サモナーズストーリー 13章 |
リムスの出生について話された翌日、セントは一人で学校を出た。別にシグルスに言われたことを守っているわけではない。授業中に眠ってしまったことで先生に呼び出され、思いっきり怒られてしまっていただけだ。 セントは「まずったな」と呟きながら校門を出ようとする、と 「ようやく来ましたか」 校門を出てすぐのところで声をかけられ、そっちを向くと眼鏡をかけた老人がいた。リムスの母の執事だったかなんだか言う老人、ラパートさんだ。 「どうしたのですかな?他の方々はもうとっくに帰ったようですが」 「先生に呼び出されてただけだ」 ラパートの言葉にセントは少しむかっとしたか強い口調で返す、とラパートはふふっと笑いながら言った。 「それは申し訳ない。お詫びと言ってはなんですが、少々付き合ってもらえますかな?」 「……時間をあまり取らないなら」 ラパートの言葉にセントが少し考えてから返すと、ラパートは柔和な微笑みを浮かべて頷き、歩いていく。セントもその後を着いていった。 そして連れてこられた先はまさに穴場だとでもいう感じのただよう喫茶店だった。 「……いいのか?」 「はい?」 セントの言葉にラパートがそう聞き返すと、セントは申し訳無さそうに言った。 「……今俺、あんまり持ち合わせは無いぞ」 「おや、そんなことですか?」 そう言うとラパートはくすっと笑って続けた。 「御心配なく、これはお詫びなので私が全額負担いたしますよ。ささ、おかけください」 ラパートがそう言うとセントは「ああ」と曖昧に返事をしてイスに座り、ラパートも座った。 「ハンバーグ定食を一つ、日替わり定食を一つ、あとコーヒーと……飲み物は何がいいですかな?」 「え、ああ……んじゃオレンジジュースをお願いします」 「ではそれで」 ウェイターに注文を終え、少しすると料理が出てくる。それはどれもこれも美味しかったが、セントは食べ終えるとフォークを皿に置き、不敵な目をしてラパートに尋ねた。 「んで、何のつもりだ?」 「はて?何のことでしょう?」 セントの言葉にラパートは微笑みながら言う。とセントは不敵な笑みを浮かべながら言う。 「ごまかすな。何の意味もなくあそこにいる訳無いだろ。リムスの護衛なら俺を待つ必要は無い。」 「ふふ、あなたは本当に勘がいいですね……お話したいことがございまして――」 それから一息つき、ラパートは話し始めた。 「このお店はお嬢様、リムス様の御両親とよく来ていたのですよ……」 「そういや、あいつの父さんに母さんはどうしてんですか?」 ラパートが思い出したように言うとラパートは少し首を横に振ってから言う。 「お嬢様のお母様はお亡くなりになられました。そしてお父様は仕事で世界中を飛びまわっております。」 「……勝手な父親だな。娘があんな状態で」 ラパートの言葉にセントが言うと、ラパートはまた首を横に振って言う。 「それは違います。彼はお嬢様を守るためにあのような事をしているのです」 「……はぁ?」 その言葉にセントがそう言うと、ラパートは続けた。 「お嬢様の御両親が結婚に反対されていたことはお話いたしましたね?それで父君とお嬢様は大変な責めを受けてきました。母親を盗んだ泥棒とその娘、とね」 「……」 セントは黙り込み、ラパートは続けた。 「父親は全ての責めを自分に受けるためにお嬢様をここに送り、ご自分はあのような無茶を……」 そこまで言うとラパートは少し黙り、それから言った。 「私の力ではお嬢様を守りきる事はできません……理不尽かもしれませんがお願いいたします。お嬢様をお守りください……」 そう言うとセントはふっと笑って返した。 「俺がその願いを受け入れる理由はないな」 「そうですか――」 「だが」 セントの言葉にラパートは悲しそうに呟くが、それを遮って言う。 「俺は俺の信じた道を進むだけだ。その中にリムスを守るってのは含まれてる」 「……ありがとうございます」 セントの言葉にラパートは静かに言い、セントはふっと笑って席を立った。そしてラパートは今日から別の宿を取ると言って歩いて行き、セントも寮へと戻っていく。と 「なっ……ロイ!エレナ!」 その道の途中ではロイとエレナが倒れており、セントは大慌てで二人に近づき、抱き起こす。すると 「ぐっ……」 「いったぁ……」 「二人とも、大丈夫か?……一体何があった?」 セントは二人にまだ意識があることに安心してから尋ねる、が二人とも話せるような状態ではなく、セントはワルフを召喚し、獣化させると二人を乗せて寮まで走った。 そしてその後、丁度日が暮れ始める少し前、ロイは包帯を巻いた状態で話し始めた。 「これは帰る途中の話だったんだが、あのリンブロムの刺客の奴らに不意を突かれて……精霊使いだった」 なるほど、流石にロイといえども不意を突かれて精霊から攻撃を受けてはたまったものではないだろう。そしてロイは続けた。 「何とか俺も応戦はしたんだ……だが多勢に無勢。言い訳にしか聞こえないだろうが……やられた」 ロイは悔しそうに歯を噛み、その横で打撲跡が腕に残っているエレナが続けた。 「リムスは私達を守るためあっちに行ったの……あいつらが言ったのよ。『今こっちに戻ってくればこれ以上の暴行は加えん』って……だから……」 二人は面目無さそうに言う、とセントが呟いた。 