サモナーズストーリー 10章 |
「久しぶりだな」 「……ああ」 ここはセント達の世界とはまた別の空間。セントの心の奥の部屋と呼べる場所。セントはここの番人と名乗るもう一人の自分とも言える存在に呼ばれたのか、この空間に来ていた。 「で、何の用だ?」 「やれやれ、ぶしつけだな」 セントの言葉に番人はため息をつくような調子と表情で言う。と真剣な顔つきになってから話し始めた。 「君も見ただろ?チンピラの一人が使ってた精霊」 「ああ、新聞によると、俺たちの目撃情報から考えてあんなに巨大なのは人間が操れる代物じゃないらしいな」 番人の言葉にセントも頷きながら返す、と番人は考えるような表情をしてからセントに言った。 「嫌な予感がするんだ。気を付けた方が良い。」 「……了解。んじゃ俺は行くぜ」 セントはそう言うと立ち上がるが、番人は最後にこう言い残した。 「闇の誘惑――」 「あん?」 セントはその言葉に振り返って言うと、番人は続けた。 「闇の誘惑に気をつけて……占いと考えたらいい。新たな力が目覚めるとも感じる」 「……とりあえず、ありがとうと言っとくよ。それじゃ」 セントがそう言うと番人は微笑み、それと共にセントの意識も遠のいていった。 「……んっ……」 セントはベッドから起き上がると日付けも表示される時計を見た。丁度朝、今回は寝過ごすことは無かったようだ。それから起き上がり、学生服に着替えた。別に何かあるわけではない。忘れてるかもしれないがセント達は一応普通の学生、これはごく普通の情景だ。 それからリムス達も起きだし、全員揃って学校へと行った。 「来た来た……」 「あの人達だ……」 すると学校に着くと同時に自分たちを見つけた生徒たちが噂するように喋り始めた。実はあの大立ち回りは新聞にも取り上げられており、セント達はある意味有名人へとなってしまったのだ。 「……行くか」 セントは苦笑しながら言う、とみんな頷いて教室に入っていった。と教室内でも自分たちに様々な視線が投げかけられる。好奇心、尊敬、恐怖などなど、だがそれは先生が入って来たことでなくなった。 それから放課後、リムスは疲れたような表情で話しかけてきた。 「何なのあれ?人を変な目で見て……」 「あ?何がだ?」 「な、何って……」 セントの言葉にリムスは驚いたように言う、がセントはふっと笑うと外を眺めながら言った。 「別にこんな視線、慣れちまったよ……ガキの頃から受けてんでな……」 「あ……ゴメン……」 セントの言葉にリムスは慌てて謝る。彼の過去を考えてなかった自分の発言を軽率に思いながら、がセントは「ははっ」と笑うと言った。 「なんてな、慣れててもやっぱきついな……悪い悪い、帰ろうぜ」 「う、うん……」 セントの言葉にリムスは頷くが、その後「あっ」と言って手をあわせながら言った。 「ごめん、今日までに図書室に本返さないといけないの忘れてた。ちょっと待ってて」 「本?似合わないな。エレナならともかく」 「うるさい!!」 リムスの言葉にセントが笑いそうになりながら返すがリムスはそれに一喝して返す。 「ははは、中々良いコンビだな」 「確かにそうですね」 「うっせえぞそこ」 その二人を眺めながらロイとエレナが言うが、セントはそれに静かに一喝する。 「えっと、カードにハンコを押して、サインしてっと……本があったのは、ここだったっけ?」 リムスは借りていた本を本棚に戻すと帰ろうとする、がその前に机の上に黒表紙の本があるのを見つけた。 「何これ?[闇の精霊本]?」 リムスは不思議に思いながらその本を見ていたが、何となく明日返せば良いだろうと言う軽い気持ちでその本をカバンに入れて教室に戻っていった。 それからみんな揃って寮に帰っていき、レン達と話をしたりであっという間に日が暮れてしまった。 「……駄目、眠い……」 リムスはベッドに寝転がって図書室にあった本を読んでいたが、睡魔が襲ってきたためその本を横に置いて眠りについた。その本から黒いオーラが昇っていることも知らずに。 [セント!起きろ!!] 