咎と裁き 第一章 【胎動編】 File.09 《忠誠と謀反》 File.10 《神の墜ちる日》
File.09 忠誠と謀反

「釘宮さん」森田は慎重な動作で廃ビル内を探索する釘宮を見止めると、静かに駆け寄る。
「森田君……良かった、無事だったようね」

 彼女もこちらを見止めると、微笑を湛えて無事を喜んでくれる。

「状況は?」森田が問うと彼女は前方を警戒したまま答える。
「この先に機人がいる……何かを守ってるみたいに動こうとしないわ」

 となると、その一団がヤタノカガミを守っている可能性が高い。

「どうする?」森田は釘宮の意見を聞く。
「私がポイントマンになるわ……付いて来て」彼女はそう言うと腰をかがめたまま身を乗り出す。

 森田も黙ってその後ろに着くと、右手にガバメントを持ち、左手を釘宮の肩に置く。そして、森田は左右と後ろの安全を確認すると釘宮の肩を叩く。彼女は腰をかがめたままゆっくりと歩き出す。森田もその後を付いて歩く、勿論姿勢を低くしたままである。少し進んだ部屋の前で釘宮は止まる、森田もそれに合わせて足を止める。

「(いるわ……数は、恐らく4体)」森田は驚く、機人の数にではない。

 彼女の声が直接体に入り込んでくるのだ。釘宮は口を動かしてはいない、こちらを真っ直ぐに見つめているだけである。何故か金縛りに遭ったように彼女の目から自分の目をそらす事ができない。

「(怖がらないでよく聞いて……敵は入り口の右側に1体、入り口の正面の窓際に1体、部屋の左側の奥に2体固まっているわ)」

 しかし、彼女は何故そんな敵の正確な布陣を把握しているのだろうか。そこで森田は米軍のある兵士の話を思い出す。すると釘宮は森田の思考を読み取ったかのように言う。

「(そこまで知っているなら隠す必要は無いわね……私はESPの試験体、生き物の気配を視覚情報的に感知できる能力を買われて白銀にスカウトされたの)」

 なるほど、しかし……その人生は余り幸福であったとは言いがたいようである。彼女の思念から記憶の一片が流れ込んできた。研究施設で材料として研究される日々、現代の日本でこのような人道に反する行為が行われていたとは驚きである。そして、白銀の設立とそれへの入隊。機人との過酷な戦いの日々……どれを取っても普通の女の子の人生とは言えない。彼女が幾つなのかは知らないが、顔立ちや体つきから言って20代前半である事は間違いない。それにしては余りにも不幸な生涯である。

「(スリーカウントで突入するわ、入り口と正面のを片付けるから。貴方は奥の2体を)」

 森田は無言で頷く、せっかく彼女がテレパスで話してくれているのだ、自分が声を出して気付かれては彼女に申し訳が立たない。

「(それと、私のテレパスは不完全なの……だから相手と目を合わせている時にしか使えない、突入すればテレパスによる交信は出来ないわ、普通に話して)」

 森田は再び頷き返す、彼女はそれを見届けると目を離し。部屋の扉の方向に向き直る。そして右手にP-90を構え、左手を森田に見えるようにかざすと指を3本立てる。指が折られてゆく、1本、2本、3本、次の瞬間彼女は素早く立ち上がると、木製のドアを蹴り開ける。引き戸だったそれは正面に倒れる。彼女は部屋に押し入りながら入り口のすぐ右へ銃を向けてトリガーを引く。壁に寄りすがるようにして1体の機人が息絶える。彼女は他の3体の機人が反応するよりも早く、床を蹴って跳躍し窓際にいた機人に鋭い飛び蹴りを繰り出す。森田はその間、彼女がドアを蹴破って作った入り口から部屋に転がる様に飛び込むと、そのままほふく状態でガバメントを両手で構えると、釘宮を攻撃しようとしている2体の機人の頭部目掛けてトリガーを引く。

 2発の銃声が轟き、それに合わせるかの様に2体の機人が浮く。浮いたのもつかの間、その2体の機人の体は再び地面に打ちつけられる。しかし、彼らは痛みに苦しむ事も、何処か体に異常が無いか心配する必要は無い。彼らの命は既にこの手によって奪われているからである。森田はもう1体の機人、釘宮に強烈な蹴りを見舞われた機人の方を見遣る。彼は窓際に陣取っていた事が災いし窓を破って外に転落する。彼の不幸はそれに留まらない、釘宮はP-90の照準を覗き込むと、落下する機人の頭部を正確に撃ち抜いた。森田も立ち上がり窓際までよってみるが、鈍い音を立てて地面に叩きつけられた彼が再び起き上がることは無かった。

「何とかなったな……」森田はガバメントをホルスターにしまうと、釘宮に向けて言う。
「そうね、それよりもヤタノカガミは?」
「そうだった、あの箱だな……」森田は釘宮に促されるままヤタノカガミを探す。

 そして、部屋の隅、2体の機人が立っていた辺りにそれらしい箱を見つけた。黒地に金の装飾で彩られたその箱は、いかにもな雰囲気を醸し出していた。

「これが……ヤタノカガミか」

 箱から出てきたのは一枚の銅鏡であった。古びた感じではあるが、多少霊性を持っている森田には、この鏡が内包している神力がひしひしと感じられた。触れる事も躊躇われるこの神々しさは本物以外では考えられない。

「本物? ……みたいね」彼女もESP能力者である、恐らくこの鏡の神力を察知しただろう。
「これを破壊すれば、巨大機人は止まる……でも俺達は逆賊、そして日本から神護と霊力が失われる」

 森田は日本を愛していた。それ故に逆賊の汚名と言うものが心に強くのしかかる。釘宮と目を合わせていないため考えを読まれる事は無いが、恐らく相当に酷い顔をしていたのだろう。彼女は気遣わしげな声で言う。

「社長さん達に相談してみたら? もしかしたら戦況がよくなっているかも」

 しかし、森田が躊躇っていると、彼女は更に続ける。

「それに……この際通信を傍受されてもすぐにこの場を離れれば良いわ」

 そう言われて、森田は初めて通信回線を開くとフクスを呼び出した……。



「我が主!」シモンは悲鳴にも似た叫びを上げる。

 シモンが主と仰ぐ巨大なメタリアンが打ち倒されたためだ。ダメージは致命的なものではないが、再生には数十分ほどかかる。その間に戦線を押し戻される事は必至だろう。何よりも、メタリアンの希望である彼が土をつけられたとなれば兵士達の士気にも影響する。それは恐らく、戦闘を継続する事が困難なほどにである。

「どうします……シモン」アンデレが訊いてくる、彼の目はそれでも絶望には染まっていない。
「決まっています、我々2人で主の再生までの時間を稼ぐのです」
「了解です、シモン」彼は笑って頷くと、コートの内側から何本もの投げナイフを取り出す。
「行きますよ!」シモンは行ってから、身を隠していた物陰を飛び出す。

 こちらに気付いた兵士が発砲しようとするが、それよりも早くシモンは彼の眉間に銃弾を打ち込む。AKの弾はとうに切れ、愛用のワルサーP38を抜く羽目になってしまった。乱戦で拳銃は心もとないが、並みの兵士になら負けるつもりは無かった。異変を感じ取った兵士達が次々と襲い掛かってくるが、それらはアンデレの操る投げナイフによって、額を、喉を貫かれて苦悶の内に息絶える。

「どぁぁぁぁ!」車の陰から1人の人間が飛びかかってくる。

 完全に不意を突かれてしまった、手には光子剣、黒い作業服に銀色の隊証が胸に光る。白銀である。我々メタリアンを狩るためだけに組織された戦闘集団。この距離では銃での攻撃は不可能、後でアンデレがナイフを構えるのが分かったが、それよりも早く、コートの内側から白銀の隊員から奪った光子剣を取り出すとスイッチを入れて光刃を形成する。恐らく通常のメタリアンならばやられていただろう、彼の不運は自分が通常のメタリアンとは違ったと言う事である。能力的なこともあるが、簡単にやられるわけにはいかないと言う責任もあった。その全てが自分に力を与える。

「うわぁぁぁ!」彼は情けない声で叫ぶ。

 シモンは人間の叫び声が嫌いだった、死ぬ前に情けなく命乞いをするこの生き物も嫌いであった。どうして死ぬと分かっていながら悪あがきをするのだろうか、自分なら最期の時は潔く心穏やかに迎えたいものだが。例え、憎き人間に胸を打ち抜かれる様な死であったとしても。シモンは上段から振り下ろされた光子剣を同じ光子剣で受け止める。彼は奇襲失敗に混乱した様子で縦横に剣を振り回すが、実に無駄が多い。なんなく捌くと、彼の右腕ごと光子剣を吹き飛ばす。彼は右腕を押さえ、痛みと恐怖に悶えていた。苦しみが続くのは敵とは言え哀れなので、すぐに首も切り落として苦しみから解放してやる。彼は特に礼を言うでもなくその場に崩れ落ちた。

「お見事ですシモン」アンデレがナイフをしまって賛辞を贈ってくる。
「大した事はありません、今までもっと恐ろしい相手と戦ってきましたから」

 今日は、彼とも決着をつけなければならないかもしれないとシモンは思った。

「いたぞ! 機人の親玉だ!」人間の兵士の下品な声が響き渡る。

 声の方に目を向けると5、6人の兵士がこちらを見止めて銃を構えている。足を屈めてためを作ると少し前へ跳躍する、彼らには真似の出来ない芸当だろう……一部を除いてではあるが。兵士達は余りに高く飛び上がる目標に虚を突かれたのだろうか。まばらに銃を乱射する、たまに身をかすめる良い当たりもあるが、その殆どは闇夜に吸い込まれていった。飛び上がって数秒、この星に存在する重力と言う力に引かれて体が再び地面に接近する。光子剣を構えて着地と同時に1人の兵士を頭から股間まで一刀両断する。縦横に剣を振るい更に3人の兵士を切り刻むと、残った2人の兵士は攻撃の態勢を整えていた。しかし、惜しむらくは自分が独りではなかった事。彼らは短いうめき声を上げると、こちら側……彼らから見れば前方につんのめる様に倒れる。その後頭部には短いナイフが1本ずつ突き刺さっていた。

