サモナーズストーリー 11章
 ここはセント達が生活している寮の中庭。セントはナックルを確かめながら目の前の存在に聞いた。

「んで、てめぇは何だ?」

 その言葉にセントが問うた存在、金髪でまるで水着のような黒い服に身を纏い黒いブーツと肘まで長い黒の手袋をした、女の悪魔と呼ぶのが一番近いだろう存在は言った。

[私はサキュバス、聞いたことないかしら?]

「サキュバス?……あぁ、男の夢に入って命を奪うとか何とかいうアレか。だがリムスは女だぜ?まあ男勝りではあるが」

 セントは隙を見せずに考えながら言う、とサキュバスは笑いながら言った。

[確かにね。でも私は本に封印されてた身、ああやって近くの人の精気を奪って力を取り戻さないと動けなかったのよ]

「動けなかった? 過去形か?」

 セントが気付いたように聞くとサキュバスは今度は冷笑しながら返す。

[そう、封印されてた本からあなたが離してくれたおかげで封印は弱まった。あなたの精気を奪い取れば丁度復活できるわ!]

 その言葉と同時にサキュバスが向かって来るが、セントはそれを軽くかわすと返した。

[あぁ、俺を殺すって見ていいんだな?丁度いいや。こちとら夜に叩き起こされて騒ぎに巻き込まれ、運が悪けりゃ明日の朝先輩たちから叱られるかも知れねえんでな。てめえで軽く早いウサ晴らしといかせてもらおうか!!!]

 セントはそう叫んでサキュバスに高速で殴りかかる。その一撃は岩をも粉砕するかの勢いで向かっていくが、サキュバスは身を翻すとあっさり避けた。

[ふふ、遅いわね]

「ちっ、飛行たぁ厄介な」

 セントは拳を戻しながら言う。サキュバスはセントの言うとおり、背中に付いた黒い翼で宙に飛び上がっていたのだ。そしてサキュバスは笑いながら言う。

[死になさい]

 その言葉と共にサキュバスが腕を振ると、セントは何かを感じ取って素早くその場から離れる、とセントがいたところには真っ黒な矢と見える物が刺さっていた。

[あらあら、いい勘してるわね]

「ガキん頃の賜物って奴だ、それよりいいのか?そっちこそボーっとしてて」

[え?きゃぁっ!?]

 セントの言葉にサキュバスが返すとほぼ同時に、そこに何かが通る。サキュバスは気付いてなかったようだがセントは簡単にそれの正体に気付いていた。

「おせえよリムス。何もたもたしてやがった?」

「うっさいわね、暗くて手間取ってたのよ。あんたこそ精霊召喚しないの?」

 セントの言葉にリムスは返しながら己の精霊であり武器である氷の刀――セルスを構えていた。そしてリムスの言葉にセントは返す。

「あの程度にワルフ呼んでたら身が持たねえっつうの。最低でもお前が来るって分かってたしな。」

「期待しててくれてありがと。いくわよ!」

 リムスの言葉に従うようにセントもサキュバスに向かっていく、がサキュバスは空中で体勢を立て直すとさっきの黒い矢を二人に向けて連射してきた。

「ちっ、近づけねえ」

 セントはその攻撃に進むことが出来ずに悪態をつくが、その後ろでリムスが尋ねる。

「セント、しばらく足止めってできる?」

「あぁ?まあ出来ねぇこたねえが……りょーかい」

 セントはリムスが何か企んでると感づくと不敵な笑みを浮かべて言い、リムスも軽く頷いた。そしてセントは意識を集中する。

「人と獣の狭間の者よ、今ここに現れる事を命ず……ワルフ!」

 そしてセントはワルフを呼び出し、二人でサキュバスへの特攻を行った。

[そんなもので何とかなるとでも?それっ!!]

 サキュバスは笑いながら言い二人目掛けて矢を放つが、セントはワルフの能力で身体能力が上がっている。さっきまではかわすのが精一杯だった矢を簡単にかわすどころか叩き落していた。それにサキュバスが驚いてる間にワルフがサキュバスの背後に回る。

[おりゃっ!]

