サモナーズストーリー 20章 |
街の裏、それは光に照らされることもなく闇に覆われた人のいる場所と言っても過言ではない。がその場には不似合いな人間が一人の裏の人間、そしてその精霊と対峙していた。 「ふふふ、我が精霊に勝てるとお思いですか?」 その人間――バルスは自分の着ている白い服を直しながら余裕そうに言う。がそれははったりとかそう言うものではないとセントは感じ取っていた。 「セリア、お前の精霊の力で周りに結界を張ってろ……正直、守りきりながら戦う自信がない」 「あ、はい……来て、リューネ」 セントは相手の精霊――マンティコアから目を離さずに後ろ向けて言う。と一緒に来ていた彼の後輩の一人――セリアは素直に頷いて己の精霊――リューネを召喚した。 リューネは白い羽を優雅に羽ばたかせるとセリアやロイ、リムスにギィの周りに光り輝く結界を張った。これでリムスたちには何の影響もなくなるだろう。セントはそう感じると遠慮無用で行こうと拳を構え、その横でソウシもハンマーを構えた。 「相手は強いですよ、油断しないでくださいね」 「ったりめえだ、あいつらを潰せるほどの実力。舐めてかかる気はねえ」 セントの言葉にソウシは今は上手く結界の方に逃げているものの今まで周りに倒れていた不良を眺めながら言った。そしてワルフとミノタウロスも戦う準備が整うとセントが吼えた。 「一気に仕留めるぞ!!!」 「[[おう!!!]]」 その言葉と共に三人も吼えるとまではいかずとも叫び、セントが一気にマンティコア目掛けて殴りかかった。その拳はまるで獣の牙を思わせ、マンティコアの額に突き刺さる。 [グルル、グォン!!] 「つっ!」 がマンティコアは何も無かったかのようにセントを弾き飛ばし、尻尾に生えた、一本のサソリのものを思わせる針をセント目掛けて突き出す。セントは体勢を立て直したばかりで動けそうにない。流石にセントもヤバイと感じた。が 「らぁっ!」 ソウシがその間に割り込み、手に持ったハンマーでその針を打ち返す。そしてその隙を見てミノタウロスが凄い勢いの右アッパーをマンティコアに打ち込んだ。流石のマンティコアもそれにはたじろぎ、その隙に一旦距離を取る。 「危ねぇ……すいません、ソウシさん」 「別にいい……あいつは本当に手強い。一瞬だろうが気ぃ抜くんじゃねえぞ」 セントが礼を言っている間にもソウシはマンティコアとその後ろにいるバルスを睨みつけていた。するとセントはこくりと頷き、ワルフに指示する。 「あの手で行くぞ!」 [……ああ] あの手、それをワルフはすぐに理解し、頷く。セントは心の中に頼むぞ、と一念をしてからワルフと共に特攻した。いや、ワルフの方が早い。 [グォンッ!] ワルフはマンティコアに牙をむく、がマンティコアは腕をしならせてワルフを払おうとする、がワルフも去る者。上手くかわしてマンティコアの横、左側に回りこんだ。 [グルル] マンティコアはコケにされたと思ってワルフの方を向き、また爪をたてて左前足を振り下ろす、がそれが当たる直前、ワルフの姿が消えてしまった。 [!? グアァッ!] それにマンティコアが焦るのとその身が炎に包まれるのはほぼ同時だった。そしてさらにもの凄い衝撃が左脇腹に突き刺さる。 「らあぁっ!!!」 その人物はセントだった。セントは炎に焦がされることもなく獣の牙を思わせる拳を打ち込む。そしてマンティコアを見ながらにやっと笑い、言った。 「残念だったな獣さんよぉ、俺ぁたくさんの精霊を操れんだ。しまいだ! いけ!! サラマンドラ!!」 [オオォォォ!!!] セントは最後にそう叫ぶと素早く後ろに下がる、と彼の呼び出した紅き悪魔はその炎の勢いを強め、マンティコアを焼き尽くす。 [グオアアァァァ!!!] いや、その炎が消え去った後マンティコアは大きく一吼えした。もう瀕死状態だったが立っている。 「やべえ……」 サラマンドラの炎の反動はある程度を超えると己の身体を焼き尽くすかのように襲ってくる。セントは動けない、がソウシがその横を突っ切った。 「後は任せとけ! いくぞ! ミノタウロス!!」 [承知ぃ!!] ソウシはそう叫びながらミノタウロスに呼びかけ、ミノタウロスも頷いて叫び、マンティコアに殴りかかった。 [ぬぉらああぁぁぁ!!!] 細かい技など何も無い、ただただ体重をかけた右ストレート、単純明快な一撃だ。それにマンティコアがふらつくが、ソウシがさらに追い討ちをかける。 「らぁっ!」 まず右手一本でハンマーを持ち、左手でボディブローのような一撃をマンティコアのアゴにかます。 