスポーツバッグを肩にかけ、
1階へ降りた。忘れ物は昨晩確認したから無いだろう、と思っている。

1階のテーブルには、四角形のパンと、お母さん、または姉が作ったであろうスクランブルエッグが皿に盛られ、置いてあった。
見た目はわからないのだが、姉と母の料理ではエラく味が違う。
姉の料理は常人が胃に入れる物ではない。

料理、というより兵器、と言っても過言ではないほど、
人の舌には合わない。
以前、姉の作った料理、いや 兵器を朝に食べた僕は、その日学校を休み、
一日の大半をトイレで過ごしたこともあった。

母の作った朝食であることを願いながら口にスクランブルエッグを運んだ。
僕はかなりの臆病者で弱虫だが、朝ごはんだけは食べないと一日の始まりが何と無くムナクソ悪いのだ。例えその朝ごはんが姉の作った兵器だとしても。

ぅぐ…? セーフだ。特に文句のつけようもないスクランブルエッグだ。

と、いうことはお母さん、起きてるのか。

「光季、おはよう」

お母さんは・・・美人だ。あと、最近少し静かになった。
少し前まではうるさかったのだが、最近は妙に怒ったりしない。
ちなみにマザコンじゃない。一般的にそうだと僕は思うだけだ。

「おはよう、母さん」

「そういえば、期末テストの結果聞いてないけど、どうだった?」

期末テストか・・・なんだっけ・・・

「国語が70点、英語が97点、数学が98点、理科が82点、社会が89点だったよ。他の教科は覚えてない。」

「まぁまぁ、ね・・・。」

そういえば・・・国語に1問だけ配点のものすごく高い問題が・・・

「そうだ、母さん、国語のテストに1問25点の問題があったんだけど・・・」

「配点・・・高すぎるわね」

「そうなんだ。アンケートみたいなんだけど、どう答えればいいかわからなくて、とりあえず自分の思うように書いたんだ。」

・・・・・・少しの沈黙のあと、お母さんは新聞のとあるページを開いた。

「これ・・・じゃない?」

僕はお母さんの右手にある新聞の中身を見ようとしたが、僕の視力では上手く捕らえられず、少し近づいて中身を見た。

なんだこれ・・・

「弱虫アンケート・・・?」

「そう。1問25点で、全国でやってるらしいわよ。」

そう話していると、姉が口を挟んだ。

「それ、今テレビでやってるよ?」

母と僕はテレビに目を向けた。

テレビの画面には
「弱虫少年、この世にいらず?」
と大きな枠の中に大きな太い文字で書かれていた。

「この世にいらず、だって。光季、アンタヤバいんじゃない?」

姉は口を開いたが、お母さんは黙ってテレビを見ていた。

「夏休み前の期末テスト、国語のテストで意味不明の問題が出題されました。
教育庁じきじきの問題、と新聞には書かれております。
教育庁のファックスには、
『現在の世の中に臆病者は必要ない。
その臆病者が実る前に、始末するか否かを中学3年生で決定する。』
と、非常に冷たい書き様で記されております。
この問題について、どう思いますか?大塚さん」

女性アナウンサーから少し年配なオジサンに話が変わった。

「意味不明ですね・・・。何を考えているんでしょうか?」

・・・・・・。確かに意味不明だ。
しかも、僕の国語のテストは3問しか間違ってなかったハズ・・・
3問で70点だとすると・・・

「光季・・・?もしかして・・・間違ってたりしないわよね?」

お母さん。その質問はおかしすぎる。
その問題が間違っているか、の前に、教育庁のその問題が間違っている、と思わないのだろうか。


「母さん、その問題・・・間違ってる・・・と思う。」

「そう・・・」

少し悲しい顔をしたお母さんは、その顔、表情のまま

「遅刻するわよ。行ってきなさい。」

「あ・・・、うん。」

時計の短針は7時と8時の間を指し、長針は6の丁度中心を指していた。

「じゃあ、行って来るよ。お姉ちゃん、母さん。」

「いってらっしゃい・・・」

下着姿のお姉ちゃんは、少し悲しい顔をして言ってくれた。
まだ母さんはパジャマ姿だった。さっきまで話してたけど、今気付いた。
母さんも、何故か少し悲しい顔をして、いってらっしゃい、と言ってくれた。
少し悲しい、というか凄く悲しい表情だった。目は潤みだし、泣き崩れそうだった。

ガチャ、とドアを開けると、真っ黒な服を着て、サングラスをかけた
「いかにも」な人が立っていた。

「え・・・」

右手には銃らしきものが握られていた。
素人な僕には本物か全然わからなかった。

パァン、と乾いた音がした。


僕は、そのまま体重の赴くまま倒れた。







なんで? そう声に出そうとした。








声は、出なかった。

目の前には、赤が見えた。
赤というより、黒って言ったほうがいいかな?