「ん、あぁ……ワルフ?」 [ワルフ殿だけではない。我もだ] 「ガーディ?二人揃ってどしたぁ?」 セントが目をこすりながら起き上がるとガーディが言った。 [何やらこの寮から闇の力を感じるのです] 「闇ぃ?何バカな事言ってんだ?寮生の中に闇使いなんて……」 そこまで言うとセントも覚醒した。確かに寮生の中に闇属の精霊使いはいない、だからおかしいのだ。 「どこからか分かるか?」 セントは眠気も無くなった様子で冷静に問う、とガーディが言った。 [部屋の前にまで行かないと分からない。部屋の前まで行けば我の力で闇を感じ取れる] 「……頼むぜ」 セントはそう言うとナックルとレガースを取り出し、取り付けてからこっそり部屋から出た。 それからロイ、レン、ギィの部屋の前を通り、女子部屋の揃っている階にまで足を運んだ。万が一見つかったら一大事だ。 「ガーディ、先に聞く。気のせいじゃないよな?」 [無論] 「気のせいでした。なんて言ったら召喚してボコボコにするから肝に命じとけ」 [はっ] ガーディはセントの意識の中で敬礼を取る。とセントはやれやれと息を吐いて女子階に足を踏み入れた。それからエレナ、シグルス、セリアの部屋の前を通り、気配を念入りに感じていく。とガーディが叫んだ。 [あった!!!] 「つぅっ!?いきなり叫ぶな……」 召喚されていない精霊の声は外には漏れないものの頭の中に響く。叫び声は反射され響く、丁度二日酔いの人は少しの音でも響くのと似たようなものだろう。 セントが頭を押さえながらそう言うとガーディはすまなそうに返す。 [む、すまない……だが気配が見つかった。リムス嬢の部屋からだ] 「へいへい」 セントはそう言うとコンコンと控えめにノックする。が当然ながら返事は無く、セントは少し考えると針金を取り出す。 「ピッキングの技術がこんなとこで役立つとはな……」 セントはため息をつきながら針金を鍵穴に入れていじる、とドアの鍵が開いた。こんな技術、もうこんな使い方はしたくないものだ。セントはそう心の中で呟いた。 [心中お察しいたします] 「怒られたらてめえのせいだからな」 セントはそう心の中の存在に毒付きながらドアを開けた。すると 「ちっ、ワルフ!!!」 我と今の状況を忘れたかのごとく叫んで今の自分の精霊の中で一番素早い相棒を呼び、突進させた。リムスの寝ているベッドの横では黒い服に身を包んだ仔悪魔と呼ぶに相応しい精霊のような者がリムスから何かを吸い取っていたのだ。 [あらら] その精霊はワルフが突進してくることに気付くとひょいっと身をかわす。それからワルフが威嚇してる間にセントがリムスを揺さぶった。 「おい!おい!」 「う……うぅん……セ、セント……むぐっ!?」 リムスはセントがいることに気付くと声を上げようとするが、その前にセントがリムスの口を塞いでから落ち着いて諭すように言う。 「落ち着いて聞け、精霊かは分からないが何者かが侵入してきた。皆を起こすか俺と二人で戦うかの判断はお前に任せる。頼んだぜ!!」 セントはそこまで叫ぶとワルフに指示してその仔悪魔を窓の外に投げ捨てさせ、セントもワルフに乗って飛び降りる。 リムスはそれを暫く眺めていたが、腕輪を取るとすぐに部屋から出て行った。 |
カイナ
2008年07月31日(木) 22時33分43秒 公開 ■この作品の著作権はカイナさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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ごめんね〜。塾で忙しくてさ、中々感想が。 で、女子の階を徘徊する一男子。見つかったら大変だねwww しかし起きたら(起こされたら)目の前にセントが居たリムスの心の中はどうなっているのかな。 多少短いですが、次回に感想を回します………。 |
30点 | 風斬疾風 | ■2008-08-09 19:51 | ID : FZ8c8JjDD8U | |
合計 | 30点 |