「ぬんっ!!」 そして次が驚きだった。ソウシはそのまま踏み込んで頭を反らせるとマンティコアの額目掛けて己の額を打ち込む、頭突きを行った。がその一撃は相当なもの、マンティコアは大きくふらつき、その隙を見てソウシはハンマーを振り上げた。 「くたばりやがれぇっ!!!」 その一撃はロイに放ったのとは比べ物にならないくらいに重く、鋭い一撃だった。それは恐らくセントの一撃をも上回っているだろう。 マンティコアはグラリと揺れるとついにその巨体を地面にあずけた。それを見るとセントとソウシは安堵の息を吐く。 「ちょっと待って! 油断しないで!!」 しかし突然リムスの声が響き、二人は「そうだ」と思い出してバルスを見る、するとバルスは懐から真っ黒なカードを取り出した。それを見たリムスは慌てて叫ぶ。 「気をつけて! あれを使ったら精霊は凶暴化するから!!」 「……」 リムスの言葉からセントはそれが何かは分かっていた、恐らくあの時のケルベロスと同じ類のもの。だがそれよりもセントの心に一つの疑問が残っていた、がそれを考える前にソウシが叫ぶ。 「何ボーッとしてやがる!! 来るぞ!!!」 「っと!」 ソウシは先ほど下げたハンマーをもう一度持ち上げながら叫び、ミノタウロスも拳を構える。セントも我に返るとナックルを構え、サラマンドラも戦闘態勢を整えた。 [グアオオォォォン!!!] 目の前にいたのは、瞳に狂気を宿しており、背中の翼は蝙蝠よりも竜を思わせるほど発達し、さらに尻尾には全体にトゲが、さらに先には無数の針が生え広がっているマンティコアの姿だった。 |
カイナ
2008年10月21日(火) 18時21分41秒 公開 ■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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誤字と思われる箇所 『去る者』→『然る者』かと。 誤字という訳ではないですけど、『しまい』→『終い』のほうがいいかと。 二人も言っているんで、いいでしょうね。 『黒いカード』ですか。なんかありそうですねぇ^^; 凶暴化したマンティコア……一体どうなるのか―――次が投稿されているようですが楽しみです。 では、次のほうも読んできます。 |
30点 | ケルベロス | ■2008-10-29 21:02 | ID : 8u0JUU1wUZY | |
んん、同じことを繰り返しそうですが……率直に思った事を書きます。 なんだか台詞が多く、地の文に短文が多かったですね。戦闘という動きのある場面でこそ、地の文は多くなると思います。正直、イマイチ動きが掴みきれませんでした。なんといいましょうか、ターン制の対戦ゲームのような(そこまでは行っていませんが………)微かにそんな印象を受けました。 話としてはまた「黒いカード」の登場。凶暴化して、復活と。精霊本人(人?)の体力などは無視して無理矢理力を上げるものなのでしょうか……? だとしたら恐いですね。勝てるのか、ですね。 |
30点 | 風斬疾風 | ■2008-10-26 20:24 | ID : FZ8c8JjDD8U | |
小説である以上会話文は必要ですが、地の文と会話文が交互に来る程ではありません。まぁ、部分的にと言うくらいなら問題ないと思いますが、全編に渡ってそれが続くのでは、話が間延びして感じてしまいます。 対抗策としては、必要のない台詞を消すことです。例えば、戦闘中はうなり声や叫び声が多くなりがちですが。それらは本当に台詞にする必要があるのでしょうか? つまり、不要な台詞は『○○は雄叫びを上げながら、突進した』と言うように、地の文の中に組み込んでしまいましょう。 こうすることで、文章自体もすっきりしますし。ここで選りすぐられた叫びやうなりは、読者に強烈なイメージを植え付けるでしょう。良かったら意識してみてください。 再び現れた妙な力を使う集団。 ただでさえ強力なマンティコアが更に強化されてしまいましたな。 主人公サイドも無事では済まない様な気がしますが……。 私のほうはと言えば、もう『咎と裁き』も投稿し終わりまして、休憩です。 宜しければ、カイナ様の印象も聞いてみたいと思っております。 是非、お願いいたします。 |
30点 | アダムスカ | ■2008-10-22 21:28 | ID : pwrTAXbZhaM | |
合計 | 90点 |