「上等だ」 『……え?』 その言葉に全員の視線がセントに集中し、セントは拳を鳴らしながら言った。 「仲間をボコった挙句誘拐たぁいい度胸だ。いっちょ殴りこみと行かせてもらうとするか」 その目は完璧に本気だった。そして寮から出て行き様に言う。 「今から行くのは俺の勝手なんで、あなた達が責任感じる必要はありません。それでは」 「ちょっと待て」 セントの言葉にそう返したのはロイだ。そしてロイは包帯をのけながら言う。 「もう俺はユニスのおかげで傷は癒えている。俺も着いて行くぜ」 「私も、リムスがさらわれた時何もできませんでしたから」 エレナが言うと次々と行くと名乗りあげて結局全員行くことになり、それを見てセントが呟く 「……悪い」 「別にいいさ。そもそも君は奴らがいるところを知ってるのか?」 「……」 シグルスの言葉を聞くとセントはそう言えばと言わんばかりに黙り込み、その隣に立っていたレンはため息をつくと言った。 「そうだろうと思った……案内するから着いて来い」 レンはそう言って歩きだし、セント達はその後を着いて行った。 |
カイナ
2008年09月14日(日) 21時42分41秒 公開 ■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | |||||
---|---|---|---|---|---|
執事(?)はお父様を彼という呼称で呼ぶことは無いと思います。 さて、遂に殴りこみですか。あんまり大変なことにならないと良いですが……、なんか思いっきり暴れそうな気もしなくは無い。セントの性格は結構定まってきた感じですね、って事で隠密行動になれるのかどうか。 お金と権力は大きな壁。凡人は中々対抗できないのです。そこはどうなるか、気になる所かな。 では、これにて。感想が遅れることは、すいません……。 |
30点 | 風斬疾風 | ■2008-09-20 16:53 | ID : FZ8c8JjDD8U | |
ハンバーグ定食ですか。意外と、普通……。 僕はカキフライが大好物ってどうでもいいか。 例のモンハン小説は直接タイプです。 00の再放送見るまで暇ができたので日曜の深夜にこつこつ考えながら書いてました。だから最初らへんは更新速度一定です。 難しくなりそうですね。 |
30点 | 生徒会長7 | ■2008-09-15 00:48 | ID : SRGaKim4DWg | |
どうも、一番乗りですね。 前回言い忘れたのですが、文章(物語、文書問わず)を書くときは「?」「!」の後にスペースを一つ空けるのがセオリーとなっています。見るところ、頻繁に空いていないように見えましたので、一応参考までに。 『今こっちに戻ってくればこれ以上の暴行は加えん』 こう言うとまた「ケチばかりつける」と言われそうですが、「……これ以上の暴行は……」とありますが、どうにも自然な響きを感じませんでした。一般に脅迫の妥協文句で使われるのは「これ以上危害は」であると思います。 何でこう言う細かい事を言うのかというと、リムスをさらった連中は恐らく、主人公達が敵対する一団の最下層に位置する人物だろうと推察できます。そう言う人間達には「三下キャラ(ドロンジョの部下のような)」の様な個性は必要ないのです。個性の強い人物が増えると、それだけ主人公格や悪役格の個性に干渉してくる恐れがあります。そう言うモブにはなるべく個性はつけない方が良いです。 よって、セオリー通りの型にはまった台詞を吐かせるのが妥当であろうと言えるわけです。まぁ、文章の体裁さえ整っていれば書き方に正解はありませんから、一応、参考までに心に留めて置いていただければ幸いです。 さて、感想の方を。 今回はリムスの後見人とセントとのやり取り、ついに始まってしまった母方側とのリムスを巡る抗争と言う流れですね。 ラパートと言う男、中々好人物のようです。しかし、自らを滅ぼしてまでもリムスを守ろうと言う気概は無い? 様ですね……。何か裏があるのかと勘繰ってしまいますが。 そして、彼の口から語られた、リムスを取り巻く御家騒動ですが。彼女の父親が具体的に何故、方々を飛び回っているのかと言うのが語って欲しかったかもしれません。彼女を連れていると見せかけて単身飛び回り、避難させた彼女に目が行かないようにしているのでしょうか……。 ロイとエレナの奮闘も虚しく、リムスは虜になってしまったようですね。セントは敵地に乗り込む気満々と言った風ですが、果たして大丈夫なんでしょうかね……。敵は話から推察するにそれなりの家柄、資産もきっとあるのでしょう。そう言う連中は往々にして私兵と言うものを有しています。まだまだ発展途上にあるセント一行がプロフェッショナルを相手に勝てるのでしょうか。 或いは側面から奇策を用いて救出する可能性もありますが、セントの性格上その選択肢が出てくるかどうか……。無理な事をしなければ良いですが。それこそ無理と言うものなのでしょうね。 妄想は尽きません、続きをお待ちしています。 |
30点 | アダムスカ | ■2008-09-14 23:27 | ID : MXRHzdRQNyI | |
合計 | 90点 |