「ありがとうアンデレ」シモンは礼を言うと更に戦線を押し上げるべく、歩き出す。

 彼、アンデレはどういたしましてと、軽く返すと、シモンの後についてくる。



「一郎、竹藤君、社長、森田君から通信です」

 巨大な機人を打ち倒した事で、一端防壁展開の任から逃れていたが、今度は忙しい通信情報管理の仕事に戻っていた藤原が言う。石田が欲しがったので、藤原はその言葉に従って回線を石田に回す。彼は通信回線を開くと森田に問いかける。

「俺だ、どうした森田!」
「ヤタノカガミの回収に成功しました、破壊しますか?」

 回線を拾って聞いていると、森田は相当悩んだ挙句連絡してきたようだ。声に疲労と言うより、苦痛が感じられる。ヤタノカガミを破壊して自分にもたらされるものの重さに耐えられなかったのだろう。無理も無い、彼はタッグネームそのままの人間……《Patriot(愛国者)》なのだから。

「その必要は無い、巨大機人は打ち倒された」

 石田がそう答えると、森田は喜ぶよりも前に驚いた。

「何ですって!? どうやってあんな化け物を!」
「後で説明してやる。森田、とにかくすぐにヤタノカガミを持って帰投しろ」

 森田は一言「了解」と言い残すと、向こうから通信を切った。傍受を恐れたのだろうか。しかし、いまさら傍受したとして、もはや機人達に森田の追撃に回すほどの戦力が残っているかどうかは疑わしい。今もまた戦線が前方に押し上げ……。齋藤は絶句する。

「何だ? 連中は何で後退するんだ!」

 見れば、やっと押し上げた前線から陸自、白銀、PMCと問わず兵士達がどんどんと逃げ帰ってくる。それぞれ叫び声や弱音には一定の個性が見受けられるが、その顔に張り付いているのはいずれも恐怖であった。巨大機人が倒れた今、何を恐れるのだろうか。齋藤は首を傾げてしまう。しかし、突如脳天を電撃が貫く。本当に電気が流れた訳ではないが、肌が粟立つ。この感覚は以前にも何度か感じたことがある。誰か知った顔が近づいてきている、それも本来なら余り会いたくない知り合いがである。この悪寒は紛れも無く《彼》と相対した時に感じるものある。

「やっと、ご登場か……」
「ん? 何か言ったか?」

 自分の呟きを拾ったようで、石田が訊いてくる。

「決着をつける時が来たんですよ」

 石田に向けて言うと、齋藤はフクスの天井によじ登り、高く飛び上がるとアスファルトの上に着地する。

「竹藤、お前の力も要りそうだ……ついて来てくれ」

 竹藤に言うと、彼も深刻な顔で頷いてフクスを飛び降りる。石田も何かを悟ったようで、ただ一言「気をつけてな」と言うとM14を構える。正面に目を戻すと、白いコートを羽織った機人と、黒いコートを羽織った機人がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。その後を11人の機人が付いて歩く。今まで算を乱して逃げる人間の兵士を見ていたせいか、やけにその姿が眩しく輝いて見えた。事実彼らは戦闘で破れた衣類からはみ出て見える表皮が、月の光を受けて銀色に輝いているのだが。

「よぉ、シモン……自ら前線に出てくるとは、相当切迫しているようだな」

 齋藤は機人の一団の前に立ちふさがると、機人達の先頭に立つ男……シモン=ペトロに向けて言う。彼はその言葉を受けると、足を止める。それにあわせて黒いコートの男と後に続く機人達も足を止める。

「今日が最後の戦いです、私も命を出し惜しみするわけにはいかないのですよ」
「やけにシリアスだな、らしくない……兵士を駒としか見ていないお前が英雄気取りか」
「貴様ぁ! シモンへのそれ以上の侮辱は許さんぞ!」

 隣の黒いコートを羽織った男が激昂する。齋藤は一瞬混乱する、自我があるのかこの男にも。そうなれば、恐らく多少とは言え後の均一化された連中にもその芽生えがあるのだろうか。黒いコートの男は腰のホルスターから数本の投げナイフを取り出すと、扇状に持ち両手を構える。何かあればすぐに投げると言う事だろう。

「良い駒を持っているようだな……」
「駒ではない! 同胞達を愚弄するつもりならばミストガン……貴方と言えどただでは置かない」

 今度はシモンが強い口調で自分の言葉を否定する。ますます訳がわからない、今まで戦いの中で出来上がってしまったシモン像が音を立てて崩れる。目の前にいるのは誰だ? これでは冷酷なテロリストではなく、革命の英雄である。

「何にせよ、俺達の生存圏へのこれ以上の蹂躙を許すわけにはいかない」
「では、力でもって押し通るまでです」
「出来るかな?」
「やらなければならないのです、私は……」

 シモンはそう言い残すと。足を屈めてためを作り、高く飛び上がる。空中から彼は得物のワルサーのトリガーを引く、上からの銃撃を受け、齋藤も足に霊力を集中して飛び上がる。

「シモォォォン!」ホルスターからSAAを抜くとシモンの額を目掛けてトリガーを引く。
「まだです!」シモンも恐らくこちらの額に銃口を向けているのだろう、彼も銃のトリガーを引く。

 ほぼ同時に銃声が鳴り響く。しかし、放たれた銃弾がお互いの額を貫くことは無かった。頬を銃弾がかすめる感覚に全身の毛が逆立つ。この緊張感は命を懸けた実践でしか味わえない。そのままお互いにマガジンが空になるほど撃ち合ったが、空中である事もあり、互いに命中する事は無かった。シモンはビルの屋上に着地し、自分もその近くに着地する。すぐに互いに物陰に身を潜め相手の動向を警戒する。

「大変ですねぇ! リボルバー拳銃の装弾は」

 シモンが物陰から大声で脅かしてくる。自分はもうマガジンの交換を終えたと言う意思表示だろうか。しかし、自分も伊達にこの銃を使い続けている訳ではない。銃身の下についている排莢用のコックを上下させ、素早く一発一発空の薬莢を抜き出す。そして、新しい銃弾を装填口を開いてシリンダーの中に一発ずつ送り込む。

「舐めるなよ、俺のリロードは革命だ!」

 戦いを彩るには陶酔的な台詞が足りない、齋藤は学生の頃好きだったゲームのキャラクターの台詞を引用しながら、シモンの余裕綽々と言った態度に反抗する。

「面白い! その強がりがどこまで持つか試して差し上げましょう」

 ほぼ同時に物陰を飛び出すと、円を描くように動きながら互いに撃ち合う。

「ぬぅぅぅぅ!」身をかすめる銃弾を恐れる事無くシモンはトリガーを引き続ける。

「うぉぉぉぉ!」それはこちらも同じ事であるが。

 お互いに必殺の念を込めた銃弾を撃つ。それらは主の意思に反して相手の体を貫くことは無かった。しかし、両者の中心でぶつかりはじける。本来大したエネルギー量ではないが、互いの殺意を銃弾に乗せた両者の銃弾はぶつかり合いはじける事で激しい閃光と突風を引き起こす。

「うぉ!」

 齋藤は腕で体を庇う。見ればシモンもその様にし、大きなエネルギーの奔流からその体を防御していた。このままの戦いを続ければいつか、エネルギーの奔流に巻き込まれ重傷を負うか分かったものではない。少し危険が大きいと判断した齋藤は、手元でSAAを3回転程させてホルスターに収め、代わりに霊子刀の出力デバイスを取り出して起動する。低い唸り声を上げて小さな筒から青白い光の柱が形成される。

「貴方と刃を交えるのは初めてですね」

 見れば、シモンも銃をホルスターに戻し、小さな筒型の機械のスイッチを入れ。金色の光刃をもつ剣を構える。光子剣である、霊子刀が人間の内包する霊力を動力源とし、粒子の高速振動で原子の結合を弛緩させて物体を切断する仕組みなのに対して。光子剣は電気を動力とし、光を出力デバイスの中でクリスタルによって光を集中し、高熱を持つ光の柱を形成する。その光刃によって物体を溶断するのが光子剣の仕組みである。一般には出回っていないが、竹藤が総務省のデータベースにハッキングして設計図を手に入れた。もっともSSSでは竹藤以外光子剣を使っている者はいないのだが。

「そうだったか?」
「そうですとも」

 シモンには何処かいつもの飄々とした調子が戻っていた。彼は大げさに両腕を左右に開いてみせる。

「そうか」齋藤は短く言うと、シモンに向けて背を向ける。

 不審に思ったのだろう、彼は光子剣を構えたまま少しこちらに歩み寄る。その足音が3歩分響いた所で、齋藤は足に霊力を集中させて高く飛び上がる。そのまま空中で体を後に一回転させると、シモンの背後に着地する。少し遠すぎたと思った齋藤は、一歩踏み込んで上段からシモンに斬りかかる。シモンは素早い反応で体を翻すと光子剣を振り上げて、蒼白の光刃を受け止める。

「やるな」
「貴方も……」

 辺りには先刻とはうって変わって、光刃同士が弾けあう音が響き渡った。



「ぬぅぅぅぅん!」唸り声と共に男はナイフを投げる。

 竹藤は阿修羅の腕を巧みに操作し、飛んでくる投げナイフを一つずつ迎撃する。恐ろしく正確な攻撃である、CapのCPUをモデルに作成した強力な演算機構を搭載したCPUを積んでいなければ、今頃全身をナイフに貫かれて無残な死体に成り果てていただろう。阿修羅は竹藤の眼鏡に搭載されたカメラからの映像を基に、ナイフの軌道を読み取り4本の腕に握られている光子剣を縦横に振るってそれらを叩き落す。

「面妖な奴! 貴様も戦士なら堂々と自分の力で戦ったらどうだ!」

 機人に面妖と言われるとは思わなかった。確かに、連中から見てもこの背中の機械は、まさしく奇怪に映るだろう……余りにも下らない発想に、自分で自分の士気を落としながら竹藤は相手に、アンデレと言うらしい機人に向き直る。この機人はシモンと同じく自我がかなり発達しているようだ。しかし、その自我は人間のように解放されていない。一族全ての生存のためにその全てを捧げているように見える。

