肝試し〜第2話〜
運命の日。

そこに、賢哉の姿があった。
しかし、テンションの低い大介を恐怖のどん底に突き落とす出来事が、この後起こる。

そこに居るのは、まさしく悪魔。
長い触角をヒクヒクさせ、6本の足でカサカサと動き回る。
平べったい体は、脂ぎってテカテカと光っている。
狭い隙間から現れ、人類を恐怖のどん底に突き落とすその奇妙な生き物。その名はゴキブリ(元の名称は、ゴキカブリ。ゴキブリは間違えた奴の言い方が、広まっただけだ)だ。

大介の脳が、全身に指令を出す。
『奴を殺せ』
大介の体はゴキブリの体に向かい、動き出す・・・はずだった。

「嫌だ。俺は逃げたいんだ・・・」
その途端、大介の体はゴキブリの反対側に動き出す。
しかし、脳がまた指令を出す。

『逃げたところで、結果は変わらぬ。いつか貴様は、奴と正々堂々戦うのだ』
手が、ピンとゴキブリの方に向くが、足は反対に動いている。
もはや大介は、賢哉が来たこともどうでもよくなっていた。
ゴキブリから距離が離れたのか、大介の手は元に戻っていた。

大介には特殊能力がある。
目をつぶり、精神を集中させることで、半径30メートルいないにいるゴキブリの位置が、正確にわかるのだ。

大介は、それを『探知』と呼んでいる。
大介は、今近くにゴキブリがいないことを確認すると、安心して授業の準備をする。

放課後、賢哉、大介、大輝、佐藤、桜井、そして女子が連れてきた田中が大介の母親に連れられ、街に向かった。
肝試しの場所を、街にしたのには理由があった。

1つは、広いため長時間楽しめること。
2つ目は、他に肝試しを街でやる人はあまりいないだろうと、予想したためだ。
車の中では、皆眠っていて何事もなく待ちにつく。

街につくと、母親にはいったん帰ってもらい、また12時に迎えに来る。
現在は6時。まだ明るい。

「暗くなるまで待つか。大体7時頃だな」
大輝がそういうと、皆適当な場所に腰を下ろす。
6時半頃だろうか。ビルとビルの狭い通路から、1つの人影が見えてくる。

「ねぇ、あれ人?来ないと思ってたんだ・・・」
佐藤は途中せ言葉を切った。
人の姿を、はっきり捉えることが出来る。
頭から血を流し、服は破れている。

目が虚ろで、口を微妙に開き、何も考えていない様子だった。
そいつらは、こちらへ向かってくる。

「!」
大介が、感じた。悪魔の存在を。
こんな変質者(?)が迫ってきている状態でも、ゴキブリ以上に怖いものはない。
大介はゆっくりと目を閉じた。

4時の方向、28メートルの所に1匹。

4時の方向、28メートル。
あの人物の位置と、同じ位の位置だ。

「あいつ。ゴキブリつけてやがる・・・逃げるぞ」
「あ、ああ」
皆同意し、一斉に走り出す。同時に、奴も走り出す。
速い。怪我人にしては、物凄いスピード。
大介達との距離が、だんだん縮まって行く。

大介達は、十字路に差し掛かった。
田中と大輝が右へ、賢哉と桜井が左へ、大介と佐藤が真っ直ぐへ進んだ。
いまだ、ゴキブリの反応は彼にくっついている。
彼は少し迷ったが、大介と佐藤を追い、真っ直ぐ進む。

「もう・・・無理」
大介は余裕なのだが、佐藤は凄くきつそうだ。
そこに、T字路が見えた。

「お前左に曲がれ!俺があいつを引き連れて右行くから!」
佐藤は小さく頷くと左に曲がった。
狂った人は、大介の目の前まで走ってくる。
その瞬間、大介は右に走る。

狂った人も、追いかけてくる。
しかし、大介の目の前に現れたのは・・・壁。
そこは、行き止まり。
いや。大介の右側の壁。その1メートルくらい高い所に、狭い通路のようなものが見える。

だが、大介なら少し頑張ればそこを抜けられる。
大介は、大きくジャンプし狭い通路に入り込んだ。
大介がその通路を出来るだけはや足で進んでいると、狂った人も追いかけてくるのが音で分かった。

通路をの出口。そこには、行き止まりで迷っている佐藤が見える。
大介はそこで飛び降り、佐藤を連れてT字路のところを曲がり、十字路を右側に進む。

大介から見て右。こっち側にはさっき左へ曲がった桜井と・・・賢哉がいるはず。
賢哉はどうであれ、桜井は判断力が優れているため頼りになる。
しかし、そこにはまたT字路。

分かれるのは危険なため、二人して狂った人を連れて右に進んだ。
右のほうが広いため、桜井なら走りやすい通路を通ると予測したからだ。
しかし、細い方が見つかりにくく、相手をまきやすいという利点もある。

「くそっしつこいな」
まだ追いかけてくる。しかも厄介なことにスピードがゆるんでいない。
もうすぐ捕まる事だろう。

ピギャァァァァ!!!!

