Murder
 ぺちっ、ぺちぺち

誰かが俺の頬を軽く叩いている。
朝?か知らないけど、まだ病院のハズだ。

「何だよ……?」

 ふぅ、と一度息をつき、瞼を開けた。
すると、超至近距離に可憐の顔があった。

「ちょ!可憐、近ぇ。」

「ぁ、起きた。」

「起きた、じゃねぇよ。とりあえずどけ。」

ぇー、とだだをこねるように小さく言い、可憐の顔は元の位置へ戻った。

「まだ体痛い?」

そういえば、あの激痛は何だったんだろうか? あれから痛みは全くない。

「いや、全然。むしろ前より良くなった。」

「な、何それ?」

嫌な予感がした。だから可憐には隠すことにした。

「いや、調子が良くなっただけだろ。まぁ、今日には退院する。」

「だ、大丈夫なの? 全治2週間ぐらい、って聞いたけど?」

言葉には出さず、「うん」と頷いた。

そういえば、今日って学校じゃないのか?

「なぁ、可憐。今日って学校じゃ……」

ないのか? と、言う前に即答された。

「今、休みって連絡したよ。心配だったから。」

と、言うことはまだ早朝か。

「お前、一応学年トップだろうが。登校しないでサボってどうするんだよ」

「いーじゃんかぁ。心配だったの。」

 嬉しいことを言ってくれるのは良いんだけど…。
一応、学年トップの学力なんだ。きちんと登校してくれ。

 俺は体を起こして、ケンカしてからそのままだったTシャツの上に、ハンガーにかけてあった学ランを羽織り、可憐と一緒に病室を出た。

すれ違ったナースに変な目で見られたが、いつものことなのであまり気にせず1Fのカウンターまで歩いて行った。
メガネを病室に忘れた、と気付いたが、今は必要ない。置いていくことにした。

カウンターが見えた。ナースっぽい女の人が椅子に座っていたので、声を掛けた。

「あの…、昨日入って来た、『神田 玲斗』っていうんですけど、もう退院してもいいですかね?」

「担当の先生に聞かないと分からないわ。
神田君ね。えーと、これかな?あ、これは上出か。」

そういいながら、女の人はファイルをめくっている。

自分の名前が見えたので

「あ、それです。その一つ前です。」

と言った。 えーと、と言いながらカルテを読んでいるようだった。

「2週間入院になってるけど、大丈夫なの?
あと、親御さんが昨日今日来てないけど…」

「あ、親は二人とも他界しました。」

「そう…。ごめんなさい。余計なことを聞いてしまって。」

「いいえ、気にしてません。どうでもいい親でしたから。」

「子供をどうでもいい、と思う親なんていないわ。」

「どうですかね…。」

「あ、担当の先生だったわね。ちょっと待って頂戴。」

その後、女の人は無線の様な物で誰かと連絡をとっていた。少し時間がかかるな、と思い、近くのソファーで座っていることにした。

あの激痛とそのあとの調子の良さは何だ?
激痛の原因は何だ? 喧嘩したこと? それとも傷の箇所が悪いだけ?
激痛はたまたまかも知れないが、何でその後視力が治るほどに調子が良くなる?

おかしい。俺の体はどうかなっちまったのか?

俺の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだった。

「あぁ、昨日の喧嘩あとの君か。どうしたんだね?」

 いきなり声を掛けられてビクッ、となった。
顔を上げると、白衣を着ているガイコツが立っていた。
いや、よく見ると医者っぽかった。超痩せている。

「あ、はい。担当の先生さんですか?」

「あぁ。私は川元という。人がいなかったから、とりあえず診に行ったら、運良く君は外的負傷だったんだ。」

「そうですか…。あの、それで」

退院させて下さい、と言おうとした。

「君、背中の脊髄の近くを鋭利な物で刺されたようだね。体に異常はないかい?」

! そうか。脊髄か。中学校で少し話を聞いた覚えがある。
運動神経に信号を出すところ?だったかな。 脊髄に異常があるから調子がいいのかも知れない。

「可憐、悪い。3分だけ先生と話させてくれないか?」

「あ、うん。じゃあ 私、そこの休憩所にいるから。」

可憐は立ち上がり、左側の休憩所の陰に姿を消した。

「先生、実は昨日の夜、激しい痛みが出て」

「激しい痛み?」

「はい。背中だけではなく、全身に、です。」

「全身に激しい痛みか。それで、今はどうかね?」

「今は痛みはありません。逆に、何故か激痛の後は体の調子が良くなって。」

そう。あの激痛の後だ。あの激痛の時、脊髄に何か起こった…のか?

「調子が良くなる? 聞いたことがないな。」

むぅ、と少し考えたあと、川元先生はこちらを向いた。

「それは、夜の何時ぐらいかな?」

「…覚えてません。ですが、激痛が起こる前は夕日が沈みかけていたと思います。」

「日没か。と、なると7時ぐらいかね。運ばれてきたのは昼の…」

カルテを見ながら言う。

「3時半ぐらいだ。救急車が現場へ行き、こちらに運ぶまで30分。つまり救急車を呼んだのは3時だ。大体ケガしたのは2時か3時の間ぐらいだとワシは思う。」

そうだ。2時ぐらいだ。ポータブルオーディオを確認したとき、2時10分で、その直後に後からいきなり蹴られたんだ。

蹴られてからクソガキの顔を殴ったあと。そこから記憶がない。

2時10分から少ししたあと、蹴られて殴り返す。この動作をするのに5分もかからないハズだ。

そこから記憶がないのだから、2時15分ぐらいに鋭利な物で背中を刺され、45分間ブッ倒れていたのか?

