サモナーズストーリー 17章 |
目の前の建物が茶色の中に緑色の混じった色の羽をした鷹が壊していく。「止めろ、言う事を聞け」、少年がそう言ってもその精霊は破壊を止めない、いや、自分すら言う事を聞かない。身体が勝手に動く、その目の前には自分の…… 「止めろおおぉぉぉ!!!」 緑色の髪をした少年は絶叫して目を覚まし、その横でうとうととしていた金髪の少女はその声で目を覚ますと慌てた様子で言った。 「ロイ! 大丈夫!?」 「あ、ああ……」 少女――エレナが言うとその少年――ロイは普通以上に鼓動をしている心臓を押さえるように胸に手を当てる。とエレナが心配そうに尋ねた。 「ホントに大丈夫? またあの夢でしょ?」 「ああ、案の定ってな……あれから今日まで、この日は悪夢の日だ……また一年、心配は消えるな……ははは」 ロイは最後を自嘲するように言い、それからエレナ向けて言った。 「悪いな……俺があんな馬鹿やっちまったせいで……お前にも叔父さん、叔母さんにも迷惑が……」 「ふふっ。それは気にしない、口にしない約束でしょ? それに、あれはロイのせいじゃない」 ロイの言葉にエレナは柔和な笑みを浮かべて返す。それからロイはベッドから起き上がりながら言った。 「サンキュ、もう起きることにするよ。エレナも部屋に戻ってくれ」 「うん。でも何かあったらすぐに呼んでよね」 ロイがそう言うとエレナは頷いて立ち上がり、出て行き様にそう言われるとロイも頷く。 それからエレナの気配が上に行った事を確認すると、ロイは自分の部屋の壁にガラスケースに覆われてかかっている、両刃の大剣を見ながら呟いた。 「今日であれから四年……か……」 [ロイ、俺のせいとも言えるあの事件だけどよ……お前はいつまで自分を許さない気だ?] 彼の精霊――ティーグルの言葉にロイは表情を歪め、それから吐き捨てるように言った。 「あれは俺の弱さが生み出した……一生に……決まってる……」 ロイはそう悲しげな目で呟くとベッドから降り、寝巻きから着替え始めた。 「……おはよう」 それから太陽も昇り、ロイは朝飯を食べに一階の広間に降りる、ともうセント達は降りてきている。いや、セントだけは寝癖だらけで今起きたように思える。気のせいかリムスも眠たそうだ。そして全員揃って朝飯を食べ、学校へと向かって行った。 「ほう、あれが幻影の狂戦士か」 「ええ。今はもう裏の世界から手を退いてますが、彼の力があればここらの制圧は簡単です」 そのロイ達を見て、ある影からそう言う会話が行われていたが、それには誰も気付いていなかった。 そして授業も終わり放課後、ロイはセントとリムスと共に帰っていた。 「んっ、あの騒ぎから数日、静かでいいな……」 セントはにっと笑いながら言い、リムスも「そうね」と笑い返すが、セントは何かに気付くとその表情を落胆の方に向けながら呟いた。 「しかし、その平和もつかの間でしたって。俺はどこかの詩人かってぇの」 「え?」 セントがそう呟き、リムスが聞き返す前に周りに明らかにガラの悪そうな男達が現れる。「デジャヴってのを感じたのは初めてだ……」とセントが皮肉っぽく呟き、リムスも頷くが、男は気にもとめずに言う。 「ロイ・スウェンだな?」 「? ああ。だがそれがどうした?」 男の言葉にロイは懐のナイフに手をかけながら頷く、と別の男が返した。 「俺たちと一緒に来てもらおうか、幻影の狂戦士よ」 「……断る、俺はもうあの世界からは手を退いたんだ」 男の言葉にロイは顔をしかめながら言う、がまた別の男が言った。 「それはおもしれぇ、俺ら[黒き牙]を敵に回すとはな」 黒き牙、確かこの手一帯をしめようとしてるヤクザの名前だ。何だかんだで裏の世界に詳しいセントがそう思いながらリムスを守るように立っていると、ロイはまだ調子を崩さずに言った。 「それがどうした? 喧嘩を売るってんなら買うぜ。幻影の狂戦士の名は伊達じゃねえんだ」 ロイはすでにナイフを抜いており、その言葉を聞くと白い服を着た、ヤクザの中のリーダーのような男が口を開いた。 「それは恐ろしい。ですが、あなた以外の一般人ならば我々にも勝ち目はありましょう。例えばあなたの保護者である叔父や叔母などなら」 「っ! てめえ! 叔父さんと叔母さんに手を出すな!!」 その言葉を聞いた瞬間ロイは表情を一変して叫び、そのリーダーがにやっと笑うとロイは歯軋りをして口を開いた。 「……分かった、ついて行く……だから叔父さんにも叔母さんにも、こいつらにも手を出さないでくれ……頼む」 「いいでしょう、ではこちらへ」 リーダーが頷いてそう言うとロイはヤクザ側に歩いて行き、それからリーダーが言った。 「やはり君はこちらがお似合いだよ。人を殺した暗き闇の者はね」 「「「……」」」 男はわざわざセント達に聞こえるように言うが、セント、リムス、ロイの三人は黙って顔を見合わせており、それから別れて行った。