「俺は戦士じゃない! ただのサラリーマンだ!」

 竹藤は両手に持ったショーティー40を連射し、阿修羅の4本の腕を縦横に振り回しながらアンデレに突進する。拳銃から次々と吐き出される銃弾を、彼は尋常ではない速度で右へ左へ、ステップして回避する。射撃の訓練だけは積んだが、尋常の相手ではない。前線に出ても支援が基本である自分にとっては多少分が悪い。しかし、生身の戦闘力を補うために作ったのがこの阿修羅である。今まで数々の戦いで自分の身を救ってくれ、数多の機人を切り裂いてきたこの機械も、最早自分の体である。

「むぉっ!」アンデレは次々とナイフを投げてくるが、その手が止まった。

 どうやら手持ちのナイフが切れたようである。ここが好機とばかりに、竹藤は足に霊力を集中すると、正面に向かって飛ぶ。その間もショーティー40で銃撃を加える事も忘れない。一息に距離をつめる、彼は目を見開いて急な接近に驚いて見せるが。阿修羅の持つ光子剣が彼の体を切り裂く事は無かった。

「ちぃ! 何でその剣は切れないんだ」
「これは我等の技術で精錬された特殊金属で作成した特別なマチェット(鉈)だ! 子供だましの光の剣ごときに切り裂かれたりはしない!」

 アンデレは4本の光子剣が交差する点を見切って、そこを一本のマチェットナイフで受け止める。4対1、押し切れないはずは無いのに、背中の阿修羅のモーターは先ほどから悲鳴のような駆動音を立てて全力で稼動しているのに、どう言う訳かこの1本のマチェットを押し切る事ができない。

「技術者としては一流らしいが、戦士としてはまだまだだな!」

 アンデレは逆に4本の光子剣を押し返す、竹藤は体勢を整えながら反撃する。左上腕の光子剣が横薙ぎにアンデレの首を狙うが、彼は姿勢を低くして光刃の一撃を防ぐ。間髪入れずに右上腕が彼の胴体を横から狙うも、彼は後ろに飛び下がってその一撃をかわす。クロスされた両上腕が、左右に開かれる、光子剣もクロスされた状態からアンデレを切り裂こうと左右に開くがその交差された点をマチェットに受け止められる。

「くそっ! くそっ! 何でだ!」

 阿修羅の両下腕が同時にアンデレに対して突きを繰り出す。彼は前方に高く跳躍しながら姿勢を空中で変えて、竹藤の背を取るように着地する。彼の攻撃を受けるよりも早く阿修羅が反撃する。上腕が右、左と横薙ぎにアンデレを襲うが、彼はマチェットでそれをいなし。あろう事か、阿修羅の右上腕で強度に欠ける手首に一撃を加える。無残に飛んだ機械の手首は乾いた音を立てて冷たいアスファルトの上に転がる。

「うわっ! 畜生、何でだ……コイツは!」
「フハハ! 一本獲ったぞ」アンデレは竹藤の弱音を他所に、勝どきを上げる。

 まだ阿修羅の腕は3本ある。守りに入らなければまだまだ勝てる見込みは潰えない。ぐるぐると手首を回して阿修羅の下腕が攻撃を仕掛ける。しかし、生粋の戦士であるアンデレは既にその攻撃パターンを見切りつつあった。本物の戦士を前に竹藤は確実に追い詰められていた。

「だが、負けん!」
「饒舌だぞ、サラリーマン!」

 竹藤は切り落とされた阿修羅の手首から光子剣を拾い上げると、自らアンデレに向けて刃を振るう。パターンに無い攻撃に、一瞬アンデレが後ろに飛んで距離をとる。しかし、彼は打ち落とされていた投げナイフを4本拾い上げると、こちらに向けて投げつけてきた。

「うぐぁ!」右肩に激痛が走る。

 阿修羅の3本の腕は見事にナイフを弾き落としてくれたが、肝心の竹藤の腕はナイフを叩き落す事ができなかった。邪魔する物無く突き進んだナイフは竹藤の右肩に深々と突き刺さった。思わず光子剣を取りこぼす、左腕を傷口にやり出血を抑える、勿論ナイフは抜かない。

「もう後が無いぞ、サラリーマン!」
「うわぁぁぁぁ!」

 アンデレは持ち前の脚力で空を飛ぶように接近してくる、阿修羅の反応速度でも防御できるか微妙だった。何とか左上腕が防御に駆けつけるが、右上腕と同じく手首を一撃されて戦闘力を削がれる。やられるか……一瞬諦めが頭をよぎったが、竹藤は自分の体に妙な感覚が溢れてくるのを感じた。五感を越えた何か、直感を超越した何か。強いて表現するなら第七の感覚。

「ぐぅぅぅ……」

 頭で阿修羅の下腕に動けと命じる。阿修羅のCPUは竹藤の脳とは繋がっていない……と言うより、竹藤は正確に言えば阿修羅を操作していない。阿修羅は自分の判断で戦闘行動を取っているのである、竹藤が例え命令したとしても操作する事はできない。声に出さず念じるだけならば、当たり前だが阿修羅は動かない。阿修羅は機械なのだから……。しかし、驚いた事に阿修羅は動いた。それも竹藤の命令通りにである、アンデレは既に竹藤に肉薄し右腕を振り上げて持っているマチェットを振り下ろしてくる。しかし、竹藤の命令で操られた阿修羅の左下腕が、彼の右肩ごとマチェットを吹き飛ばす。

「何だと! こんなことが……」

 これにはアンデレも予想外だったようで、目を見開き驚きの声を上げる。竹藤の攻撃はそれに留まらなかった、同じく竹藤の命令で操られている阿修羅の右下腕が、光子剣で彼の胸を刺し貫いた。彼は苦悶に満ちた表情を浮かべ、後ずさる。光子剣は抜けてしまったが、相当なダメージを与える事が出来たようである。

「これは……PKか……」

 竹藤は荒くなる呼吸を整えながら自問する。過去に日本を騒がせた超能力と言う力がある、霊力を用いる術とは少し趣を異にするその力は、振れる事無く物体を動かしたり。他人の心に強く働きかけたりする事が出来る。最早忘れ去られた力だと思っていたが、まさかその素養が自分に宿っているとは思わなかった。或いは、死に瀕したことで生存のためにこの体が手に入れたのだろうか。とにかく、情けなくやられることだけはなんとか免れた……。

「まだだ……俺はまだ死んでない!」

 尻餅をついていたアンデレがよろよろと立ち上がる。その言葉通り、その目は闘争心を失ってはいなかった、彼は死んではいなかった。彼は阿修羅の手首が律儀にも握っている光子剣を拾うと、動作確認をして構える。機人に利き腕の概念があるのかは知らないが、恐らく利き腕ではない左腕で。竹藤は、無茶な活動を強いたせいで腕の付け根のジョイントが壊れ、だらりとだらしなく垂れた、阿修羅の下腕を持ち上げる。勿論腕力でではない、今自分が手に入れた新たな力《PK》によってである。

「では、決着といこうか……」

 お互いに距離を測るようにして円を描くように動く。昔の時代劇映画を実演しているように感じられる。実は余りアンデレとの戦いに時間を取ってばかりもいられない。彼らの後についてきた機人は、彼らの命令を受けて町の方々に散ってしまったのだ。急いで彼らを追撃しなければ、士気が低下している今の状況では更なる被害が出てしまう。

「でやぁぁぁぁ!」

 大喝一声、先に戦端を切ったのはアンデレであった。彼は機人自慢の脚力を使って光子剣を構え、一直線に飛んでくる。その突きの破壊力は中世ヨーロッパの騎馬突撃にも匹敵するのではないだろうか。一瞬遅れて竹藤も身構える、光子剣をクロスして構えた完全な防御の型だが策はある。

「はぁっ!」

 短く一喝すると、自分周辺に斥力波が放出される。竹藤を刺し貫く寸前まで接近していたアンデレの体が空中で止まる。急激なPKの使用に耐えられず、体が悲鳴をあげる。強烈な頭痛が襲い、頭の内側から頭蓋骨をハンマーで殴られるような耐え難い苦痛に見舞われる。しかし、アンデレの動きを止めることには成功し。すかさず、右下腕を操って彼の肘から先を切り落とし、左下腕をアッパーカットのように小さく突き上げて、真下からの突きを見舞う。金色の光刃は彼の喉を貫き、アンデレの命を急速に燃焼させる。

「み、見事だ……サラリーマン……」

 彼、アンデレは最後に竹藤に賛辞を贈ると力尽きその場に崩れ落ちる。彼の体が倒れる際に、突き刺さったままであった光子剣が彼を倒れないように支える形になっていたが、彼の首が溶断され光刃が外れると。アンデレの体を支える物は何一つ無くなり、彼は暗い夜空の色を映したかのような漆黒のアスファルトに打ち付けられた。

「や、やったか……恐ろしい相手だった」

 竹藤は全身を襲う激痛と疲労、倦怠感に耐えかねてその場に横たわる。その時、どこか腹に響く地鳴りが辺りを包んだ。その地鳴りはどこか規則的で、何か巨大な人間が歩いているような錯覚を覚える。しかし、こんなに大きな地鳴りを起こせる人間などこの世にいはしない。神話の巨人ならともかくだが、この科学の時代そんなファンタジーはない。そう思った所で、竹藤は自分が一つ重要な事を失念していた事を思い出す。

「まさか!」

 竹藤は最後の力を振り絞って体を起こすと、海岸線のほうに目を遣る。そこには銀色の巨体を揺り動かし、確実にこの二見の町へ歩み来る巨人の姿があった。胸には多少の焦げ痕が残っていたが。それ以外には特に体が欠損しているなどと言う事は無かった。

