サモナーズストーリー 19章 |
ここは街のある裏の広場。ここでヤクザの組にはいってしまったロイとこの裏の世界の一人――ソウシはそれぞれの武器を持って睨み合っていた。 「いくぜっ!」 [ああ!] そして沈黙が破られ、ロイがティーグルと共にソウシに突進していく。 「ミノタウロス! お前はティーグルを止めろ!!」 [承知!] ソウシは素早く己の精霊――ミノタウロスに指示をするとハンマーを突き出す、とそこにロイのナイフがあたる。 「甘い! らああぁぁぁ!!!」 「ふっ!」 それと同時にソウシはそれを払いのけてロイにハンマーを叩きつけようとする、がロイはそれを軽やかなフットワークでかわす。召喚士の実力は同等だ。 [あなたが、ソウシさんの精霊ですか……初めましてと言った方がいいでしょうかね?] ティーグルはかぎ爪をミノタウロスに向けて突進していたが、それはあえなく阻まれ、その状態で話し出す、とミノタウロスが返した。 [一応久しぶりだな……初めて会ったのは、あん時だ] [ええ、ぼんやりながら覚えてます。俺とロイの暴走を止めてくれたのはあなたとその主でしたね。感謝してもしきれません] ミノタウロスの言葉にティーグルは苦笑しながら返す。とミノタウロスが問うた。 [だったらなんでこんなことするんだ? 旦那はこんな事をするような人じゃねぇ。あんたも旦那の精霊なら止めてやってくれねえか?] ミノタウロスはティーグルを説得するように言うが、ティーグルは首を横に振るとそれに返した。 [すみませんが、俺は所詮ロイの精霊。ロイの命令には逆らえませんし、逆らう気もありません。残念ながら] ティーグルはそこまで言うと羽を羽ばたかせ、ミノタウロスの手から脱出する。そしてティーグルはミノタウロスの頭上を回りながら飛び、ミノタウロスも身構える。 『……』 リムス達は口を閉じたままだった。ソウシとロイは二人とも対人戦をし慣れている。自分達も精霊での戦いは慣れているが、あそこまで人と戦いあう事はしなかった。があの二人はその彼女たちの常識を外れている。 「すごい……これが、ロイの本気……」 エレナはつい声に出してしまう。がセントだけは口元に手をあて、考えているように二人の戦いを見ていた。 「はああぁぁぁ!!!」 「らああぁぁぁ!!!」 ロイのナイフとソウシのハンマーがぶつかり合う、と所詮ナイフか、ハンマーの衝撃に耐え切れず砕けてしまい、ゴッという打撃音を与えてソウシのハンマーがロイの頭上に打ち込まれ、ロイは額から血を流し、倒れてしまう。 [ロイ!!] [悪いが、隙ありだぁっ!!!] それに焦ったかティーグルは攻撃を休めてしまう。勿論そんな隙をミノタウロスが見逃すはず無く丸太のように太い腕をしならせてティーグルの身体に打ち込んだ。その衝撃にマスターの気絶も手伝い、ティーグルの姿も消える。勝負はあった。 ソウシはハンマーを立てかけると今までそれを見ていたヤクザの幹部――バルスを睨みつける。と彼は相変わらずの笑みを浮かべたまま口を開いた。 「中々の見世物でした。見物料を差し上げることが叶わないことを真に残念に思います」 「てめぇ、ダチに手ぇ出させたこと、タダで済ませられるなんて思っちゃいねえよな?」 ソウシはハンマーを片手で振り回しながらバルスを睨みつける。とバルスはまた笑いながら言う。 「それは恐ろしい事です。では、こちらも精霊を呼び出して対処させていただきましょう」 バルスはそう言うと召喚腕輪を右手につけ、詠唱を始めた。 「……来なさい、マンティコア!!!」 [グオオォォォ!!!] バルスの叫び声に呼応するように現れたのは一頭のライオン、いや、その背中には蝙蝠のような翼が生えており、さらに尻尾にはサソリのものを思わせる一本の針がある。 「さあ、幻影の狂戦士ももはや使い物になりません。この者達を喰らい尽くしてあげましょう」 バルスが笑いながらそう言うとソウシの隣にセントが立ち、言った。 「リムス、エレナ、ギィ。ロイを連れて治療してろ、俺はソウシさんと一緒にこいつを殴る……来い、ワルフ」 セントはそう言い終えるとワルフを召喚する。とバルスは笑いながら言った。 「おやおや? あなたはロイを見捨てたのではないですか? 何を今更」 「俺はダチを見捨てねえよ、なんてかっこいい事言わねぇ。ただてめえがむかつくからぶん殴るだけだ。ロイの弱みを握って脅し、こんな目にあわせる、それが気にいらねぇ。だからてめぇを喰らう。そんだけだ!!!」 セントの叫びは獣の咆哮のごとく、リムス達は慣れていながらもその咆哮に身震いし、ソウシも震えを隠しきれていなかった。するとバルスはにやーっと意地の悪い笑みを浮かべながら言った。 「面白い、ならばあなたのその感情ごと、喰らいつくしてあげなさい! マンティコアよ!!」 「俺を喰らうたぁおもしれぇ。喰らいつくすのはこっちだ! いくぞ! ワルフ!!」 セントは叫び終え突進しながら開いた拳を堅く握り締める、とゴキリと間接が鳴る。その音はセントの咆哮に負けず、獲物を見つけた獣の叫びを表しているかのようだった。 |
カイナ
2008年10月17日(金) 20時11分54秒 公開 ■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | |||||
---|---|---|---|---|---|
ハンマーで頭……力加減がやばかったら気絶じゃすまないような……(汗 怒りのセント……ですかね。次回の戦いの行方はどうなるのか楽しみですね。 |
30点 | ケルベロス | ■2008-10-18 22:55 | ID : If3qiekeSNg | |
前回及び今回へのコメント。 意外にも素早くついた決着、ソウシが勝って。しかしハンマーで頭……、気絶レベルだ……。相当痛いでしょうね。なんだかロイの思いがわかりませんね。 やっぱりセントは恐い系ですよね(謎。次回も戦いで。 それでは。 |
30点 | 風斬疾風 | ■2008-10-18 11:50 | ID : FZ8c8JjDD8U | |
それにしても何故ロイは「幻影の狂戦士」なんて大仰な名前を賜っているのでしょうネ……? 見たところ、極端に速い訳でも、不可視の能力を持っているわけでもないですし。ましてや暴走した事が原因ならともかく、その戦いはとても狂っているようには思えないですね。 まだ何か訳があるのならば興味深い話しです。 今回意外にもソウシが勝利しました……パワー対スピードでは大概はパワーが負けるので、噛ませ犬かともお思いましたが、ロイが本気ではなかったにしろ見事な勝利だと思います。 その代わり、より強そうな相手が出てくるという事になりました。果たして力を合わせたとて、この相当な自信を持つ相手を打ち破ることが出来るのでしょうかね? |
30点 | アダムスカ | ■2008-10-18 08:32 | ID : pwrTAXbZhaM | |
合計 | 90点 |