[きゃっ]

 サキュバスの意識がセントから逸れ、その一瞬をセントは見逃さずにサキュバスに突っ込んだ。そしてサキュバスを引っつかみ。

「うおらぁっ!!」

 掛け声と共にサキュバスを地面に叩きつけた。ゴガッという鈍く痛々しい音が響き、反動でかサキュバスは自分の意識とは関係なく宙に浮かぶ、それを見てセントが叫んだ。

「いいぜっ、やっちまえ!!」

[え……]

 その言葉の意味を知るかのようにサキュバスは前を向く、そこから見えたのはセルスに氷の力を纏わせているリムスの姿だった。

「くらいなさい!零氷斬!!!」

 そしてリムスはサキュバス目掛けて刀を振り切る。その太刀筋からは冷気が噴出し、傷口を凍らせていった。その手応えを感じ取ってリムスは満足いったと言う満面の笑みでセルスを消し、セントもワルフを消した。するとサキュバスが息絶え絶えに言う。

[認めない、認めないわこんなの……こうなったら!]

「なっ!?」

 サキュバスはセントが反応する間もなくセントの胸に右手を突き出した。

[あんたの精気を奪い取ってやる!あんたも道連れよ!!]

「ぐっ、あぁっ……」

「セントォ!!」

 セントは息苦しさと胸から身体中に伝わるかの勢いの痛みを感じていた。それに悶えるが、突如サキュバスの声が聞こえてきた。

[な、何これ!?きゃあぁぁ!!?]

「ぐ……がはっ……」

 セントは突然苦しみがなくなった事を感じ取ると立ち上がる。辺りにはサキュバスの姿がない、見回しているとリムスが尋ねた。

「大丈夫!?ってかサキュバスは?」

「さあな……ん?」

 リムスの言葉に返しながらセントは自分の中に新たな気配を感じる。それはどこかでというかさっきまで感じ取ってた気配だ。セントは何かを察すると召喚を始めた。

「夢の世界への渡し人、今ここに出でん……サキュバス!」

 その言葉と共に現れたのは、さっきまで戦っていた者――サキュバスだった。サキュバスは不服そうな顔をしながら尋ねる。

[んで、これは一体どういうことなの?あんたの精気を吸い取ろうと心に入ったら突然吸い込まれたんだけど?]

「俺が聞きたい、つかこれってサキュバスを俺の新たな精霊としたって事でいいのか?」

「さあ?」

 セントの言葉にリムスは返し、セントは「そうだよなぁ」と言いながら笑う、とサキュバスが怒鳴った。

[そうもこうもないわよ!どうしてくれんのこれ!?]

「知るか、いっそ俺の精霊って事で俺に忠誠でも誓うか?」

 セントはまるで楽しんでるかのようにサキュバスに言う、とサキュバスは諦めたように言った。

[分かったわよ……私だって精霊の端くれ。主人を見つけたら従うのが流儀。あんたに従ってやろうじゃないの]

「そいつはどうも」

 セントは笑いながらサキュバスに返し、サキュバスは敬意の意味を持って深くお辞儀をし、消えていった。それからリムスに言う。

「さて、何だかんだで終わっちまったし、部屋に戻るか」

「そうね……あぁ眠い……おやすみ」

「ああ」

 セントとリムスはそう言い、それぞれの部屋に戻っていった。後で番人に聞いてわかったことだが、これはセントの能力で稀に戦闘不能になった主人のいない、野良精霊のような者を自分の精霊として吸収できる力らしい。

「つか、野良精霊なんてそうそういねえし、使いどころねえな」

 セントはそう悪態をつきながら改めて眠りについた。ちなみに後日、女子階に侵入したのがばれてセントはシグルスとレンからこっぴどく怒られたが、それはまた別のお話。
カイナ
2008年08月08日(金) 16時22分31秒 公開
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■作者からのメッセージ
 はぁ、全く感想が無い、やはりここが廃れてるせいか、それともこれが駄作だからか……。
 とまあ反省会は後にして、念のため聞いてみたいことがありますが、ここって別に二作の同時連載って可能ですよね?
 何となくこれ以外にも思いついた物があって、まだ投稿するかは未定ですがとりあえず聞いておきたいのですが。まあ駄目なら駄目でいいです、はい。それでは