「化け物め……」

 竹藤は吐き捨てるように言うとその場で仰向けに倒れる。もう指一本動かす力も残っていなかった。



「ストップ……」森田は声を絞って釘宮に停止を促す。

 彼女は、何も言わず立ち止まると、森田の次の言葉を待っていた。

「何かいる……機人かもしれない」
「何?」彼女は怪訝な顔で森田越しに物陰から奥を見る。

 彼女の頭が森田の顔の下に来る、花のような甘い香りが漂い、一瞬気が緩むが。彼女の言葉ですぐに現実に引き戻される。

「機人よ……しかも、会話が出来るレベル」

 森田も少し顔を覗けて2体の機人を観察するが、どうも言い争っているようにも見える。
 気付けば森田も、そして釘宮もその声に聞き耳を立てていた。


「それは出来ない……シモンを裏切る事になる」

 メタリアンの幹部用に考案された戦闘用ボディスーツを着たこの男は、自分の申し出に何としても首を縦に振ろうとしない。シモンの考えでは、メタリアンはこのまま全滅するしかない。伝え聞いた話では最後の切り札であるメタトロンも撃破されたと言うではないか。あの超戦力を欠いた今、我々メタリアンになんの対抗手段があると言うのだろう。

「良いかヨハネ、我々メタリアンが生き延びるには、人間達に同化するしかない。連中に化ける術だってもうすぐ見つかりそうじゃないか……肌の色を変え、頭髪を構築する事ができれば連中に化けるなんて簡単な事だ」

 メタリアンは日々進化を続けて来た種族である。微生物から半人形を取るのに2年でこぎつけた、このままゆけば人間よりも優れた種になるのはもうすぐだろう。だからこそ、それまでの期間をより安全に過ごす必要がある。無駄に人間と争って個体数を減らす事はできない。メタリアンはどうやって生まれるのか、どうやって数を増やすのかはまだ分かっていないのだから。

「それはそうだが、人間は狡猾で残虐な種族だ……その中で生き延びるには我々の生存圏を確保する必要がある。我々だけの国家を作る必要があるんだよ」

 尚も考えを変えようとしない男に、段々と嫌気がさしてくる。シモンの言う事は絶対じゃない、彼の作戦で命を落とした同胞も1人や2人ではない。もはや強攻策で生き残れるほどメタリアンの人口は多くない。今回の力押しが失敗すれば、メタリアンは白銀とか言う組織に壊滅させられてしまうだろう。それはシモンとて本意ではないはずである。

「俺に賛同してくれた同胞もいる、まだ10数人だが。お前が加わってくれればきっと更に増える」
「何だと! お前は謀反を起こす気か! 今のは聞かなかった事にしておいてやる。妙な考えは起こさずにシモンの作戦に従うんだ……ヤタノカガミはもう無かった、同胞の命もな」

 彼はそう言って、ヤタノカガミを奪った人間の捜索を再開する。仕方が無い、このタイプのメタリアンには何を言っても無駄だ……。せっかく手に入れた知能を使おうともしない、まだメタリアンの数は人間に対して少なすぎる。衆寡敵せず、どんなに策を弄しても圧倒的な物量の前に正面からぶつかっては勝てるわけが無い。こんな愚か者達のためにメタリアンが絶滅の危機に瀕するのは我慢なら無い。自分とてこのような手段は取りたくないが、これも一族のため。

「シモン、すまない……」


「あいつ……仲間を……」

 言い争っているように見えた機人達は、一方が背を向けたところでもう一方がその機人の後頭部を銃で撃ち抜いた。恐らく意見が合わず、撃った方の計画の上で何らかの障害になると考えられたから、彼は消されたのだろう。わずかに聞こえた会話の内容から推察すれば、機人の中にも反戦派と徹底抗戦派と言う派閥があるようだ。撃った方は反戦派であり、人間に対して正面から戦いを挑むのは得策ではないと思っている。撃たれた方は徹底抗戦派であり、人間に対して武力蜂起し、武力によって自分達の生存圏を勝ち得ようとしているらしい。

 自らの同胞を始末した機人は、辺りを確認し。かつて同胞だった者の亡骸を物陰に隠すと、戦火の広がる海岸線のほうへと消えて行った。森田は彼が完全に去ったのを確認し、ゆっくりと物陰を出る。更に周囲の安全を確認すると、手で釘宮に合図する。その合図を受けて釘宮もゆっくりと物陰を出る。その手にはヤタノカガミの入った箱が握られている。

「どうやら敵も一枚岩ではないらしい」森田は釘宮をむけて言う。
「そうね、ヤタノカガミが奪取されたとなれば、彼らにもかなりの動揺を誘えると思うわ」
「うん、そのためにも早くフクスに戻ろう」

 釘宮は無言で頷くと、先に進んで進路を確保する森田の後を付いて足音も立てずに夜の町を駆ける。しばらく進んだ所で、単体で行動する機人を発見する。幸いにもまだこちらには気付いていないようで、何かを探すように首を巡らせて辺りを見回していた。

「俺がやる……」森田は小声で釘宮に言うと、腰に掛けていた洋弓を構える。

 矢筒から一本の矢を取り出して、漆黒の洋弓に番える。玄を引き絞って、機人の頭に狙いをつけ、相手の動きが一瞬止まった所を見逃さずに右手を離す。電磁反発を利用した矢の加速システムによって通常のアーチェリーの比ではない速度で飛ぶ鋼の矢は、機人の頭部を貫くだけでは飽き足らず。衝突の衝撃力、人の頭とほぼ同じ大きさのそれを粉砕した。訳も分からぬうちに頭部を粉砕された機人は、しばらく立ち尽くしていたが。やがて、声も無くその場に崩れ落ちた。森田はその余りにも凶悪な威力に一人ごちる。

「余り人間には使いたくないな……そんな事にはならないだろうが」

 その光景をただ呆然と見ていた釘宮も、その部分に関しては同意を示す。

「急ごう、まだ次がいるかもしれない」

 森田は釘宮を促すと先を急ぐ、ヤタノカガミ捜索の手がかなり伸びているのを感じたためだ。しかし、そうそう捜索だけに戦力を割ける状況でない事も承知していた。彼、考えの合わない同胞を容赦なく射殺した機人の話では、もはや機人に余剰戦力は残っていないようだった。フクスに向かう途中、斥候と思われる機人を更に2体ほど撃破したが。そんなものよりも森田達を驚愕させたのは、あの巨大機人である。

「あれは……倒されたんじゃあ」

 森田は膝から力が抜けそうになるのを何とか堪えると、その余りの巨大な機人を見上げる。

「再生した……の?」

 釘宮が呟く、その声は恐怖からか、あの巨体の圧力に気圧されたのか、わずかに震えていた。

「とにかく、ヤタノカガミを社長に届ける。付いてきて」

 言うが早いか森田は地面を蹴って夜の町を駆ける。彼女も一呼吸遅れて森田についてくる。再生した巨大機人は、先程よりも動きが俊敏であり口から吐き出される光球も、極太の光線に強化されている。化け物ぶりが更に強化されてしまっている。その巨大な化け物の隣を駆け抜けて森田たちは、フクスへ向かう。その途中、森田は1人の人間が倒れているのを見つける。

「竹藤先輩……」

 その竹藤は酷い有様であった。スーツのあちこちが刃物のような物で切り裂かれており、肩には投擲用のナイフが突き刺さっている。阿修羅のほうも上腕は手首から切り落とされており、目立った損傷のない下腕も力なく地面に垂れている。森田は肩のナイフに注意しながら、阿修羅を外すと。竹藤を肩に担ぐ、長身だが肉の無い彼の体は彼に比べて小さい森田でも軽々と持ち上げる事ができた。これでフクスに届けなければならないものが増えた。最早傍受を恐れる事も無いだろう、森田は通信回線を開くとフクスを呼び出す。

「こちら森田。フクス、応答してください」呼びかけにすぐに応じる声がある。
「藤原です。無事ですか?」
「無事です、ヤタノカガミの奪取にも成功しました。もう一つ、竹藤先輩を回収しました」
「彼はどうなったのです! 戦いに出たきり音信不通に……」
「全身に切創を負っています、中でも肩に刺さっているナイフが最も危険かと」
「敵はどうなったのです?」
「分かりませんが、近くに機人の骸が転がっていましたので、撃破には成功したようです」
「分かりました、すぐに帰投してください」

 今は向こうも手が一杯なのだろう、藤原はそれだけ言うと通信を切る。こちらとしてもこの激戦区に長い事留まりたくは無いので、すぐに竹藤を抱えて走る。通信機に内蔵されている探知機では、この道を真っ直ぐ道なりに進んだ所にフクスは停止しているはずである。移動する事は無いだろう、戦線が後退した今、彼らまで下がればそれこそ戦闘を継続できない。

 400mほど走ったところで、閑静な二見の町に似つかわしくない、無骨な車を発見する。その側面鋼板には白いペンキで《SSS》と書かれていた、森田は疲労に悲鳴をあげる足に活を入れて走る。もう少し、後50mほどでフクスに到着すると言う所で、フクスが閃光に包まれた。見れば巨大機人の口と思われる器官から放射された極太の光線が、石田や藤原、木村の遺体の乗るフクス装甲兵員輸送車を直撃していた。

「あ、ああ……」

 森田は竹藤を肩に担いだまま呆然とその場に立ち尽くすしかなかった。彼らを失って、どうやってこの戦いに勝利すればよいのだろうか……。森田は遅れてやってくる衝撃波から腕で顔を守るが、余りの圧力に抗しかねて思わず後に倒れる。そして、光の中心が爆炎に包まれるのを見た。




File.10 神の墜ちる日

 激しい火花を散らして、一対の光刃が閃き合う。傍目に見ればその光景は何処か幻想的で、神秘的な姿に見えるかもしれない。蒼白と金色、一対の光刃は互いに接近と離脱を高速で繰り返す。同じことの繰り返し、反復運動のようなこの不毛な戦いを、彼らはもうかれこれ1時間は繰り返していた。

「何でだ! 何であんな物まで持ち出して人間と敵対する!」

 蒼白の光刃を操る男、黒いスーツ姿の人間はそう絶叫しながら剣を振るう。

「人間は自分と違う物を受け入れられない、それは貴方達の歴史が証明しています!」

 金色の光刃を操る男、独自の技術で作られた戦闘用ボディスーツを身に着けたメタリアンと言う、体組織が金属で構成された種族の一個体は、そう叫びながら相手の繰り出す光刃を光刃で受け止める。