「あの、すみません。通報したのは誰でした?」

「通報した人、か。誰だったかのう?救急隊員からの話だと、公衆電話だった気がするわい。」

公衆電話。可憐はケータイを持っている。可憐ではない。
だとしたら、ケータイを持っていないぐらいの年齢の子供、
それか、身元が救急隊員、または俺に知られたくない人物。

「なるほど。君が考えたことはわかるわい。倒れてからの空白の45分。その45分の内に、その通報者が君の体に何かした、という考えじゃろう?」

「そうです。体の調子が良いに越したことは無いのですが、原因が分からないとなると、後がすっきりしなくて。」

「ふむ。確かに原因不明のままだと後味が悪いのぅ。」

先生はまた「ふむ」と考えながら、結論を出したようにこう言った。

「少し興味があるのぅ。でも君の体の調査は私以外の先生は手を貸してくれぬと思う。私だけでもよければ、君の調査に手を貸そう。」

 思わぬ展開だ。退院してもいいですか、と聞こうとしただけなのに、俺の異変の調査を手伝ってくれるとは。

 可憐が休憩所の壁からちょこっ、と顔を出していた。「もぉいいー?」と言いたそうな顔だった。

「あの、先生。今は彼女が。」

「そうじゃのう。この事は内密にしたほうがいいかもしれん。今日は彼女を見送りなさい。入院費は調査費として私が出そう。
検査をするから、彼女を見送ったあとはカウンターへ来てくれ。」

「はい。わかりました。」

頷いて、少し離れた休憩所まで走っていった。足も速くなった気がする。それも、かなり。
ナースに怒られる、と思ったが、幸い誰も見ていなかったので普通に可憐に会うことが出来た。

「可憐、ちょっと検査があるから、今日は家へ帰れ。」

「え、大丈夫なの?」

「ああ。心配するな。」

「ふぅん。まぁ、適当にお見舞いにくるから。っていうか退院するんじゃなかったの?」

 あ、退院するって言いに来たんだった。どう誤魔化すか。

「いや、まだ傷が浅くなってないところがあってな。また検査したあと、少し治療して退院するらしい。」

「そっか。じゃあ、私は帰るよ。早く治してね!」

「ああ。見送るよ。」

可憐とは、病院から出たすぐそこにある、坂の辺りで分かれた。
バイバイ、と手を振った。



 俺の脊髄に何か起こったのだろうか。
だが、45分の空白の間、何かあったのなら、背中の傷は関係ない。
つまり、脊髄は関係ない…。

俺の体に、誰が何をした?

何が俺の体を変えたんだ。

考えながら病院内へ戻った。
気まぐれビリー
2008年08月17日(日) 22時32分57秒 公開
■この作品の著作権は気まぐれビリーさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
Murder(マーダー)、2話です。

説明文っぽい話になってしまいました。
この話で犯人が少し分かります。
簡単に気付くと思います。

病院はあまり行かないので、先生の口調やカルテ、受付などの仕様は全く知りません。
すみません。ほぼ雰囲気で書いてます。

誤字や文法など指摘よろしくおねがいします

よかったら感想もどうぞよろしくです。

まだまだ頑張ります。

皆さん、指摘ありがとうございます。

小説の物語ではなく、説明文みたいになっていたみたいです…

確かに容姿がわからなかったり、
感情がわからないまま、考え事だけを書いてるような気がします。ありがとうございます。

主人公=漫画によく出てくる不良みたいな容姿で、短髪逆立ててる感じです。背は170後半ぐらいと見てくれればいいです。

可憐=少し地味です。黒髪のセミロングあたり。身長も160と普通の女の子です。

川元=痩せてます。バーコードです。

この作品の感想をお寄せください。

 ミステリー小説になるのですかねぇ?
 ちなみに「ミステリー」と「サスペンス」の違いは、物語の冒頭に「犯人が分かるか、分からないか」です、分かるのがサスペンス、物語の最後に犯人をバラすのがミステリーです。
 端的に言えば……ですが。

 ストーリーの仕立ては言う事はないと思います。
 ただ、情景描写や心理描写が若干不足かと思います。
 特に、読み手にも一緒に考えて欲しい場合などは、推理する材料を多めに盛っておく事が必要です。
 もちろん、主人公の思考もです、描写として描ききれない部分は主人公の記憶や思考から推理材料として抽出させることができますので。

 あと、時代背景がいつ頃かわからないため何とも言えないのですが。
 現代が舞台ならば「ナースっぽい」よりも「看護師風の」と言ったほうがいいかもしれませんね。


 第一話を読んだ感想としては。
 主人公を中心に、水面下で「何らかの陰謀」が働いているような印象を受けました、医者が「調査費」として治療費や入院費を出すと言うのもきな臭い話、主人公の視力が回復した事、原因不明の激痛と相まって、不気味な空気感を醸し出していますね。

10 アダムスカ ■2008-08-15 20:50 ID : MXRHzdRQNyI
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 人の表情といいますか、感情の変化の描写が少ないと思います。
 後、「」のみがあんまり連続するのも個人的に好きではありません。間に話し手の動きなど入れてみてはどうでしょう?
 さて、一体何が起こったのか。……犯人は誰か。
 この物語のジャンルは何なんでしょう?
10 風斬疾風 ■2008-08-14 14:17 ID : FZ8c8JjDD8U
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俺の読み取り力が悪いせいだと思うのですが、キャラの友好関係っていうんですか? 友達とか、彼女とか、そういう設定と、少し容姿の描写を詳しくやったほうが創造しやすいです。

あ、遅れましたが初めましてですね? ケルベロスです。 以後よろしくお願いします。

それから、少し物騒なタイトルですね(笑
10 ケルベロス ■2008-08-14 08:45 ID : If3qiekeSNg
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