この作品の感想をお寄せください。
色々と忙しくパソコンに手を出せなかったケルベロスです、はい。

二作投稿は個人的にはあまりオススメできないというか・・。途中で挫折して展開が自分の中でさえ闇の中って作品もあるんです、はい。


野良精霊ってサモ○ナ○トのはぐれ召喚獣みたいなやつですかね?ww
どうやってばれたのかが気になるww リムスがちくったのかな?wwww
30 ケルベロス ■2008-08-11 13:53 ID : 8u0JUU1wUZY
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 あら、風来の軍師さんでしたか。お久しぶりです。
 で、二作同時は色々大変ですよ。経験上での結論です。私のように片方の作品を途中挫折なんて事になりかねません、ってことだけ伝えておきます。最終的に決めるのはあなたです。
 オリジナルな外見の生き物(この話でいう精霊)の外見などは詳しくお願いします。本当に。やはり文から絵ですからね、情報は沢山ほしいです。
 手持ち三体。どう使い分けるのか……。気になりますよ。
 感想が遅れるのは、塾なんで。って事です。以上。
 「!?」は「!?」のようにしてもいいと思いますよ。それではっ。
 
30  風斬疾風 ■2008-08-09 21:02 ID : FZ8c8JjDD8U
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 俺の名はアダムスカ……なんちゃって。
 ハイネです、風来の軍師ハイネだった男です。

 え〜と、とりあえず目に付いたので1から読ませて頂きました。
 言うなれば、もう少し熟成しても良いと思います。
 ここで小説を書かれている方のほぼ全員に言える事なのですが、小説を投稿するスパンが短いと思うのです。

 特に、オリジナルの小説となると熟成する期間が長くなります。
 それは「設定」や「世界観」を一から自分で組み上げて土台を作り、そこにキャラクターを生み出し、物語に沿って動かすと言う一連の動きを全て自分独りで行わなければならないからです。
 言ってみれば、ゲーム一本を自分独りで作り上げている様なものです。

 この文量なら2話に纏めても良かったかと思います、事は落ち着いて当たりましょう、自棄になる前にまず落ち着く事です。
 小説は映画やゲーム、漫画のように視覚情報がありません。
 人は読んだ事を脳内で映像に変換するプロセスが必要なのです。

 途切れ途切れになるのも、良くないですね……前の話を忘れてしまいますから、いっその事ドカッと一話ぶち上げて、しばらく休みつつ次を書いて、ドカッと次を出す、こう言うサイクルで行くと良いかもしれません。
 そうやって自分が次を書いている合間に、人の小説を呼んだり、自分の小説へのコメントを読んだりすれば良いと思います。


 長くなりましたが、まだ本題ではないのです。
 そして本題です、作品の話です。

 典型的なファンタジー小説になるのでしょうか。
 個人的には世界観をもう少し見せて欲しいと思います。
 名前的に和風ファンタジーではないですし、精霊もサラマンダーやサキュバスと言った西洋風のものですので、西洋チックな世界なのはイメージが着きます。
 しかし、時代的なものが分からないのです。
 主人公が「中学……云々」と言っていましたから、時代背景的には現代でその下地にファンタジックなものが敷かれている。
 つまり「ハリーポッター」に近いものと考えればよろしいのでしょうか?

 主人公やそれを取り巻く人物にももう少し際立った個性が欲しいかもしれません、皆が皆「善人然」としていてたまに見分けがつかなくなります。

 戦闘シーンの書き込みももう少しと言ったところで、臨場感に欠けます。
 展開を焦らず、順繰り順繰りと行けば良いと思いますよ。
 この数話で主人公の持ち精霊が3体になってしまいましたからね;

 でもサキュバスは良い発想だと思います、サキュバスを持ち精霊に出来たらと考えると……私はもう夜も眠れません。

 でも、この話は何だかんだで気に入ったので、これからも読ませてもらいたいと思っています。
 そんな私ですから、2作同時の連載は反対です。
 可能ではありましょうが、必ずどちらかがおろそかになる事は請け合いです。
 私も今はMHの作品を凍結しています。
 必ず、今、このサモナーズストーリーを終わらせてから次に行ってください。

 あれもこれもでは良いものは書けません、きっと中途半端なものが出来ます。
 そういう心意気では、これから先読んでくれる人に失礼だとは思いませんか?
 そう……私にも。

 後、「!(エクスクラメーション)」や「?(クエスチョン)」マークの後には一つスペースを空けるのを忘れていませんか?
 文章を書く上でのセオリーですのでね、意外と忘れがちです。

30 アダムスカ ■2008-08-09 03:03 ID : MXRHzdRQNyI
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