「違う! 戦いの歴史の中でも、人々は協調の歩み寄りを続けてきた!」

 光刃が重なる、互いに力の限り押し合う。鍔迫り合いながらも機人は叫ぶ。

「ならば今は! 人間は我々の存在を知った途端、白銀などと言う我々を虐殺するためだけの組織を設立し。遊戯の感覚で我々を殺すPMCなどと言う戦闘集団の設立を容認した。我々にだって生きる権利はあったはずだ! それを一方的に剥奪する人間達を見ても貴方はそう言えるのですか!」

 人間……齋藤の力が一瞬弱まる。意図した訳ではない、この絶対的な敵と決め付けていた相手の、魂の咆哮が齋藤から戦意とか闘争心とか言われる感情を奪い去ってゆくのだ。鍔迫り合いの拮抗していた力のバランスが崩れ始める。齋藤は確実にこの機人……シモンに押し切られつつあった。自分は間違っていたのか、自分に正義は無いのか、様々な言葉が齋藤の脳裏を駆け巡る。

「そんな理屈……!」

 齋藤は精神の決壊をギリギリの所で押さえ込み、闘志を燃やす。相手の言い分はどうあれ、自分も同胞である人間のためにここで倒れる訳にはいかない。自分が敗れれば少なくとも戦火は拡大し闘争は継続する。それは人々の平穏な生活にとって決してメリットにはならない……そして何より。

「正義は私にあります、私は全てのメタリアンのために負ける訳には行かないのです! 背負っている物の重さが違うのです!」

 シモンは光刃を縦横に振りながら咆哮する。齋藤は今までどの機人からも覇気を感じたことは無かった……霊力を戦闘のために燃やす事で生まれる覇気。それは人間だけの特権だと思っていた。しかし、目の前にいる機人が体から放っているのは、紛れも無く覇気。つまり、奴らにも古の神の力の一片を有しているという事なのだろうか。そうなれば、自分達と機人達と一体何が違うのだろうか。もしやすれば人間と機人に差は無いのかもしれない、同じ神を祖とする同胞なのかもしれない。そう考え至った時に、齋藤の体から全ての戦闘意欲が無くなる。足は萎え、腕は力を失う。恐らくこのままシモンの光刃にかかるだけだろう。

「くっ……」

 シモンの強烈な一撃で守りを破られる。齋藤は大きくバランスを崩すが、片膝を突いて何とかバランスを取る。が、それも遅すぎた……齋藤が体勢を立て直す時間があれば、シモンは齋藤に光刃を突きつけることが出来た。

「あっけない最期ですね……ミストガン」

 シモンはこちらの喉元に金色の光刃を突きつけて言う。死ぬのか……諦めが脳裏をよぎる。いや、この様な不毛な戦いに身を投じるくらいならば、この場で斬られた方が楽なのかもしれない。金色の光刃が迫る。齋藤は目を閉じて最期の時を待ったが、精神を支配する諦めや絶望、悔恨と言った負の感情を割って、女性の声が響く。

「ふんっ! 俺はまだ死ぬ訳にはいかなかった」

 齋藤は素早く蒼白の光刃を振り抜くと、シモンが打ち下ろす金色の光刃を受け止める。

「ほぅ……一度は消えかかった貴方の覇気が息を吹き返しましたね」

 シモンはさして驚いた様子も無く、淡々と状況を述べる。彼の言う通り、自分の闘志は一度燃え尽きた。戦いの不毛さに疲れ果てて戦う事を放棄しようとした。しかし、シモンに背負う物があるように、今自分は人間の平穏を背負っている。自分独りのわがままで戦いを放棄して良い訳が無かった。そして何より、自分は彼女のためにもここで倒れる訳にはいかなかった。自分が死ねばきっと泣くだろう、そうさせるのは本意ではない。泥にまみれても、悪を成しても自分は生きなくてはならない。それはきっとエゴだろう。しかし、そのエゴで結果的に救われる人々がいるならば。

「俺は敢えて悪を成す!」

 霊子刀のエネルギー供給デバイスが悲鳴をあげる。霊子刀が構成する青白い光の柱は、基本的に蛍光灯くらいの太さである。しかし、闘志を眼下に燃える町を舐める炎の如くたぎらせる齋藤の持つ霊子刀は、本来の大きさをはるかに凌駕したものとなった。その太さと長さはまるで電信柱をそのまま持っているような錯覚さえ受ける。

「くっ……そうでなくてはっ!」

 齋藤はシモンの操る光刃を弾くと、横薙ぎにその規格外の光刃を振りぬいた。シモンは光刃の腹でそれを受け止めるが、その衝撃力は凄まじくシモンはビルの屋上の端まで吹き飛ばされる。

「うわぁぁぁぁ!」

 今度は咆哮ではない。左から振りぬかれた極太の光刃を、再びシモンは受け止めるが。やはり、その衝撃全てを受けきる事はできずに吹き飛ばされる。下は固いアスファルト、恐らくシモンならば墜落しても大したダメージにはならないだろうが、少しは損傷となる。

「がぁぁぁぁ!」

 齋藤は勝利の咆哮を上げる。落下していくシモンは笑っていた、彼にとってはこの命を懸けた戦いも娯楽だったのかもしれない。いや、指揮官になり同胞を手駒として扱わなければならない戦いが、彼にとっては苦痛でしかなかったのかもしれない。あくまでも推論でしかないが。

「止めは刺せなかったか……相変わらず悪運の強いやつだ」

 シモンは固いアスファルトに全身を打ちつけたが、すぐに立ち上がると。こちらを一瞥してから夜の町へと消えて行った。それを見届けると、通信回線を開いて藤原を呼び出す。しかし、いくら待っても応答が無い。奇妙に思った齋藤は何度も名前を呼んでみる。しかし、依然として彼女からの言葉は何一つ返ってこない。胸騒ぎを覚えた齋藤は、一つ背の高いビルの屋上へと飛び移る。

「なっ……あれは」

 見れば、先ほど光球を藤原に弾き返され、それを胸部に直撃し、沈んだと思われていた巨大機人が、再び立ち上がって二見の町を蹂躙していた。齋藤の全身から嫌な汗が噴き出す。すぐにビルの屋上から飛び降りると巨大機人の方向へと走っていく。ビル着地の衝撃を殺すために足に集中した霊力を解除せず、そのまま走る方にも霊力を注ぎ込む。

「(間に合ってくれ……)」

 齋藤は祈るような気持ちを抱きつつ、一路巨大機人へと走った。



「うわぁぁぁぁ!」森田は竹藤を地面に取りこぼし、その場に両膝を突く。

 仲間の乗るフクス装甲兵員輸送車が、得体の知れない巨大機人の放つ極太の光線を浴びて爆炎に包まれたのだ。とても無事であるとは思えない、森田は膝からだけでなく全身から力が抜けていくのを感じながらも、それをどうにも出来ず呆然とその光景を見ている事しか出来なかった。爆炎に包まれても尚、巨大機人は光線を放射し続ける事をやめようとしない。

 もうやめてくれ、森田は心の中で叫ぶ。口に出して言おうにも、唇が震えて上手く言葉を発する事ができない。憤りで熱くたぎった涙が頬を伝うが、全身を貫く悪寒がすぐに涙をぬるいものへと変えてしまう。

「(泣かないで……)」

 聴覚にではなく、直接心に響くような声が聞こえる。森田は咄嗟に釘宮を振り返るが、彼女には何も聞こえていないようで、彼女のテレパスでもないようだった。そもそも、釘宮のテレパスは相手と目を合わせていないと使えないはずである。それに、森田はこの声に聞き覚えがあった……いや、すぐに思いつかなかったのがおかしいのだ。今の声は紛れも無く藤原の声である。心に直接響いてくるとはどう言うことだろう、既に幽霊になってしまったのだろうか。そうだとすれば齋藤がそれを知ったら後を追いかねない。

「見て!」釘宮がフクスの方を指差して叫ぶ。

 森田も振り返ると、相変わらずフクスは極太の光線の照射を受けていたが、徐々にフクスの輪郭が見えてくるようになった。その周囲には円形の防御壁が展開され、光線からフクスの硬質な車体を守っていた。やがて、諦めたように光線の照射が止まるが、衝撃の奔流が辺りをお構いなしに襲う、森田は咄嗟に釘宮に飛びつくと、素早く引き倒して吹き飛んでくる物や瓦礫から彼女を守る。背中に大き目の瓦礫が当たって叫びそうになったが、釘宮の手前、何とかそれだけは我慢した。

「だ、大丈夫……?」

 それでも相当酷い顔をしていたのだろう、釘宮は気遣わしげに声をかけてくる。

「折れては無いよ」

 ぎゅっと瞑っていた目を片方だけ開くと、森田は何とか軽口を叩く事ができた。そこで森田は釘宮が赤い顔をしているのに気付き、飛び上がるように彼女の上からどく。彼女を守るためだったとはいえ、拭えぬ気恥ずかしさを誤魔化す様に森田はフクスの方を見遣る。あれほど、苛烈な攻撃に晒されていたにも関わらず、フクスの車体には傷一つついていなかった。そして、フクスの天井がおもむろに開く。次の瞬間何かが飛び出し、高く舞い上がってから森田の前に着地する。

「無事だったか森田、竹藤も……息はあるようだな」

 その正体は石田であった。彼は普段と同じスーツ姿であったが、その所々は銃弾がかすめたのだろうボロボロに破けていた。彼は巨大機人を睨みつけると、森田の方を向かずに言う。