起きなきゃ。早く学校行かなきゃ。

そう思って、僕は少しの間、目を瞑った。

少しの間かはわからない。僕は少しの間、だと自分で思った。






end
気まぐれビリー
2008年08月11日(月) 22時06分58秒 公開
■この作品の著作権は気まぐれビリーさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして。
この話は1話で終ります。

これからよろしくおねがいします。

主人公の名前は「コウキ」と読みます。

よかったら感想とか、指摘お願いします。

皆さん、指摘色々とありがとうございます。
文などの誤りが多くあったみたいですね。
初めて小説を書いたので、勉強になります。
皆さん、本当にありがとうございます。

物語なのですが、
やっぱり急な展開に持ち込みすぎたようです

母や姉がどうして悲しんだのか、
は、書いた後に自分自身で「あ」と思いました。すいません・・・

突然、日本のチキンヤローが殺される事になった理由などは特に考えてなかったのですが、
エピローグ、プロローグ的に余暇があれば理由を作ってみようと思います。
後付けになりますが・・・。

文法などのこと、物語がどうしてこうなったのか、などをハッキリさせればいいのかな?
と自分では解しております。

コメントや指摘ありがとうございました。

この作品の感想をお寄せください。
 うん、最後の所とかもう少し話が続いても良かったかも。
 静かな感じで物語りは進んでいって雰囲気は良いと思うのですが、やはりなにか物足りなさが残ります。
 ただの日常から突然の死。やっぱりこの「日常」から「終わり」までの出来事がもっとあった方が……。
 後、書き方ですが文頭には全角スペースを一つ入れましょう。
 では、宜しくお願いしますね。
10  風斬疾風 ■2008-08-11 19:46 ID : FZ8c8JjDD8U
PASS

 単発物にするにはパンチが足りない様な気がしますね。
 まず、西暦2016年と言う所から、我々の住む次元での話だと言う事は分かります。
 そして、日常を描いた後に唐突とも言える展開、恐らく主人公の死。
 その背景にある「弱虫は日本にいらない」「弱虫を排除する」と言う政府の謎の決定。
 それをテストで判断し、不合格者は……まぁ、エージェントに抹殺されるのでしょう。

 短編で書くならば、もう少し文量が欲しかったところです。
 日常と非日常、常識と非常識の部分が性急に結ばれています。
 日常パートを……そう、前日の夕方くらいから書き込んで、こう物語の中で時間が過ぎている事を表現するものを置いてみたり。
 或いは、主人公はゲームをするようですから、RPGの終盤までやっていて、それをもう少しでクリアと言うところで、とりあえず寝て。
 翌日この事態、と言うのだと、唐突感と言うか、予期していない感が出るのではないでしょうか。

 また、面白いと思った部分は。
 母や姉は、主人公が抹殺される事を知っていたようでした、姉に至ってはかなり直接的な言葉まで投げかけています。
 主人公は知らず、マスコミも知らない事を何故母や姉は知っていたのか、その部分は大変気になります。
 スピンアウトとしてその辺を描いても面白いかもしれません。

 また、「…(三点リーダ)」は言葉や動きの余韻を表すのに有効ですが、その使用の際には「……」とこの様に二個で一つとして使用するのがセオリーです。
 そして「!(エクスクラメーション)」や「?(クエスチョン)」マークを使用した後には、スペースを一つ空けるのが決まりです。
 三点リーダはともかく、「!」「?」の後のスペースは意外と忘れがちですので、お気をつけて。

 最後に、これからよろしくと言う事は、ここでの執筆活動を続けられるようですね。
 それでしたら、他の作家さんの作品も読んで、きちんとコメントをする事をお勧め致しますよ。

 それでは失礼。

10 アダムスカ ■2008-08-11 02:05 ID : MXRHzdRQNyI
PASS
合計 20
お名前(必須) E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)  削除用パス 


<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD 編集 削除