その間に言葉は一つもない、がリムスはセントが怒っていると言うか何と言うか、そんな状態になっているのに気付いていた。 そして寮に帰り、エレナも少し遅れて帰ってくる、と異常に気付いて口を開いた。 「あれ? ロイは?」 「……悪いけど、聞きてぇことがあるんだ」 その言葉にエレナは「何ですか?」と聞き返し、それからセントが言う。 「ロイの過去だ……人を殺したってのは本当なのか?……」 「っ……」 セントのその言葉を聞いた瞬間エレナは黙り込む、とセントはテーブルを殴りながら怒鳴る。 「本当なんだな!!? 全部説明しろ!!!」 その怒鳴り声は獣の咆哮のごとく、寮内に響き渡り何事かと全員降りてくる。それからセントが落ち着きを取り戻してからエレナが話し出した。 「私も詳しい事は知らないんです……ただ、ロイは昔……えと、セントさんみたいで……その時に何か起きたとかしか……あ」 「どうした?」 エレナは言い終えると同時に何かを思い出したように声をあげ、それにレンが聞くとエレナは頷いて返した。 「その事件を見た人がいます……」 「誰だ!?」 その言葉にセントがいち早く反応し、リムスが落ち着かせがてら殴ってから「続けて」とにこやかに笑って促す。それにエレナは苦笑し、それから表情を真剣なものに戻して言った。 「ロイの不良時代の友達で私にとっても幼馴染の方です、名前はソウシ・セルニア。でも、今はどこにいるのか見当も……セントさん?」 ソウシ、その名前には聞き覚えがあった。あの時に確か、ロイが話していた彼。セントは立ち上がるとエレナを連れて寮から出て行こうとする。 「ちょっとついて来てくれ! 心当たりがあるんだ」 「え? えぇ?」 セントの言葉にエレナは混乱してるように言い、リムスやギィ、セリスも後について走って行った。がレンとシグルスは流石に留守にするわけにもいかず、走り出て行く彼らを見送っていた。 |
カイナ
2008年10月07日(火) 18時52分13秒 公開 ■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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お久しぶりですね。 欲を言うなら、もう少しゆっくりとした展開でも良いと思います。 押し付けがましくなるのですが……例えば今回は伏線から起、承までが一連の流れです。 伏線は夢と言う形で多くを語られないで、すぐに起に移ってしまっています。ちょっともったいないような気がしますね。一話丸々過去の話で語ってしまって良かったかもしれません。 そうすれば、この後主人公チームに解説を与えてくれる人物が現れた時、長ったらしい説明台詞を言わせないで済みますからね。 全体的に流れが速いです。ドラゴンボールZとは言いませんが、もう少し落ち着いた展開でも罰はあたらないと思いますよ。 とにかく新展開。 このストーリーの純然たる主人公セントを離れて、その脇にいる人物にスポットを当てるやり方は良いと思いますね。 とは言え、まだまだ語られていない事が多いので、何とも言えませんが。 一部、恐らく「見当」と思われる表現が「検討」となっていました。 ・「ロイの不良時代の友達で私にとっても幼馴染の方です、名前はソウシ・セルニア。でも、今はどこにいるのか検討も……セントさん?」 ↑の一節です。 |
10点 | アダムスカ | ■2008-10-10 13:14 | ID : pwrTAXbZhaM | |
なんか、この作品の展開方式と言うのかな? 進み方が結構好きですw 分かりやすくて。少しずつ周りの人達の秘密(?)が明らかになっていく感じでしょうか? 結構皆重い過去というか色々な事情ですよね……。 セントは怒ってたようですが、何に対して怒ってたのかな。人殺しの件? 秘密にしてたこと? 連れ去られたこと? んん、どれかな。しかし人殺しとは……、どんな事情だったんでしょうね。悪くないとか、弱かったからとか、色々出てきましたが。 楽しみですね。……あ、やっぱりちょっと展開が早い気もします。こう、叔父さん叔母さんを出されてから着いていくと決断するまでの時間とか? なんか……。まぁ、好みですかね? |
30点 | 風斬疾風 | ■2008-10-08 18:40 | ID : FZ8c8JjDD8U | |
えと、下から二行目の線と→これセントの間違い・・かと・・。 過去の後悔、幻影の狂戦士、影での会話、黒き牙、ソウシ・セルニア。これら(全部なのかな?)がどんな感じで展開されていくのか楽しみですね。 |
30点 | ケルベロス | ■2008-10-07 23:10 | ID : If3qiekeSNg | |
合計 | 70点 |