「森田、あの化け物を倒すぞ」

 森田は一瞬間を置いてから、そのとんでもない提案に反論する。

「何ですって! 無茶ですよ……倒せないから化け物なんですよ!」

 それでも石田は譲ろうとしない。彼は大丈夫だというばかりで、森田はどこからその自信が湧き出てくるのか疑問に思うしかなかった。すると、普段戦闘中はフクスから離れる事の無い藤原までもがそれを降りてこちらに歩いてくる。彼女は竹藤の前で腰を下ろすと、勢いよく肩に刺さっているナイフを引き抜く。抑えられていた血流が解放され、彼女の顔にも噴き出した鮮血が付着する。しかし、藤原は動じる事無く手を傷口に当てると、何か呪文のようなものを紡ぎ始めた。見る見るうちに彼女の手が青白い光に包まれ。彼女の手の隙間から溢れ出ていた出血が止まる。

「とりあえず大丈夫ね」

 竹藤の傷が塞がったのを確認すると、藤原は静かに立ち上がる。そして、石田と同じく町を蹂躙しながらこちらに歩み来る巨大機人を睨みつける。彼女は口にこそ出さなかったが、倒すと言う意思がその眼差しから感じられた。

「どうやってあんな化け物を倒すって言うんです?」

 森田はいい加減気になって石田に問う。

「1本の矢は弱くとも、3本合わされば凄まじい力を生む……分かるな?」

 つまり、彼の言わんとしている事は、力を合わせればあの巨大機人も倒せる……と言うことだろうか。

「しかし……」
「森田、お前の全ての霊力を矢に込めて奴の左肩を撃ち抜け!」

 石田は森田の言葉を遮って言う。森田は突然の言葉に狼狽する、霊力を戦闘に応用するトレーニングは一応積んだものの、まだまだ発展途上と言ったところで、とてもあの巨大な化け物に抗し得るとは考え難かった。しかし、石田はお前なら出来るというばかりで、森田の弱音はどこ吹く風という感じで取り合おうとしない。こうなればもう腹を決めてしましかない、森田は矢筒から一本の矢を取り出すと、漆黒の洋弓につがえる。元々霊媒質な機人の体組織を使用した矢である。霊力を載せる事自体は難しくない。

「南無八幡大菩薩、我国の神明、日光権現宇都宮、那須のゆぜん大明神、願わくばあの巨人の左肩射させてたばせ給え。是を射損ずるものならば、弓きり折り自害して、人にこたび面を向かうべからず。今一度本国へ迎えんと思し召さば、この矢外させ給うな!」

 有名な射手の言葉を、言霊としてつむぎ。その言霊に乗せるように矢に霊力を集中する、矢を取り巻いて螺旋状に霊力が渦巻く。自分でも驚いたが、釘宮は勿論、石田や藤原までもが声を上げて驚いていた。青白い光の筋が渦を巻いて森田の構える矢に巻き付く。極限まで霊力が織り込まれたと感じたところで、玄を引き絞っていた手を離す。リニア機関によって究極まで加速されたそれは、巨大機人の光線もかくやと言うほどの巨大な光の線となり、巨大機人を襲う。彗星のように青白い帯を引きながら飛ぶ矢は、真っ直ぐに巨大機人の左肩を直撃すると、肩の付け根から左腕を吹き飛ばした。

「うわ……出来た」森田自身、余りの威力に少し引いてしまう。
「やるじゃないか森田! よっしゃ、後は任せろ!」

 石田がそう言うが早いか、巨大機人はその真紅の目に怒りの炎を宿らせてこちらを睨みつける。そして、地上のどの生物よりも大きな声量で咆哮すると。その開かれた口から金色の光線を吐きつけてくる。森田が放った矢の1.5倍ほどの太さである。

「ひぃ……」森田と釘宮は息を呑む、石田が何故そんなに平然としていられるのか理解できない。

 すると、光線によって蒸発する運命にある3人の前に藤原が躍り出る。彼女は両手を巨大機人にかざすと、正面から彼の放った極太の光線を受け止める。森田は直撃の瞬間、思わずその場にみっともなく尻餅をついてしまう。しかし、森田が恐れたような「光線が自分達を蒸発させる」という事は無かった。

「うぅ……」見れば藤原が両手をかざして光線に対する障壁を展開しているのが分かる。

 ほんの数秒の出来事だったが、彼女にとっては何十分にも感じられたことだろう。藤原は手をかざしたまま、両手を円を描くように動かす。彼女の前には野球のボール程の大きさの光球が漂っている、見る限り相当量のエネルギーを内包しているようだった。その光球は初めは、火花を散らし不安定な様相だったが、藤原の手の動きに合わせて徐々に安定し。最後には綺麗な新円状の物体へと変化した。彼女はその球を両手で掴むとふぅっと息を吹きかける。すると金色だったその光球は、青白い光の球へと変貌する。

「掌握したのか……」森田は尻餅をついたまま呟く。

 彼女は恐らく、巨大機人の光線を受け止めるだけではなく、それを自分の力で圧縮し小さな球形に押し止めたのだ。更にそれを自分の霊力で侵食し、その全てのエネルギーを自分の物としたのだろう。どうするのかと見ていると藤原はそれを巨大機人に向けて差し出す。差し出すように見えたそれも、どこか突きつけると形容したほうが正しいように感じられる。その証拠に青白い光を放つ光球は、彼女に促されるようにその内に潜めた力を再び解放する。今度は蒼白の光線となったエネルギーが、元々の主である巨大機人の右肩を貫く。森田の攻撃とは威力も規模も比較にならない、もうもうと上がる煙が晴れた時には、巨大機人の右肩から胸の真ん中辺りまでが根こそぎ吹き飛んでいた。勿論右腕は地面に落ち、巨大機人の体は下半身と左の胴体、そして頭部を残すのみとなっていた。

「す、凄い……」森田はそれ以上の言葉が出ないでいた。

 森田はまだ良い方である。釘宮に至っては余りにも非常識な光景に口元を手で押さえて、震えているばかりであった。

「しかし、まだだ……」

 石田が厳しい口調で呟く。まだ、とは何がであろうか。もはやあの機人はかなりのダメージを負ってそうそう攻勢には出れないはずだが。石田の顔は厳しく巨大機人に向けられたままで、歓喜や勝利、油断などといった感情は一切そこには含まれていない様に感ぜられる。

「森田、後は任せたぞ……大丈夫だ、俺はいつでもお前らの傍にある」

 一瞬森田は石田が何を言っているのか分からなかった。

「極めて汚きも滞無ければ穢きとはあらじ、内外の玉垣清浄と申す……はぁぁぁ!」

 石田は言霊と共に手を揺り動かす。すると、両手の間に青白い光の球が生じる。彼は粘土をこねるようにその球を両手の間で転がすように扱う。すると、石田の両腕が青白い光を帯び、血管が脈打つようにその青白い光も脈動する。霊力が球に集中しているのだろう。徐々にその球体は大きさを増す、先ほどの藤原の光球を彷彿とさせるが大きさが段違いである。初め野球ボール程の大きさだったそれは、バスケットボールの大きさを経て。小学校の運動会で使う大玉程の大きさになっている。それほどの大きさになった所で石田はそれを宙に浮かべ、腰を落として足を開くとどっしりと構える。空手家が突きを繰り出す時のような体勢をとると、右腕を引き強烈な掌打を打ち込む。

「うわぁぁぁぁ!」

 石田が巨大な光球に掌打を打ち込んだ瞬間、まるで巨大機人の光線が直撃した時のような衝撃波が周囲に巻き起こる。森田は思い切りその煽りを受けて吹っ飛ぶ。無様に地面を転がって壁に背中を打ちつけた所で止まる、すると前から同じように釘宮が吹き飛んできて、よりにもよって森田の前に突っ込んでくる。

「あ、ごめん……」

 息が詰まるかと言う衝撃の後、釘宮の謝る声が聞こえる。手で制して立ち上がると、石田の方を見遣る。森田は今度は驚きで息をするのも忘れる。彼の右掌から巨大機人の光線の2倍はあろうかという超極太の光線が放射されている。まっすぐに放出された石田の霊力は、巨大な破壊エネルギーの奔流となり。目標となった哀れな巨大機人を襲う。その人知を超えたエネルギーの塊を受けた巨大機人は下半身を残して木っ端微塵に吹き飛ぶ。

「社長!」森田はハッと我に返ると石田の傍に駆け寄る。

 彼は片膝を突いて肩で息をしている。藤原も気遣わしげに傍により、彼の容態を窺う。

「見ろ……奴はまだ再生する」

 石田が息も絶え絶えに巨大機人を指差す。見れば、残った下半身から徐々に木っ端微塵に消し飛んだはずの上半身が徐々に再生しつつある。森田は絶望に駆られた。石田と藤原、この超人的な霊力を持つ2人の攻撃ですら、奴には止めを刺せないのか……人を超える人が勝てないものに、どうやって人が勝てるのだろうか。

「俺の霊力ではこれが限界だ……」
「私も、防壁に全ての霊力を使い果たしてしまいました……もう何もありません」

 藤原は言うが早いかその場にへたり込む。当然だ、あのエネルギー量を独りで防ぎきったのだから、まだ力が残っている方が異常である。森田はもう1発程度ならば撃つ力が残っているが、彼らの攻撃には比べるまでも無い威力である。とてもあの驚異的な生命力を持つ巨人に抗し得るとは思えない。

「やはり……ヤタノカガミを破壊するしか」
「いや、破壊されるのは俺だけで良い……」

 森田の言葉を遮って石田が言う。森田はその言葉に耳を疑う……破壊されるのは自分? どう言う意味だろう。最後の懸けに特攻でも仕掛けようというのだろうか。困惑する森田を他所に石田は言霊をつむぎ始める。

「言ったろう、その必要は無い」

 石田の言霊が完成された時、彼の体自体が青白く発光する。

「社長……先輩! それは……」

 石田の体は徐々に肉体味を失って、何処か幻惑的な青白い発光体へと変化する。それでも、その光の塊は「石田の形」をしていた。

「俺の力ではあれが限界だが……この世界に充満する霊力を使えば、あの程度の相手を沈めるのはどうと言う事は無い。まぁ、そのためには自然と同化する必要があるがな」

 青白い光となった石田の体は、濃霧が強風を受けて霧散するようにその場から消え去った。

「え……えっ?」森田は答えを求めるように藤原を見る。

 彼女は目を伏せて首を横に振るばかりで、森田の求めた答えをもたらすことは無かった。そして、彼女が首を横に振るということは、余り嬉しい結末が待っているとは思えない。例え、あの巨大機人を打ち倒す事が出来たとしても。