甲高い悲鳴が聞こえる。
大介が後ろを見ると、一匹のゴキブリが狂った人の頭皮を食いちぎり、内部からゴキ
ブリを引き出し、噛み砕いた。

「ゴキブリが体内に住みついていたのか・・・」
ゴキブリが狂った人の中に入っていたのなら、ゴキブリの反応が重なっていたのもありえる話だ。

噛み砕かれたゴキブリは小さく、まるで幼生のようだった。
安心していたのもつかの間。すぐさま、そのゴキブリが追いかけてくる。
佐藤と大介は、また走り出す。
曲がり角を曲がると、2つの人影が見える。

「くそっまたあいつらか?」
だが、後ろには凶暴なゴキブリが迫っている。
2人は、戸惑いながらも走り続ける。
2つの人影の正体が、分かってきた。

「田中と大輝だ!」
2人は大介達と合流し、足を止めた。

「3匹のゴキブリが、追ってきてる!」
大輝達の所からも、ゴキブリが追ってきているらしい。
大介達も、今の状況を説明した。
3人とも、恐怖を抑えきれなかった。
と、その時。

「此処。入れそう!」
田中が、ビルの入り口を発見する。
幸運なことに、入り口は開いた。
4人はビルに走りこみ、トイレに向かう。

あのゴキブリはかなりの大きさで、個室に入り鍵を閉めれば、助かりそうな気がした。
しかし、4人はトイレに非常口を発見する。

「非常口から逃げるぞ!」
大輝の声と共に、4人は非常口から逃げ出す。
非常口の扉を抜けると同時に、4人が見たのは、頭から血を流し、服が破れた幼生体の『巣』だ。

巣は、まだ4人に気付いてはいない。
4人は静かに反対側に逃げ出す。

キュビィ!!

そこに現れたのは・・・あのゴキブリ達。
その声に気付いた巣も、必死に追いかけてくる。
正直。4匹のゴキブリに追いかけられるのは、大介にとっては死に等しいものだ。

後方で、1匹のゴキブリが液体を吐き出した。
その液体は、後ろを走っていた佐藤に降りかかる。
佐藤は転び、起き上がろうとしない。

「どうした?」
しかし、喋ろうともしない。
だが、指はピクピクと動いているから、死んではいない。
起こそうとして、大介が佐藤の手に触れた瞬間、大介の右手の感覚が消え去る。

麻痺している。
佐藤は、全身が麻痺している。
ゴキブリと巣は、それでも追いかけてくる。

「おい逃げるぞ!」
大介は、そういうと佐藤を置いて逃げ出す。
2人も追いかけて逃げ出した。
人間は、自分が一番可愛い。自分のためなら、友達も犠牲に出来る。そういうものだ。

ゴキブリは、佐藤の頭に卵を産み付けると、巣となった佐藤の体はムクリと起き上がり、大介達を追いかける。
佐藤のその目は、既に死んでいた。
フルフル男
2008年06月07日(土) 15時45分28秒 公開
■この作品の著作権はフルフル男さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
なんとなく修正はできたものの・・・ホラーではないような気がします。

<生物紹介>
ゴキブリ「成体」
特殊な液体で相手を麻痺させ、卵を産む。
自分たちのなわばりを持ち、自分達の家族以外のゴキブリがなわばりに進入すると攻撃する。

ゴキブリ「幼生体」
成体に頭に産み付けられ、成体になるまでその巣の中ですごし、餌をとる。

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犠牲者お砂糖だけですか。。 50 操り人魚 ■2008-06-28 07:32 ID : X3VGA/8VXOs
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 ……ゴキブリの話? 怖いけど、ホラーなのかなwww でも、想像すると嫌です。
 人の頭を食い破るって、ゴキブリどれ位の大きさなんですか? その描写が無いので、通常サイズだったら無理だと思います。
 友達を見捨てるか……、それはきっと本当の意味での友達じゃないな。と、私は思います。さて、予想でもして見るか。
 
30  風斬疾風 ■2008-06-09 08:02 ID : FZ8c8JjDD8U
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ゴキブリ・・・?

ホラーって言うより・・・・・・・・・・・サバイバル?
30 ケルベロス ■2008-06-08 23:17 ID : 8u0JUU1wUZY
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