「(森田……日本ではな、死んだ人間は神になる。祖先達の集合体である意識に同化してな)」

 今度は石田の声が直接心に響いてくる、森田は思わず辺りを回すが勿論石田はいない。

「(奴を倒すにはこうするしかない……ヤタノカガミの神護を失わずに倒すには……な)」

 そう言葉が響いた時、まだこの場に留まっていた石田の気配は完全に消え去った。その次の瞬間、上半身を失って再生に全力を注ぐ巨大機人の上空に暗雲が立ち込める。とても自然現象には見えない、その黒雲が結集する様は不自然に速かった。まるで自然が誰かの意思に従っているようである。

「しゃ……ちょう……」

 森田は余りにも非常識な光景に目を奪われる。巨大機人の上空に現れた黒雲の中心が凄まじい閃光を放ち、辺り一帯を照らす。その光量は、もう夜も更けきったというくらいなのに、昼間と錯覚させられるほどであった。月の隣に太陽が現れたかのようなその神々しい光景に、森田は言葉も無く魅了された。

「す、凄い……」

 流石の釘宮もそれ以上言葉が出ないようだった。閃光と共に黒雲からは幾筋もの稲妻がほとばしり、満身創痍の巨大機人へ向けて止めとばかりに襲い掛かる。その光景は神話の巨人に何百体の龍が襲い掛かる光景にも見えた。金色に輝く百龍の牙にかかった巨大機人は、再生する事も出来ずあっけなく消滅する。

「勝った……のか……」

 森田は相変わらず尻餅をついたまま、ただ呆気に取られるしかなかった。



「あれは! 巨大機人が墜ちた……」

 持てる全力を使ってフクスへ走っていた齋藤だが、巨大機人が倒される一連の光景を目の当たりにして、足を止めその光景に見入っていた。蒼白の膨大な霊力の奔流が巨大機人の左腕を撃ち落したかと思えば、巨大機人が反撃とばかりに口から金色の光線を吐きつける。しかし、その次の瞬間同じ規模の青白い光線が彼の右腕を吹き飛ばす。そして、最後に機人の光線をはるかに上回る規模の光線が放射され、巨大機人の上半身を粉微塵に粉砕したかと思えば。止めと言わんばかりに、巨大機人の上空に現れた黒雲から眩い光と共に、数百本の稲妻がほとばしり巨大機人のわずかに残った下半身を消滅させた。

「そうです……我々の敗北です」

 齋藤は後ろからの声に振り向くと同時に、ホルスターから抜いたSAAを構える。見れば、ボロボロになった戦闘用ボディスーツを着た機人が、両手を上げて立っていた。誰かと見間違えるわけが無い、先ほどまで自分と命の取り合いをしていた男、機人の一団を率いる男であり、今回の騒乱の首謀者シモン=ペトロである。

「手を下ろせ、今更ケリをつける気はねぇよ」
「それはどうも」シモンは両手を下げると、隣にまで歩み来る。
「隣にまで来て良いとは言ってないがな……」
「それは失礼」言いつつも、シモンは下がる気配が無い。
「で、これからどうするつもりだ……お前の目論見は外れた、計画は御破算だな」
「そうですね、敗軍の将は黙って死ぬものですよ……」
「2歳半の癖に年寄り臭い奴だな」

 機人は、この世界に現れてからまだ2年ほどしか経っていない、それにしては精神的にも肉体的にも成熟している。技術、知識、その他の面においても機人……もといメタリアンたちはかなり高い次元の文明を持っているように見える。とても、この数年の内に進化した生物とは思えない。

「一つ聞いて良いか?」齋藤はシモンの方を向かずに訊く。
「何でしょう」彼もまたこちらをむかずに答える。
「お前達は何者だ……少なくとも、自然界の摂理に従って生まれた生物ではないな」
「フフ、実の所……我々にも自分達が何者かは分からないのですよ」

 齋藤は思わずシモンの顔を覗きこむ、相変わらず気味の悪い笑顔が張り付いている。直情的で武断派なメタリアンの中にあって、何処かペテン師、トリックスターの毛色の強いこの男は、欺瞞と嘘、計略や狡知を好むが、意味の無い嘘をつく男ではない。少なくとも、ここでこの質問に対して嘘を言う事は、何の戦略的アドバンテージにもならない。

「しかし、種の存亡のため……我々は戦わざるを得なかったのです」
「お前のずる賢さならば、人間に取り入る方法もあったはずだ……人間のトップはお前ほど賢くは無いからな」
「ええ、今回の騒乱で人間側のトップも我々を脅威と判断したでしょう」
「何故自分達の首を絞めるような事を……」
「これはテロと言う皮を被った交渉なのですよ、私自身も駒に過ぎないのです」

 テロと言う皮を被った交渉……とはどう言う意味だろう。彼自身も駒とは。この騒乱は「メタリアンの生存圏確保」と言う大義名分の上に起こされたものではないのだろうか? それこそが嘘で、更に何かの計画のための布石。狡知で世の中を渡ってきた齋藤ではあるが、流石に頭が混乱してきた。何が真実で何が虚構なのか、判断が付かなくなってきた。

「逃げなさい」唐突にシモンが言う、その様子は何処か辺りを警戒している風だった。
「何だと?」余りにも突拍子な言葉に齋藤はシモンに訊き返す。

 この場合逃げるのはシモンのほうではないのだろうか? 何故自分に逃げろなどと言うのだろうか。第三勢力に襲われたとしても、自分とシモンならば相手にもならないはずだが。

「これを……」そう言うとシモンは自分の右手で右目をえぐる。
「何をする!」齋藤は奇行に走ったシモンを止めようとするが、それは遅すぎた。

 彼は紅に輝く右目を取り出すとこちらに差し出す。取れという事だろうか……その目玉は人間の物とは違い、何処かルビーのようで気味の悪さは感じない。しかし、シモンは何故こんな物を寄越すのだろうか。意味を量りかねてその目を眺めていると、シモンは右目を齋藤のスーツにねじ込み、背を向けた。

「貴方に託します」シモンはそう言って暗闇へと歩いていく。
「おい、まだ話は……」
「早く、私は最後の役割を果たさなければならないのです」

 シモンは強い口調でそう言い放つ。齋藤は尚も食い下がろうとしたが、暗闇から多くの気配が迫ってきたため、その場の物陰に身を隠す。

「シモン……貴方の負けです、我々とご同行頂きます」

 メタリアンが11人。先頭の男がリーダーらしく、シモンと同じボディスーツを着用している。後の10人の機人は黒いスカルキャップに灰色の柄が散る都市迷彩服を着込み、AKで武装していた。シモンは抵抗する様子も無く、大人しく彼らに従うと、闇に溶ける路地裏へと消えていった。その光景を見届けた齋藤はスーツのポケットに手を突っ込むと、彼の眼孔から取り出された宝石のような目を取り出す。

「シモン……お前は俺に何を求めているんだ」

 齋藤はしばらく紅く輝く眼球を眺めた後、それを握り締め、同じくスーツのポケットにねじ込むと、その場を後にした。



「社長は……石田先輩はどうなったのです?」

 森田は竹藤をフクスの後部に搬送してから、齋藤の帰還を待つ間藤原に問う。彼女は少し躊躇っていたが、やがて覚悟を決めたように息を深く吐き出すと、静かな口調で語り始めた。

「あの時点で、私達にはあの巨大な機人を倒す手段は無かったわ……恐らく、最初に倒れたのはまだ彼が不完全だったから。全身を神力で動かしていた彼には、きっと人間の力では抗し得なかったでしょうね。今、到着したあのミサイルでも」

 森田は憤る。頼みの綱であったシーバスターは、全てが終わった後にのこのこと現れた。しかし、藤原はそのシーバスターの力を持ってしてもあの巨大機人には勝てないと言う。

「森田君……人間は自然には敵わない」
「でも、社長はあの巨大機人を倒したじゃないですか」
「そう、私の力も彼の力も……そして貴方の力も。それらは古の神の力の縮小版に過ぎないわ。でも石田君は自分を生贄に捧げる事で、この世界に充満する神力と融合したの。彼は人の身でありながら神力を手に入れた、その力を以って巨大な機人を消し去ったのね」
「そんな事が……出来るんですか? まるで御伽噺みたい」

 これまで沈黙を保っていた釘宮が口を挟む。確かに、いくら機人の相手が専門とは言っても、彼女達から見れば自分達のやり方はファンタジーだろう。しかし、これは紛れも無く真実。人間が普段目に出来るものが全てではないのだ。

「少し疲れました……」藤原は釘宮の問いに肯定の返事を返した。

 憔悴しきった様子で言葉を交わしていた藤原はそこで力尽きる。駆け寄って脈を確かめると、脈はしっかりとしている。しかし無理も無い、先ほどの戦いで霊力のほぼ全てを注ぎ込んだのだ。それも生身の人間がである、体にかかる負荷は計り知れないだろう。

「俺達が見たことが真実だろ、木村先輩は死んだし、石田先輩は消えた、嘘ならありがたいがな」
「ごめん……」釘宮は一言謝って俯いた。
「いや、良いんだ……」

 それよりも森田はSSSの行く末に一抹の不安を感じていた。機人の武装蜂起はこれで一応の終結を見たといって良いだろう。しかし、そうなると白銀やPMCの必要性は無くなる。これらの後始末はどうなるのだろうか、白銀も各PMCも恐らくは解体、そして口封じがなされるだろう。幾らかの口止め料が貰えるのか……あるいは飴玉の代わりに鉛玉を貰うのか。

「白銀の応援が着いたみたい、私……そろそろ本隊に合流しなきゃ」

 釘宮は外を見て言う、見ればゴミ回収車に偽装した真っ黒なトラックが5台ほど到着していた。その中に混じって高級そうな車が1台、月明かりにその漆黒の車体を輝かせていた。

「そうか、気をつけて」森田は立ち上がると、藤原を安置し、釘宮をフクスのハッチまで送る。
「また……会えるかな?」釘宮はやや躊躇い、少し間を置いてから言う。
「どうかな? 運命を司る神がそう願えば会えるさ」

 我ながらもう少し上手い言い方は出来ないものかと辟易する。こう言う時、あのマカロニ野郎ならば、気障で歯の浮くような台詞を吐いて女性を喜ばせるのだろうが。幸いにも自分にはそこまでは伝染っていなかった様で、安っぽい恋愛映画冴えない主人公が吐くような台詞で釘宮に応じる。釘宮には今の台詞はどんな風に聞こえたのだろう、少なくとも悪いようには取られていないだろう、その証拠に彼女は何も言わずに微笑んだ。そして、ぐいと森田のスーツの右襟を掴むと自らの顔を寄せる。ほんの一瞬の邂逅、唇と唇が合わさるだけの秘めやかなキス。釘宮はすぐに顔を離す、ほんのわずかの時であるが彼女と目が合った。そのまま釘宮は踵を返しハッチを飛び降りると、白銀本隊の方へと向かっていった。

「運命を司る神がそう願えば会えるさ……か、及第点だな」

 突然フクスの天井から聞こえた声にどきりと心臓がはねる。森田が天井を見上げるよりも前に、フクスの開いている後部ハッチの前に見慣れたスーツ姿の男が飛び降りる。

「先輩……いつから上に」森田が唇をわななかせて問うと、彼は意地悪い笑みを浮かべて言う。
「いや、良いんだ……からだよ、このヘタレ野郎が!」
「な、何ですか!」森田は齋藤の余りの剣幕に困惑し、しどろもどろになって言い返す。
「お前は昔からそうだ……そのポテンシャルがあればモノに出来たものを……」

 そう言って齋藤は、やれやれという風に顔を右手で押さえて嘆息する。そして、彼はすぐに立ち直ると、竹藤、藤原の順で容態を見た後運転席に収まる。不思議と齋藤は石田のことを聞こうとはしない……それが森田には逆に不気味に感じられた。

「どこに行くんです?」森田は齋藤に訊く。
「帰るんだよ……SSSにな」齋藤は小さく呟くと、フクスのエンジンを蒸かした。




File.X エピローグ

 平成24年6月16日機人関連の一連の騒乱は終結した。

 伊勢市周辺、二見夫婦岩周辺を全焼する大惨事であったが、民間人への被害は近年立て続けに発生する災害に比べれば軽微なものであった。そして、一連の騒乱は表向きには未然に防がれたテロとされ、その後ユダと名乗る機人がテロの首謀者であるシモンを連行して日本政府と交渉、秘密裏に機人の生存圏を獲得する。勿論その情報は秘匿されていたが、怪我から回復した竹藤は積極的に総務省のデータベースにハッキングし、様々なデータを盗用。公安の追跡を避けるために敢えて信頼度の低い情報として広く世界中に流布した。

 シモンはテロの首謀者として、その目的は公表されなかったが、人間として起訴され。その後、判決は死刑。日本の歴史上でも異例の速さでの死刑執行ではあったが、そのテロ行為の悲惨さ、状況を目の当たりにした国民から異議が持ち上がることは無かった。

 その後、公表されない部分では。機人はその呼称を彼らの要望に沿ってメタリアンと改め、人間社会の一角で小さな社会を築き上げている。メタリアンの脅威は事実上去ったとされ、対メタリアン戦闘を専門とする特殊部隊《白銀》は解散され。PMCもその存在意義を失い、PMCを規制する法案が可決される。しかし、一応の民間防御能力は必要とされ地方に散らばるPMCの一部は民間警備企業として存続した。政府の恩恵に与れなかった多くのPMCは独自に不認可の民間警備企業としての存続を図ったが、政府はその不正な企業を厳しく取り締まった。

 白銀は新たに《白狼》として再編され、かつての同胞であるPMCの名残……不認可の民間警備企業を狩る特殊部隊として新生した。日本には再び平和が訪れ、一時は引き締まっていた国政と国民倫理も平和の到来に伴って再び腐敗していった。

 SSSも木村、石田を失い、PMCとしての機能を喪失しつつあった。新社長として就任した齋藤はSSSの再編のために躍起になって人材を集めている、とはいえ彼の目に留まる人材は中々いないため、その作業は難航している。齋藤によって副社長に指名された竹藤は、相変わらず政府の各省庁のデータベースにハッキングを繰り返し、SSSにとって有益となりえる情報をかき集めている。藤原はしばらく、SSSに顔を出していない。と言うのも、その後齋藤と結婚した藤原は彼の子を腹に宿していた、身重にSSSの重労働を強いるわけにはいかない、と言う事で彼女は齋藤の言葉に従って自宅で安静にしている。つまり実質SSSは3人で運営されている事になる。

 森田はと言えば、あの騒乱以降は術の訓練を集中的に行っている。たまには地下の格納庫で齋藤に霊子刀の相手をさせられるが、最近は齋藤の付き添いとして、方々に出かける事が多くなった。釘宮とはその後会っていない、電話番号は勿論メールアドレスすら交換していないのだから当然と言えば当然であろう。SSSも不認可の民間警備企業である、と言ってもその理由については他とは少し異なるが……幸い事務所の場所は知られていなかったし、表向きは「何でも屋」と言う事になっているので、白狼の手が掛かった事は無い。もしかしたら、いつの日か……釘宮と敵として相対する事になるのかもしれない、その時彼女は自分を敵として攻撃するのだろうか。
アダムスカ
2008年10月27日(月) 22時17分17秒 公開
■この作品の著作権はアダムスカさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 どうも、アダムスカです。

 如何だったでしょうか? これで第一章【胎動編】は幕とさせて頂きます。現在、学業の傍ら、第二章【誕生編】の構想を練っている段階です、発表はもう少し先になると思いますが、ご期待頂けると幸いです。

 最終回と言う事で、2時間スペシャルならぬ2本立てでお送りしました、今回の『咎と裁き』ですが。少々長いです……無理せずゆっくりとストーリーを楽しんで頂けたらと思います。(まぁ、ここに到達した時点でそんな事を言われても……でしょうが:汗)

 それでは、コメント返しとさせて頂きます。

>ケルベロス様
 今回は、導入と言う形の章なので、それほど推理や自分で考える要素は盛り込んでいません。今回打ち立てられた世界観、様々な要素……これが次回の第二章で徐々に語られていく事になると思います。

 異なる思想の戦いと言う、人間が争う根本原因を私なりに描いてみたと思うのですが、如何でしたでしょうか?


>風斬疾風様
 誤字の方、修正させていただきました。

 お褒めに預かり光栄です。エピローグでは敢えて多くは語りませんが、その断片的な情報のピースから色々と考えていただければ幸いです。
 シモンが残した言葉の意味を妄想していただいても結構です。案外ドンピシャに正解するかもしれませんよ?ww

 先日、寮の中庭でサバイバルゲームを行いました。中々本格的に出来まして、楽しいゲームとなりました。まぁ……私自身は大した戦果をあげることができなかったのですがネ;


 以上です、では皆さん。近いうちにまたノシ


 08/10/27 誤字修正

この作品の感想をお寄せください。
 誤字と思われるものの指摘→『振れる事も躊躇われる』これは「触れる」でしょうかね。『人間は自然には叶わない』ここは「敵わない」だと思います。
 いやぁ……長かったです。そして面白かったです。すらすらと読める感じで、かなりの文量なのに意外と早く終わりましたw 読むのに3~40分でしょうかね。
 全体的にシリアスな雰囲気で進んでいって、なんというか、緊迫? 良い言葉が思い浮かばないのですが、凄く良かったです。そして終わりのほうでちょっと笑っちゃいましたね……。マカロニ野郎とヘタレ野郎って言葉に。
 シモンに託された右目、これは何を意味するのでしょうか……。そして次章がとても気になる終わり方。上のと、エピローグで語られた部分などが。とても楽しみにしているので、頑張ってください!
 んんん……、言葉の意味…………。分かりませんね……、一体何を想っていたのか。やはり続きが気になりますw
 サバイバルゲーム……、どんなゲームなのだろう?w
 余韻が良いです。それではっ!
50 風斬疾風 ■2008-10-27 16:43 ID : FZ8c8JjDD8U
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まずは、目に入った誤字です
台詞の「()」のところ最初のほうのテレパス……ですか? の二回目ですね。終りの()が見当たりませんでした。「(」このような感じになってます。

「本物?……みたいね」 のところ、他ではスペースがあったのに、『?』の後のスペースが抜けていました。ちょっと気になったので。

戦線を押し戻される事は必死だろう  ←これのときの『必死』は『必至』のほうが良いかと……、必死でも通じるとは思いますが。

我々メタリアンを駆るためだけに組織された戦闘集団  ←誤字かと。『駆る』→『狩る』かと『刈る』も使えるかと。

まっすぐに放出された石田のの霊力は、  ←『の』が一つ多いです。誤字かと。

と、まぁ、気になった誤字はこのぐらいですかね。


まぁ、読み終えて、感想を二言ほど、『長かった!』『面白かった!』ですかねw

正直に言えば、この二本立ては少々長かったですね。まぁ、三十分ほどかけて読ませていただきました。(途中お手洗いにw)

ストーリーは好きですね。終りのエピローグも個人的に好きな感じです。

戦闘の結果、失くしたもの、得たもの……。それは大きかったのか、小さかったのか、それは物語に出てきた人にしかわからないものなんでしょうね。

導入編で推理などは少なかったのですか? でも自分には推理……というか、整理? が結構難題なんですよね。……あ、これは個人的な能力の問題なので、アダムスカsが気にすることはないと思いますです。

異なる思想の戦いですか。

 先程も書きましたが、とても良いストーリーだったと思いますよ。

 少々読むのと、コメントが遅れてしまいましたけど、第一章【終幕】お疲れ様でした。

 また、次回【第二章】を楽しみにしています。

では長文、乱文失礼。(*・∀・)ノシ
50 ケルベロス ■2008-10-26 23:07 ID : If3qiekeSNg
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